猫とネズミについて

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トムとジェリー』という短編アニメのシリーズをご存知だろうか。登場する主なキャラクターは、タイトルの通りトムとジェリー。トムが猫で、ジェリーがネズミである。

私は、小さい頃このアニメが大好きだった。それはもう、買ってもらったビデオのテープが擦り切れるくらい、何度も何度も飽きずに繰り返し見た。話の内容をほとんど覚えてしまって、次に何が起こるか全部わかるようになっても、それでも楽しく見た。たぶん、今見ても夢中になれるだろう。それくらいよくできたアニメなのだ。このアニメの第一話が放送されたのが1940年のアメリカだったと知って、そらあ戦争も負けるわと思ったのはずっと後の話なのだが、そもそもなぜこんな古いアニメのビデオが家にあったかといえば、親もこのアニメが好きだったからだと思う。

各話の内容はシンプルだ。だいたいの話は、トムとジェリーが追いかけっこをして、最後にトムがジェリーにしてやられるという大筋を踏襲している。トムは執拗に、時に驚くほど残酷に、知略の限りを尽くしてジェリーを追いかけて食べようとするのだが、最後には計略虚しく酷い目に会う。それも、生半可な酷い目ではない。銃で撃たれる、爆発に巻き込まれて黒焦げになる、ギロチンで首を刎ねられるなどなど。

幼い私は、見ていて悔しかった。当時実家では猫を飼っていた。だから、愉快なカートゥーンの中の出来事とはいえ、猫が痛い目に会うのが見ていて辛かったのだ。常にトムの考えの一歩先を読んだようにうまく立ち回るジェリーのことは、憎らしいとさえ思った。そして、飼い猫を撫でながら、猫に追いかけられたネズミが、あちこち逃げ回った挙句にがっぷりと猫の口に捕らえられるところを想像した。

時は流れて、今私が住んでいる古い部屋にはネズミが出る。学生時代からいくつか下宿を移ってきたが、部屋の床をネズミがトコトコと移動する部屋は初めてである。まあ、彼らのすることといえば床に糞をしたり、乾麺の袋を破って中身を齧ったりするくらいで、たいした実害はない。問題は猫の方だ。うちの下宿には猫もよく出没するのだが、こいつらが一向にネズミを捕まえようとしないのである。

自分の住むアパートが猫とネズミの両方が出没する物件だと知った時、忘れていた期待が心をかすめて一閃するのがわかった。大昔に夢見た光景に出会えるかもしれない。トムとジェリーを見て燻らせた、猫がネズミをギャフンと言わせるところを見たいという欲求が叶えられるかもしれないという期待である。

猫たちは、私の放つ思いを発止と受け止めて、矢のように走り稲妻のようにネズミを絡め取ってくれるはずだった。ところがそうはならなかったのだ。猫とネズミは同じ屋根裏にいるはずなのに、相変わらずネズミは部屋に現れたし、猫がネズミを咥えて満足げに見せにくることもなかった。それどころか、猫たちは共用の台所に置いてあった私の食事を盗み食いしたりした。

なんとも情けない話だが、猫にしてみればネズミを追いかけるより人間の食べ物を狙った方がはるかに楽チンであることは間違いない。幻滅もしたが、易きに流されるあたりがいかにも猫的ではある。最近では猫にネズミを捕まえさせることはすっかり諦めてしまって、盗み食いを叱られて以来私のことを警戒する猫たちと仲直りしようと苦心している。

 

 

 

美しい毒キノコ、ベニテングタケの味は意外と単調だった

 

※記事の内容は「こうすれば絶対に安全」というものではありません。毒キノコの喫食は自己責任でやりましょう。

 

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▲全身で「俺を食べないほうがいいぜ」オーラを出すベニテングタケ。この見るからに毒々しいやつ(実際に毒がある)を、塩で毒抜きして食べた。

 

 ベニテングタケのこと

私はキノコが好きなのだが、ずっと自分で採集してみたいと思いつつ手を出せていないキノコがあった。ベニテングタケである。(語呂がいいので、ベニテンと呼ぶことにする)主に白樺の森に生えるこのキノコは、私の住んでいる関西地方には自生しておらず、発生時期に自生地へ脚を運ぶ機会がなかなかなかったのだ。

