仕事を辞めました

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3月末で退職した。

きっちり2年勤めた職場ではあったのだけれど、特に未練みたいなものは感じなかった。

それというのも、会社に行くのが苦痛だったからである。

職場の人間関係は良好であったし、待遇も同業他社に比べればかなりホワイトな部類に入っていたのだとは思う。

しかし、日中のほとんどの時間を、会議室やパソコンの前で過ごさなければならないことは、私にはあまりにもハードルが高すぎた。

外に出て、もっといろいろなものを見たり聞いたりしたい、せめてもっと風通しのいいところでできる仕事がしたいという欲求が、抑えきれないところまで膨らんでいたのだ。

閉塞感や単調さ以上に、このまま続けても自分の望む状況は得られないという事実も、私の心を重くした。

井伏鱒二山椒魚よろしく、安全な穴の中で大きくなったはいいけれど、結果的に穴から出られなくなってしまう未来に向かっていることを想像すると、生活の不安などは差し置いて一刻も早く逃げ出したいような焦燥感に駆られたのである。

 

で、辞めてどうするのかというと、それは目下のところ考え中である。

なんとも頼りない話だと思われるだろうが、自分でもそう思う。

将来的にどうしたいというビジョンはある。

猟師の仕事がしたいのだ。

このブログをある程度継続して読んでくれている人なら知っているだろうが、私は生き物が大好きである。

その延長で狩猟を始めたが、これが面白くて仕方がない。

今すぐは無理でも、ゆくゆくは狩猟を、あるいはもっと広く生き物を追いかけることを仕事にしたいと思う。

 

面白そうなものを見つけて、主に文章で人に伝えるのも好きだ。

どのみち猟で得た収入だけで生きて行くのは難しいだろうから、生活を支える柱がもうあと2,3本はほしい。

ものを書くという行為をそこへつなげていかれないだろうか、いつまで続くのかはわからないが、時間のあるうちにいろいろ模索してみたいと思う。

 

「好きなことを仕事にするのはやめたほうがいい」

という人がいるけれど、私はあれは間違いだと思う。間違いというか、少なくとも私にはそういう考えを実践するだけの堪え性は備わっていない。人生の時間のかなりの割合を、やりたくもないことで満たすなんて耐えられないではないか。

 

このブログを始めた頃には、自分がこんなに早く今の仕事に見切りをつけるとは思っていなかった。

インターネット越しに見える部分では具体的に何かが変わるというわけではないが、時間ができた分更新頻度は上がるかもしれない。

生き物が好きで猟師になりたい無職の生存報告でもある当ブログを温かく見守ってもらえると幸いである。

 

 

 

石垣島(夜の部追加編)

ヤエヤママルバネクワガタ探索行には書ききれなかった、石垣島の夜の生き物を紹介する。

熱帯の夜は本当に生き物の密度が高くて、そこかしこの闇の中をウゾウゾゴソゴソとなにかしら這い回っている。しかし、ここに出てくるカエルなどは生息場所を把握していないと見られなかっただろう。これらは、SeaBeansの小林雅裕氏によるフィールドガイドの賜物である。

旅行にいってから日数がたっているから、せっかく教えてもらった生き物の名前がうろ覚えになってしまった。

 

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ヤシガニ

捕獲するときは、強力なハサミでつかまれないように、背中の甲羅を持たなければならない。しかし、自分の弱点を知っているためか、こちらに背中をとられないよう意外と高速で立ち回るため難儀する。茹でたものが珍味として食されるらしく、非常に気になるのだが、近年生息数を減らしているらしいので今回は見送る。

「食糧難の時代には食べたらしいけれど、今では懐古趣味の年寄りしか食べない」

「市街地で可燃ごみをあさっているのをみたことがある。絶対食べたくない」

などなど、地元の人の評判は散々であった。とはいえ、調理する時間があったら試していたかもしれない。

石垣島におけるヤシガニの捕獲には規制があるので注意)

 