ベニテンの魅力は、なんといっても見る人の心を奪うファンシーなその見た目だろう。ベニテンの名前を知らない人も、美しい赤色に白いイボをつけたあからさまに毒々しい外見はどこかで見たことがあるのではないだろうか。実際、ベニテンは強い毒を持っていて、食べても死ぬことは滅多にないにせよ、嘔吐、幻覚などの症状が出る。またその毒成分を活かしてハエとりに使われるため、本種の学名Amanita muscariaの「muscaria」は「ハエの」という意味なんだそうである。

さてこのベニテン、塩漬けすることで毒が抜けて食べられるようになるらしい。長野県の一部地方では、山がちな地形ゆえの食料生産の乏しさを補うため、ベニテンを毒抜きして食料にしていた歴史があるというのである。そしてなにより、それがなかなかに美味であるらしいのである。ベニテンの毒素は主にイボテン酸、ムッシモール、ムスカリンという成分で、このうちイボテン酸は毒成分であると同時に強烈な旨味成分でもあるというのだ。塩漬けすることで毒成分は多くが流出するが、わずかに残ったイボテン酸だけでも十分な旨味を感じることができるという。なんてこった。そんなことを知ってしまっては、危ないとわかっていても試してみないわけにはいかないじゃないか。

 

 

ベニテンを入手する

「今年こそはベニテン狩りにいこう!」

と決めて、はるばる長野県まで出かけたのは去年の10月初旬のこと。なんとしてもベニテンを食べてみたい!一口だけでもいい!という衝動を抑えきれなくなったのだ。

実際にベニテンを手にするまでのいきさつは、ここに書くと非常に長くなるので、後述する過去の記事を読んでもらいたい。3日間走り回った末にベニテンを手にすることができたが、ここにいたるまでには、いろいろな人の助けを借りたりの、なかなかの珍道中があったのである。

 

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感動の対面をへて

 

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記念撮影をしたり

 

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ワイングラスみたいに持って、においを嗅いでみたりした。

 

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▲土から出てきたばかりの、かわいらしい幼菌も見つけた。

 

こんなに鮮やかで美しいものが土から生えてくるなんて、信じられるだろうか。

まさに、見るものをメルヘンの世界に引きずり込む外見だ。真っ白な白樺の木が林立した森の中には霧が立ちこめていて、その林床には真っ赤なベニテンが点々と生えている。びっくりするくらい幻想的な光景だ。通りがかりのウサギが人語で話しかけてきても、それほど驚かなかったに違いない。

 

▼採集までの詳しい流れが知りたい人はこっちの記事を読もう! 

kaiteiclub.hatenablog.com

kaiteiclub.hatenablog.com

 

 

塩漬けにする

さて、キノコは傷むのが早いので、さっさと保存のための処理をしてしまわないといけない。山を下りて、スーパーにて塩やジップロックなどの必要なものを購入する。ベニテンを袋から取り出して、レッツ塩漬け!

 

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 ▲袋から取り出したところ。すでにちょっとしなびて、崩れてきているような気がする。

 

はじめにベニテンを水洗いして汚れを落とす。そこで閉口させられたのは、ベニテンアパートの住人であるトビムシの多さだ。ザバザバと水を流して、よし綺麗になったと思ったのも束の間、次の瞬間には傘の裏のひだの間から湧いて出てきて、洗ったばかりのベニテンの表面を這い回る。

3度ほど洗ってみても、一向にいなくならない。きりがないので諦めることにした。そもそも毒キノコを食べようというときに、これといって害があるわけでもないトビムシごときで騒ぐのもおかしな話だ。

 

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▲ベニテンに大量に住みついていたトビムシ。遠目に見る分にはちょっとかわいい。

 

キッチンペーパーでベニテンの水気をしっかりと拭き取ったら、いよいよ塩漬けだ。毒抜きにどのくらいの量の塩が必要なのかはもちろん不明である。とにかく、景気よくいこう。

 

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▲できた!

 

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▲すでにちょっとベニテンの赤い色が塩に移ってきている。ホラー映画で、すさまじい霊力で清めの塩やお札が一瞬で黒く萎びてしまうのを連想した。

 

 

塩から取り出して食べてみる

時は過ぎて2月の末頃。なんとなく気が引けて、ずっと冷蔵庫の片隅にしまってあったのだが、意を決して食べてみることにした。結局4ヶ月以上塩漬けしていたことになる。

 

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▲オレンジ色の色素と一緒に水分が染み出してタプタプになっている。きちんと毒抜きできただろうか?

 

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▲だいぶ縮んでいた。

 

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▲匂いを嗅いでみる。かび臭いというか、キノコ臭いというか...。とりあえず良い香りはしない。

 

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 ▲一度にたくさん食べるのは怖いから、幼菌1本と成菌の傘を4分の一だけ取り出した。

 

上に書いたように、ベニテンの旨味は毒成分の味なのだ。つまり、毒抜きといっても、正確には毒成分を薄めているだけであり、完全に無毒化されたわけではないのである。だから一度に大量に摂取するのは危険である。

キノコの毒の強さは自生する地域や時期によっても変わってくるので、「これだけなら大丈夫」という基準は設定できないけれど、今回は1人丸1本食べるのは怖いからやめようということになった。で、とりあえず写真の量で二人分である。

 

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▲水につけて塩抜き中

 

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▲水気をよく拭きとって

 

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▲何もつけずに焼く。純粋なベニテンの味を知りたいから、シンプルにいこう。

 

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▲できた!

 

出来上がった焼きベニテンを前にして、しばし感慨に浸る。

美味いか不味いかわからない...それどころか食べられるかどうかもわからない一皿を食卓に供するまでに、いったいどれだけの労力が投入されたことだろうか。

 

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まずは幼菌をいただく。これといった香りがしなかったことはすでに書いたけれど、加熱してもその点は変わらないようだ。

 

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……。

 

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うん、いけますねこれは!(背景が汚くて失礼)

驚くほど旨味が強い。というか、旨味以外の味が感じられない。噛んだ瞬間、ビリッと舌から脳を刺激するような、強烈な旨味成分があふれてくるのがわかった。化学調味料を塩と一緒に舐めたらこんな味がするのではないだろうか。

しかしこの旨味、どこかすんなりと飲み込めないものがある。例えるなら、カロリー0の人工甘味料を口にしたときに、普通の砂糖と比べて、なんだか舌にまとわりつくようなもやもやとした後味が残る、あの感じである。旨味は旨味なんだけれど、その背後になんとなく舌が痺れるようなケミカルな本性が見え隠れするのだ。いずれにせよ、自分の体がこの味に対して警戒心を解ききれていないのは間違いないようだった。まあ、毒キノコだと知ってて食べてるからかもしれないが。

噛むたびに引き締まった繊維質のザクザクという食感が歯に伝わってくるのは、天然物のシメジやマツタケに似ていなくもない。

 

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成菌の傘の方も食べる。

 

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美味いんだな、これが。

幼菌に比べて味が丸くなったようだ。味が薄い代わりに、味覚に旨味信号を無理やり叩き込まれているような不自然さがなくなった。食感はフニャフニャニしていて幼菌に劣るけれど、ごく微量だが、旨味以外にもキノコっぽいすえた味があるように思う。

尖がったところがなくなって、その分味に深みが出たのだ。言葉にするとなんだか人間じみているが、きのこの味の感想である。

いずれにせよ、普通のキノコに比べると味が旨味一辺倒の単純なものであることは変わらない。

 

一緒に食べた友人にも感想をもらった。曰く

「うまみに情緒がない。もし無毒でも好物にはならないと思う。あと、少量とはいえ毒を口にした緊張か、なんか疲れる。おいしさには香りとか安心感とか色んな要素が絡んでるんやなとわかった」

そうである。ベニテンを食べることで、安心して食べられる食べ物のありがたさがわかったのなら、苦労して用意した価値があったというものである。

 

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▲そんなこんなで完食してしまった

 

さて、気になる食後の体調だが、食後丸一日たっても拍子抜けするくらいなんともならなかった。幻覚だの腹痛だのいろいろ言われて身構えていたので、ひとまずはほっと胸をなでおろす思いだった。これは、毒抜きが成功したと考えてよいのだろうか。

毒抜きが成功しようがしまいが、大量に食べるのは抵抗がある。毒抜きはあくまでもベニテンの毒素を薄めているだけだからである。だから残ったベニテンは捨ててしまうつもりだったのだが、苦労して手に入れたものなのでもうあと少しだけ食べてみることにした。

 

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こちらは片栗粉をまぶして油で揚げてみたもの。

 

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美味しいんだけどね、なんだか飽きてきたよ。

 