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ムラサキオカヤドカリ

体色がほんのり紫色をしている。

他にも、石垣島周辺でしか見られないサキシマオカヤドカリというのがいて、こいつは体が真っ赤なんだそうである。見てみたい。

 

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タイワンクツワムシ

 

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イシガキモリバッタ

 

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オキナワナナフシ

 

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ゲジゲジ

 

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マダラコウロギ

 

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サキシマキノボリトカゲ

 

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サキシママダラ

洞窟の中や木の上で這っているところを何度か見かけた。無毒の蛇である。

 

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ん?口から何かが出ている。

 

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 ブラーミニメクラヘビ(食べられ中)

頭しか見えなかったけど最初はミミズかと思った。

 

ここからは怒涛のカエル5連続!

カエルファンは必見!

 

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オオハナサキガエル

産卵シーズンであるらしい。あちこちで求愛の鳴き声が響きまくっていた。 

 

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ヤエヤマハラブチガエル

 

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ヤエヤマハラブチガエル

 

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 ヒメアマガエル

 

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アイフィンガーガエル

ちっさ!じつはマクロ撮影できるカメラの電池が切れてしまったのだ。

その代わり、カエルが載っているクワズイモの葉の大きさは伝わるだろうから、まあいいだろう。 

 

観察中は、一歩進むごとに違う生き物に出くわすといっても過言ではないくらい濃密な体験で、終始はしゃぎっぱなしであった。彼ら一匹一匹にきちんと名前がついているのもそうだが、例えば私が「あ、カエルがいる...」と言うと、すかさず「ああ、それは〇〇カエルで、葉の上によくとまっている~~」などと淀みなく繰り出されるガイド氏のウンチクにも感心した。

次はこちらから「〇〇が見たいからとっておきの場所に連れて行ってよ」と注文つけられるくらいに、島の生き物に詳しくなりたいものである。

 

 

 

牛と牛骨

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石垣島の北部には広大な牛の放牧地が広がっていて、大きくて真っ黒な牛たちが敷地内のそこかしこを闊歩していた。

 

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海岸に出て海水浴をしている牛たちもいた。

周りには人が誰もいない。牛舎や牧場を囲むフェンスも、視界のはるか外にあった。牛たちだけが、青い海をバックにこっちを見ていた。あまりにも現実感が希薄で不思議な光景だった。

 

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近づいてもまったく気にかけてこない。本当に落ち着いた牛たちだ。

近くで見ると、本当に体中真っ黒である。「石垣牛は大好きな海水浴ばかりしていたから、日焼けしてあんなに黒くなってしまったんだよ」という民話が作れそうである。

 

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こんなに綺麗でのびのびとした環境で育てられた牛たちは、さぞかし美味しいことだろう。

 

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大きな牛の頭骨も落ちていた。

肉として出荷した牛の頭をこんなところに捨てるはずはないから、自然死したものが白骨化したものだろう。敷地が広いから、少しくらい行方不明になっても気にしないのかもしれない。

 

 

 

貝殻の使い道

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石垣島の食堂で見つけた、灰皿代わりに使われていたシャコガイの殻。

ちょっと大きい貝殻なんてここでは珍しくないから、我々からするともったいないなと思うような使い方も許されてしまう。

そういえば、オセアニアの島々では、細かく砕いた貝殻の破片に穴を開け、そこに糸を通して連結し、儀式用の仰々しい衣装を作ったりしていた。

石垣島でもそこまで凝ったことをしたのかは知らないが、資源の乏しい離島では、貝殻は生活用品を作るための貴重な材料なのだろう。

 

 

 

南の島でクワガタムシを探す(ヤエヤママルバネクワガタ)

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10月も終盤に差し掛かった頃、今年は昆虫採集をしていないことに思い至った。

なんとしても、今からでも虫たちと戯れたい衝動が抑えがたくなってきたので、思い切って、まだ暖かさののこっていそうな石垣島に生き物観察に行くことにした。そこにしかいない生き物をできるだけたくさん見られればいいやという気持ちもあったけれど、一番の目当てはヤエヤママルバネクワガタである。