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これが最後の実験。

こんなに旨味が強いなら、お湯を注いだだけでお吸い物になるのでは?という発想を試してみた。うまくいけば、天然のインスタント吸い物を発見したことになるわけだが…。

 

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残念、これはちょっと味のついたお湯だね。

味が薄いのはベニテンの量を増やせばなんとかなるかもだが、いかんせん何の香りもついていない。ちょっと旨味がついただけの、ただの塩水である。実験は失敗に終わった。 

 

 

まとめ

用心のため2日にわけて食べてみたけれど、いずれも体調に変化が出ることはなかった。塩に漬けて毒成分を抜くというのは、間違っていなかったのだと思う。聞いていた通り旨味が強いこともわかって満足なのだが、また食べたいかといわれると特にそうは思わない。美味しいのだけれど、あまりに旨味一辺倒というか、味が単純すぎてすぐに飽きてしまうのだ。それに化学調味料みたいな味だということは、ここまで手間をかけてベニテンを毒抜きせずとも、素直に化学調味料を舐めていればいいということになる。取り立てて栄養があるわけでもない、むしろ食べ続けると肝臓に毒素が蓄積するという話まである。食料が豊富な現代では、怖いもの見たさで食べてみる私のような人間以外は誰も食べないというのも納得である。というわけで、

 

結論:そこまでして食べるほどのものではない 

 

それにしても

 

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「キノコ 食品」でググると栄養成分表の上にベニテンのイメージが出てくるのは……どうなんだ?

 

 

 

twitter.com

低温調理器具を作って鹿肉を料理してみた

狩猟で肉が豊富に手に入るようになると、いろいろな料理の仕方を試してみたくなる。

で、今回やってみたのが、以前から気になっていた低温調理である。

 

 

低温調理

肉をうまく加熱するのは、ほんとうに難しい。中心まで火を通そうとすると、外側に火が通り過ぎてぱさぱさになってしまう。かといってジューシーさを保とうとすると、中心部が生焼けの冷たいままでなんだか落ち着かない。

このジレンマを解決してくれるのが低温調理だ。その利点として、まず、食材全体に均一に火を入れられることがある。一定の温度を維持したお湯に長時間浸けておくことで、食材の外側であろうが中心部であろうが同じように、65℃なら65℃、70℃なら70℃で火を通した状態になるのだ。さらに、低温調理は食材をあらかじめ設定した温度で正確に加熱することができることも面白いところだ。このため、たとえばタンパク質が変性するかしないかのぎりぎりの温度での調理なんかも可能になってしまうのである。

 

 

必要な装置を作ってみる

低温調理器具でもっとも有名なのは、ANOVAという商品なのだが、これがなんと新品で買うと2万円以上する。たかが湯を沸かすための装置にそんな大金を払いたくない、吝嗇が骨の髄までしみこんだ私がそう思ってしまったとして、誰が責められるだろうか。

要はお湯の温度を一定に維持できればいいわけだから、サーモスタットにヒーターを接続するだけで自作できるのでは?と思って調べてみたら、案の定すでにやっている人がいた。 

 

blog.wshat.net

 

今回作ったものは、このサイトに載っているものをほぼ丸ごとコピーさせてもらった。使ってある部品まで同じである。パクリでありフリーライドである。先人に感謝である。

 

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完成したのがこちら。お湯を入れるのに保温性の悪い容器を使うと電気代がすごいことになるらしいので、職場から不要になった発泡スチロール容器をもらってきた。

 

 

ローストディアを作る

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適当な大きさに切った鹿の腿肉を

 

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たまねぎのみじん切り、塩、コショウ、オリーブオイル(分量はすべて適当)とともにジップロックに封入。このとき、できるだけ空気が入らないようにすると、効率よく加熱できる。

 

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65℃で3時間加熱する。水が65℃まで温まるまでにかかる時間を含めると、4時間近くかかった。

 

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最後に、香ばしさを出すために、フライパンで表面を軽く焦がしたら完成!

 

 

断面が真っ赤だ!

ナイフを入れて驚いた。フライパンで炙ってできたほんの1,2ミリの焦げ目の層のすぐ下は、生肉かと思うような真っ赤な肉の塊だったのだ。

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赤い!でもちゃんと火が通ってる!