マルバネクワガタは沖縄県島嶼に生息しているのだが、離島という隔離された環境ゆえに、沖縄本島北部のオキナワマルバネクワガタ(通称:オキマル)、石垣島西表島のヤエヤママルバネクワガタ(通称:ヤエマル)、与那国島のヨナグニマルバネクワガタ(通称:ヨナマル?)などに細かく分かれて進化している。それぞれのその島でしか見られない、とてもレアな虫なのだ。

 

石垣島

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というわけでやって来た。記念すべき初の石垣島遠征だ。

泳いだりするには若干の季節外れであるため、空港は比較的落ち着いた雰囲気だった。とはいえ、夏を追いかけて南にやってきた私にとっては幸いなことに、ここの天気はまだまだ暖かい。さすが石垣島だと感心したけれど、聞くと、今年は例年の同時期に比べても暖かいのだという。

 

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レンタカー屋で車を借りて走る道すがら、その辺に繁茂している緑が深いのに驚いた。歩道の上でさえ、ところどころここは草原かしらと思うほどに雑草が生い茂っているのだ。木を抜いたら何もかもが植物に呑まれてしまいそうだと思った。

 

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交差点で信号待ちをしていると、犬が寄ってきた。首輪をしているので誰かの飼い犬なのだろうが、それにしてはあまりに自由すぎるのではないだろうか。車道のど真ん中を歩いちゃってるし。ともあれ、人間を除けば、島で最初に出会った動物だ。ウェルカム・ドッグである。

寄ってきてくれるのはうれしいのだけれど、警戒心をほとんど持ち合わせていないらしく、そのうち車に轢かれやしないかと心配である。

 

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のんびりと草を食む石垣牛たち。

 

昼間は普通に観光することに

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本格的な生き物探しは日没後にして、日中は普通に観光をすることにした。

展望台に上ると、島のほぼ全域を見渡すことができた。離島なのだから周囲を海に囲まれているのは当たり前なのだが、身近に水平線がある生活ってどんな感じなんだろう。

 

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ハイビスカスの花に、アカホシカメムシがとまっていた。 

 

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お昼は島北部にある明石食堂というお店でソーキソバを食べた。

これまで食べた中で、文句なしで一番美味しかった。

 

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石灰岩の張り出したいかつい海岸線。大根おろしが作れそうなくらいゴツゴツしている。

 

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 アダンの実。最初こそ珍しがっていたけれど、海岸のそこらじゅうに生えているのですぐに慣れてしまった。

 

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オフシーズンとはいえ、これだけ綺麗な海を目前にして泳がないわけには行かない。海に潜ると、華やかな色の魚たちと戯れることができた。捕って食べたい欲がムクリと湧いてくるのを感じたけれど、ここは禁漁区なので叶わない。その代わり、襲われないとわかっているのだろうか、手が届きそうなところまで近づいても逃げないものもいた。

 

夜が来た!

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そうこうしているうちに夜になった。生き物観察の開始だ。

リュウキュウコノハズクが電灯の上にとまっている。

 

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ヤエヤマオオコウモリも現れた!図鑑でしか見たことのない生き物たちが続々と目の前にに出てくる。熱帯の夜は、闇の中のそこかしこにいろいろな生き物が這い回っている気配がして、否が応にも興奮が高まってくる。

 

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クワガタを探すためには山の方に移動しなければならない。市街地や幹線道路を少し外れると、この通りの真っ暗闇だ。

 

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ヘッドライトは必須である。

ヤエヤママルバネクワガタはイタジイという木によくいるらしいので、それっぽい木があるところを中心に散策する。

 

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ふと上を見上げると、小鳥が木にとまって眠っていた。こちらに気づいて驚いたのか、写真を撮った直後に逃げ出してしまったので、悪いことをしたと思った。

予断だが、ほとんどの鳥はいわゆる鳥目ではない。暗くなってもある程度はものが見えているそうだ。

 

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クワズイモの大きな葉の上に、サガリバナの花が落ちていた。夜に咲いて朝には花が落ちてしまうという儚い花である。

 

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キリギリスの仲間(だと思う)。

 

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集団で眠るアオスジコシブトハナバチたち。青く光る腹が綺麗だ。相当近づいているが、まったく逃げ出そうとしなかった。君たち、あまりに無防備じゃないかい?