 

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ものすごく柔らかくてジューシーなのに、生肉のにちゃにちゃした感じがなく、しっかりと温かくなっている斬新な感覚だ。汁気たっぷりの生肉を食べていながら、「冷たいな」とか「寄生虫は大丈夫かな?」とかいった居心地の悪さだけを取り除いた感じと言ったら伝わるだろうか。気分は鹿の後ろ足に噛み付いているニホンオオカミである(絶滅したけど)。

すばらしい装置を手に入れてしまった。なんせ最初の味付けとサーモスタットの初期設定だけして放っておけば、いい感じに料理が出来上がるのだ。時間がかかるのは玉に瑕だけれど、手軽なんだからまあ我慢しよう。

鹿肉以外の食材も調理してみたいし、同じ食材が調理温度や味付けによってどんな風に変わってくるのかも試してみたい。すきあらば肉を湯にぶち込む日々が続きそうだ。

 

 

 

キウイが豊作だった

もう4ヶ月近く前のことだが、昨年の秋は実家の庭のキウイが大量に実をつけた。

ちまちま食べていても一向に減る様子を見せず、やがて飽きが来たか皮を剥くたびに手が痒くなるのに嫌気が差したかで、なんとなく部屋の隅に放置していたのだけれど、このまま腐らせるのはあまりに忍びなくて、一念発起、重い腰を上げて果実酒とジャムを作ることにしたのだった。

 

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キウイの汁まみれになりながら手を動かしていると、途中から痒いを通り越してヒリヒリと痛くなってきた。相当に苦痛だったのだけれど、美味しんぼに出てきた台詞(「ごわごわした毛だらけの皮を剥いたらエメラルド色の果肉が現れる。道化師の仮面を剥いで見たら中から美女が現れたみたいじゃないか」台詞もよくわからないが、発言者のおっさんは真っ二つに切られたキウイを見ながらハアハア言い出すんである)を思い出してニヤニヤしたりしながら、あるいは翡翠色のキウイをカメレオンに見立て、ゴミ溜めに落ちて汚物まみれになったカメレオン(カメレオンはとてもとろい動物なのだ)を綺麗にしてやるところを一人芝居よろしく思い浮かべて、やはりニヤニヤしながら、なんとかやり切った。

皮を剥きながらつまみ食いをしていると、あんなに食べ飽きたと思っていたはずなのに、甘酸っぱい美味さについ口に入れる手が止まらなくなった。このまま全部食べてしまおうかという思いがよぎったりもしたけれど、理性を振り絞って加工する分を確保した。

まだ硬いものは氷砂糖と一緒にホワイトリカーに漬けてキウイ酒に、熟れて柔らかくなってきているものは砂糖で煮てジャムにした。

 

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多寡の違いはあれど、毎年キウイは実をつけるのだが、果実酒にするのは今年が初めてである。初めてなのでもっとも無難なな氷砂糖+ホワイトリカーにしたけれど、なんせ材料はたくさんあるので、次回からはもっと違った漬け方も試してみたい。

 

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ジャムも大量にできた。自家製ジャムはそれほど日持ちしないのだけれど、こんなに作って腐らせる前に消費し切れるだろうか。問題を先送りにしただけなのでは...という疑念がなくはない。

 

キウイの木は、かれこれ20年くらい前に私が親にねだって買ってもらったものなのだけれど、当時買ってもらった植物には、他にもぶどうの木、さくらんぼの木、ひめりんごの木、グミの木なんかがあって、ものの見事に果樹ばかりだと我ながら可笑しくなる次第である。

ひめりんごの木とグミの木は買って2年足らずで枯れてしまい、さくらんぼの木は大きく生長したものの実をつけることは滅多にない。ぶどうは年によって実がついたりつかなかったりまちまちである。その点、特に世話もしていないのに、ほぼ毎年実をつけてくれるキウイは、なんと優秀なのだろう。まだヒリヒリと痛む手を擦りながら、建物を出て、壁を覆うように生長したキウイの木を見上げる。普段は背景の一部になってしまって注目することはほとんどないけれど、あらためて見るとこの20年でずいぶんと大きくなったものだ。毎年実をつけて偉いなと褒めてやる。褒めてから、都合のいいときだけ相手を持ち上げているみたいで後ろめたくなった。

 

 

 

やっぱり獣肉の生食はやめといたほうがいい

※不快感を催す寄生虫の写真あり

 

先日、猟友会の先輩にもらった鹿のレバーを自宅に持ち帰り、調理しようとしたときのこと。

ビニール袋からレバーを取り出す右手が違和感を覚えた。まな板の上に置いて、しばし検分してみたけれど、見た目はなんともない。だが触ってみた感触がどうもおかしい。レバーのぷにぷにした感触の後ろに、なにか硬くてごろごろしたものが隠れているのだ。意を決して、包丁を入れてみる。

 

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ん...?

 

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「ひ、ひいい!」

思わずレバーを投げ出してしまった。

レバーの中に、白くて軟骨のような感触の穴ぼこがたくさんできていた。硬くてごろごろした感触の正体はこいつだったのだ。そして穴の断面からは、黒くてどろどろした液体に混じって、平たくて細長いものがふよふよと漂い出てきた。

 

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種類は不明だが、このレバーがなにかの寄生虫に感染していることは明白だ。

レバーをビニール袋に戻し、口を固く縛る。さらにその上からもう1枚ビニール袋をかぶせ、こちらも中身が漏れてこないように厳重に封をして、燃えるゴミの袋に突っ込んだ。包丁とまな板、そして自分の手を洗剤で念入りに洗い、手以外にはさらに熱湯をかけて消毒した。これで、とりあえずは大丈夫だろう。

 

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処理を済ませてすこし落ち着いてくると、こいつはいったいぜんたい何者なんだろうという疑問が湧いてきた。「鹿 肝臓 寄生虫」で画像検索をかけて、似たような見た目のものがないか探してみる。

そうして、こいつはどうやら肝蛭(かんてつ)という寄生虫で間違いなさそうだという結論に達した。読んで字の如し、肝臓に寄生する蛭のような生き物だ。

肝蛭は、ヒメモノアラガイという淡水性の巻貝を中間宿主とする吸虫だ。哺乳類の体内へ侵入経路は、主として卵のついた水辺の草と一緒に食べられることであるとされている。人間への感染例も報告されていて、クレソンやミョウガのような水辺に生える野菜をよく洗わずに生食したり、感染した動物のレバーを十分に加熱しないで食べることで感染するそうだ。

肝臓への侵入に成功した虫は、その内部を食い荒らしながら産卵可能な大きさまで成長する。上の写真の個体は、大きさからいって十分に成長しきったものだろう。それ故に異変に気づけたわけだが、これが仮に感染直後の肝臓で、卵から孵化したばかりの非常に小さい個体しかいなかった場合、目で見たり手で触ったりしただけでは異常に気づかなかったに違いない。

とても気持ち悪い体験だったけれど、狩猟を始めてまだ日が浅いうちに、こういうガツンと殴られるような衝撃的な体験をしたことは、ある意味で幸運だったかもしれない。猟師の中には、「最近は保健所がうるさいけれど、昔はみんなレバーを刺身で食べてたよ」みたいなことを冗談半分で言う人もいる。そういう話を聞くと、生で食べるとそんなに美味しいのかなという好奇心が沸いてくることは抑えがたいのだ。しかし、目の前にある穴だらけになった肝臓は、今後たとえどんなに勧められたとしても、絶対に生食を試すことはないと確信させるだけのインパクトを持っていた。

 

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肝蛭の顔(?)のアップ

 

 

 

あっという間に骨だけになっていた

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先日解体した鹿の残骸を埋めたところに行ってみた。

そうして見つけたのが上の写真の骨だ。

ひとかけらの肉片も残さずに、寒々しい白さを曝している。

掘り返されているだろうとは思っていたけれど、まさかたった3日でここまで綺麗に食べつくされるとは思わなかった。

ここは熱帯雨林のただ中ではない。

歩けば5分足らずで市街地に出るようなところである。

人の生活圏のすぐそばで、貪欲な自然が息づいていることを実感した。

 

 

 

くくり罠に初めての獲物がかかった日

※動物の解体の写真が含まれます

 

空振りやニアミスを繰り返していたくくり罠に、ついに獲物がかかった。

くくり罠についてはこちらの記事を参照。

kaiteiclub.hatenablog.com

 

京都市内に珍しく雪が積もった日の朝、いつものように罠の見回りのために山に入った。木の上に積もった雪が朝日に照らされて融け、滑り落ちてばさばさと音を立てるので、森の中はいつもよりざわついているようだった。