 

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カマドウマ。こいつのほかに、ズングリウマという名の虫も生息していて、文字通り普通のカマドウマよりもさらにズングリしているらしい。名前を聞いて「ズングリしているからズングリウマだなんてて...」とちょっとかわいそうになるネーミングに興味を引かれただけに、今回見られなかったのは残念だ。

 

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サソリモドキ。サソリのような毒はないけれど、強い刺激をもつ酸性の液体を噴射することがある。サソリとクモをあわせたような外見で、攻撃方法はミイデラゴミムシとそっくりという、他の生き物から借りてきた特徴の寄せ集めで中途半端感があるが、他者の良いところをどんどん取り入れていく姿勢は見習わないといけない。

 

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オオシママドボタル。胸部の上端に穴が二つ開いていることからの、この名前である。穴が開いたことで、後方が見えやすくなったりするのだろうか。

 

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オオシママドボタルの幼虫。ヘッドライトを消すとあたりは本当に真っ暗になるので、光を放つホタルはかんたんに見つけることができる。

 

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すっかりおなじみになってしまった外来種のオオヒキガエルもいた。在来種の虫を大量に捕食してしまうので目の仇にされてしまっているが、オオヒキガエル自体はゴツゴツとした造形がかっこよくて魅力的な生き物だ。もちろんここにいてはいけない存在ではあるけれど。

 

地を這う生き物たちが面白いので、ついつい目線が下がってしまった。クワガタを見つけるには、木の上の方を探さないといけないのだ。イタジイの木を探しながらどんどん森を分け入って行くことにした。

 

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ヘッドライトの光が、ついに黒光りする甲虫を捕らえた。

「いたああああああ!」

と興奮して駆け寄ったけれど、なんだか小さい上に角も生えていない。

これは、オキナワコカブトムシというカブトムシの仲間である。

 

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角が生えてないなんていってごめん。ほとんど出っ張りといったほうがよさそうなくらいの小ささだけれど、カブトムシの名に恥じず、ちゃんと角が生えているのだ。

とてもかわいらしい外見だが、こう見えて肉食の昆虫である。

 

それにしても、島嶼部の生き物たちには、オキナワ〇〇とかヤエヤマ〇〇とか、頭に地名がついているものが多い。沖縄に限らず、北海道の生き物にも頭に「エゾ」がつくものがたくさんいる。隔離された環境の生き物は地名を冠した名前をつけられがちであり、それがレア感を出すための記号のようになっていておもしろい。

 

ヤエマルと対面する

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ガサッガサッと森の中を分け入って行くとひときわ太いイタジイの木が生えていた。クワガタが好みそうな穴も開いているし、直感的に「この木にいるな」と思った。近づいて木の周囲を回って調べてみると、果たして、黒くて大きな虫がへばりついているのを見つけた。

 

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「本当にいた!」

見つけた瞬間はおもわず息を呑んだが、初対面の緊張がほぐれると、この喜びをつくづくと噛み締めた。ヤエマルがどんな虫なのかは知っていたし、採集記事などを読んでどこにいるのかも知っていた。しかし、そんな知識はこのすばらしい生き物を目の前に見ることができたという感動を少しも損なうものではなかった。知識が体験に変化するこの瞬間には、代えがたい価値があるのだ。この瞬間のためなら、どれだけ労力をかけることも苦にならない。

 

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それにしても、黒く艶があって、なんてかっこいいんだろう。少し小さめだが、独特のカーブを描くアゴは丸っこい体からきちんと生えている。

 

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採集禁止になっている希少種なので連れて帰ることはできない。ツーショットで記念撮影して、惜しみつつお別れすることに。

 

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一通り撮影すると、木の洞のなかに引っ込んでしまった。 最初にわかりやすい場所に出てきていてくれたのは、本当に運がよかった。

 

茂みの向こうから...