罠の設置場所に近づくと、ここでもがさがさという音がしている。やはり雪だろうか?と思った。猟期が始まってからこちら、2ヶ月近くに渡って罠猟の空振りが続いていたせいで、罠の見回りをするとき「どうせ今日も空振りでしょ」と半分諦めたような気になってしまっていたのだ。

坂を越え、罠を仕掛けた場所が視界に入ってくる。直前までは、歩きながらいろいろな雑事に思いを巡らせていたのだけれど、眼前に現れた光景を見て、一瞬すべての思考が停止した。一頭の鹿が、前足と木の間にぴんと張ったワイヤーを外そうとしてもがいていたのだ。私が、自力で捕獲した獲物第1号と対面した瞬間だった。

 

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驚きで頭が真っ白になってから一拍おいて、すさまじい興奮と喜びがこみ上げてきた。ついに捕まえたんだ!雪が積もった山の中で、一人で思わずガッツポーズをとった。

ひとしきりの興奮が冷めると、目の前の現実を観察する余裕が出てきた。罠にかかっていたのは、若いオスの鹿だ。小さいながら立派な角も生えている。私が鹿に気づいたのとほぼ同時に、鹿もこちらの接近に気づいたようだった。ワイヤーを外そうとしてもがく動作を止め、障害物になりそうな低木の後ろに陣取ってじっとこちらを見つめている。

鹿の方を見つめたまま、ポケットからスマホを取り出した。その日一緒に出かける約束をしていた知人に、申し訳ないが行けなくなった由を手短に伝えた。これで、時間を気にせずに鹿の相手をすることができる。

 

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罠にかかった獲物にトドメをさす(”止め刺し”という)ために、手ごろな木棒を探す。草食動物とはいえ、相手は野生の獣だ。命の危険を感じれば何をしてくるかわからない。角も生えているし、力だって私より強いはずだ。必死で向かってこられたら、逆にこっちが串刺しにされてしまうかもしれない。

相手との十分な間合いを確保できるだけの長さと、硬さのある棒がいいだろう。しかし、条件に合う棒がそうそう落ちているわけはない。もたもたしている間にワイヤーが切れてしまうのではないか...はやる気持ち抑えながらしばし周囲を探し回り、なんとか使えそうな棒を見つけることができた。

棒をもって、鹿にじりじりとにじり寄る。じっとしていろよ、というこちらの思いとは裏腹に、当然なのだが、鹿はワイヤーの長さが許す範囲の中を目一杯逃げ回る。彼も、こちらが何をする気でいるのか薄々気づいているのかもしれない。それでも、数回の空振りの後、渾身の力を込めて振り下ろした棒が鹿の頭部命中した。やった!勝負がつくかと思われたが、棒は鹿の角に当たってあっさりと折れてしまった。芯が腐っていたのだ。冷静になるため、いったん鹿から離れて作戦を練ることにした。

闇雲に追いかけても、いつまで経っても決定打を与えることができない。鹿の動きをできるだけ封じたところに、狙いすました強力な一撃を加えなくてはならないのだ。そのためには、まず、きちんとした武器を見つけなければならない。目についた、程よい太さと長さで丈夫そうに見える棒を拾い上げ、片端からその辺に落ちている岩にたたきつけてみる。地面に落ちているだけあって、大方の棒は腐ってもろくなっているため、あっさりと砕けてしまうのだが、繰り返すうちに使えそうな硬さの棒を数本確保できた。その中から瘤のように膨らんでいて打撃力の高そうなものを選ぶ。これで武器は十分だろう。

次は鹿の動きを封じる方法だ。先輩猟師は、ロデオボーイのように投げ縄を鹿の首や角にかけ、罠の端を適当な木に結んでしまうことで自由を奪うのだといっていたが、あいにく使えそうな縄の持ち合わせがなかった。そこで、棒で小突いて鹿を追い立て、罠のそばの障害物になる低木にワイヤーが絡まるよう誘導することにした。先ほどの立ち合いで鹿が積極的にこちらに向かってくることはなかったから、逃げる方向をコントロールしてワイヤーを絡ませることができないかと思ったのだ。

再び鹿ににじり寄る。棒の先端で尻のあたりを叩いてやる。やはり、向かってはこない。全ての鹿が人を攻撃してこないとはとても言えないが、この鹿に関して言えば攻撃的ではないようだ。障害物の周りを2,3度往き来したところで、鹿が膝を折ってへたり込んだ。罠を仕掛けていたところはもともと足場が悪く、目論見通り絡まって短くなったワイヤーに前足をとられ、転倒しそうになったのだ。千載一遇のチャンスだ。ある程度の危険を承知で鹿に近づき、首筋に狙いをすまして渾身の力で棒を振り下ろす。今度こそ、棒は鹿の後頭部にするすると吸い込まれていく。

ドサッと地面に倒れたのも束の間、鹿はその首を天の方向に仰け反らせて「ピヒイ!」という鳴き声を上げた。まったく予期していない大声だったので、一瞬凍りついてしまった。正真正銘の、断末魔の叫びだ。まさか仲間を呼ぶわけではあるまいし、「もう死ぬな」と悟った瞬間に大声を上げることにどういう意味があるのかはわからない。しかし、口から血の泡を垂らしながら鳴き声を絞り出すその姿に、鹿とてやはり生きることへの執着があるのだな、という当たり前の感慨が頭を掠めた。それから、棒をさらに2,3回振り下ろした。

 

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失神した鹿に恐る恐る近づき、そっと毛皮に触れてみる。あまりじっくりとは観察していられない。甦生して暴れる前にトドメをささなければならないからだ。ナイフを首に突き立て、気管や動脈が通った喉を一気に切断する。昏倒しているとはいえ心臓はまだ動いているので、切り口からは強烈な勢いで熱い血が噴き出し、雪を融かして地面に滲みこんでいく。

これも、いつか自分で獲物を処理するときのためにと、先輩猟師が教えてくれたやり方だ。しとめた獲物はできるだけ早く動脈を切断して血抜きをしなければ、血生臭くてとても食べられない肉になってしまう。獲物を捕まえた後の処理も、猟師の腕の見せ所なのだ。

 

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罠を踏んだ前足を見てみる。硬いひづめに引っかかって、ワイヤーが抜けなくなっていた。ばねを緩めない限り、人間の手を使っても外すことは難しいだろう。

 

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地面が平らになっているところまで鹿を引きずって移動した。解体を始める前に、しばし観察する。角の先が二股になっているので、満2歳になりたての鹿だろうか。毛並みや、すらっとした脚の美しさに惚れ惚れとさせられるような、良い鹿だ。

 

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雪が積もっていたのは非常に運がよかった。地面に肉を置いても、土がつかないからだ。自宅に解体設備を用意し、獲物を持ち帰って解体できるようにするのが一番よいのだが。

腹を割き、内臓を引っ張りして、代わりに手を入れてみる。寒さでかじかんでいた手がきりきりとほぐれていくのがわかる。

 

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取れるだけの肉を取り去ると、頭部と脊髄、あばら骨だけが残った。一瞬、持ち帰って全身骨格標本に...という思いがよぎる。鹿の全身骨格標本、そんな立派なものが作れたら、どんなに楽しいだろう。

逡巡したが、持ち帰るのはさすがに無理だという結論に達した。こんなものを持って下山したら、家にたどり着く前に補導されてしまうだろう。地面に適当なサイズの穴を掘って、埋めてしまう。

実は、解体が終盤に差し掛かる頃には頭上がかなり騒がしくなっていた。雪の上に浮かんだ赤色を目ざとく見つけたカラスや猛禽たちが、とっとと立ち去れと言わんばかりに私の頭上を旋回しはじめたからだ。私がいなくなれば、彼らはすぐに下りてきて残滓を掘り起こして食べ始めるだろう。夜になれば狸や狐も来るに違いない。

 

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剥がした皮の方も、泣く泣く同じように埋めてしまう。いずれは皮なめしにも挑戦したい。

 

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帰宅して肉を骨から外し、ラッピングしたところ。1頭の鹿からは、文字通り山のような量の肉が取れる。解体に4時間、精肉に2時間ほどかかっただろうか。作業を終えた頃には疲労の色も強かったが、目の前に山積みになった1日の労働の成果を見ると、それ以上に強い満足感を覚えた。同じ量の肉を手に入れるのでも、お金を払って買ったのでは、これほどの達成感や喜びは得られなかっただろう。

さて、この肉をどうやって食べよう。一人では食べ切れそうもないから、友達に分けてあげてもいいな。そんなことを考えながら、シャワーで疲れた体を洗い流し、床に就いた。

「狩猟をやっていてよかった」

心からそう思った。