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興奮冷めやらぬまま車に引き返す途中、茂みの向こうから何かが動くガササッという音がしたので、歩みを止めて音のした方に集中した。耳を澄ますと、ブフーッブフーッという荒い息遣いが聞こえてくる。何か、大きな動物がいて、向こうもこちらの様子を伺っているようだった。ヤエマルを見られた喜びと山歩きで上気した体が、一瞬で凍りつくのがわかった。石垣島の山にいる大きな生き物といえば、おそらくイノシシだろう。こんな山奥で、こんな夜中に獣と対峙する恐ろしさがわかってもらえるだろうか。突進してこられたら、なすすべもなく突き倒されてしまうだろう。茂みを挟んでにらみ合っていた時間は、5分とも10分とも感じられた。木の枝や下草が視界を遮っていたけれど、相手がまだそこにいるのはわかった。いつまでもこうしているわけにもいかない。ためしに、大声を出して相手を威嚇してみた。反応がない。向こうも、こっちが怖くて固まっているのかもしれない。足を進めるためには足元を照らさないといけないが、そうすると相手のいる方が真っ暗になってしまって、心もとない。ヘッドライトを着けた頭をせわしなく動かして、足元と茂みの双方を小刻みに照らしながら、最初はじわじわと、3mほど距離が取れたところから少しずつ足を速め、逃げるように山を下った。

 

おまけ

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石垣島における野良猫の立場を表現したポスター。ネコの朴訥とした表情がなんともいえず、笑ってしまった。いや、決して笑い事ではないのだが。

島の環境を脅かすのは外来生物だけではない。地元の人に聞いたところでは、石垣島は今プチバブルの状態にあるらしく、海岸の土地に新しくリゾートホテルを建てる計画がいくつもあるらしい。希少な生物の乱獲も後をたたない。このままいくと、ここにしかいないものたちはみんないなくなってしまって、どこにでもありそうな、温暖で、そこそこ海が綺麗な、ただの観光地だけが残るのではないだろうか。心配である。

 

 

 

金柑ケーキを作った

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先日和歌山に行ったときのこと。道端で山積みにされて売られていた金柑がかわいらしく美味しそうだったので、思わず二袋も買ってしまった。生で食べるのもよいけれど、たくさんあるので半分は甘露煮にした。

調理は非常に簡単で、まずは金柑のヘタをとり、包丁で皮に数箇所切れ目を入れる。鍋一杯のお湯で茹でこぼし、お湯を捨てる。鍋に金柑が浸かる程度の水を入れ、砂糖(量はお好み)を加えて煮詰める。煮ている間、辺りに金柑の清々しい甘い香りがたちこめるので、作っている最中からわくわくさせられてしまう。

 

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これだけでも十分に素晴らしいお菓子なのだけれど、さらに一手間加えて、金柑ケーキを作ってみた。

材料は

  • バター 100g
  • 砂糖 100g
  • 卵 2個
  • 牛乳 100cc
  • 小麦粉 100g
  • ベーキングパウダー 5g
  • ブランデー 適量
  • 金柑甘露煮 適量

まずバターと砂糖を室温で練り上げ、クリーム状にする。そこに卵と牛乳、ブランデーを入れてさらに混ぜる。小麦粉とベーキングパウダーをふるいにかけながら混ぜ入れ、最後に種をとってみじん切りにした金柑甘露煮を散らし、型に入れて、170度に予熱しておいたオーブンで40分かけて焼く。

以上、クックパッドの受け売りである。

 

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マーマレード入りのパウンドケーキと似たような感じになるかと思っていたけれど、食べてみると、口いっぱいに金柑独特の香りが広がって、うれしくなった。

 

 

 

狩猟者登録証の返却

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猟期が終わると、ハンターは都道府県から交付されている狩猟者登録証を返却しなければならない。それで、今日その発送を済ませてきた。捕獲の記録を載せた出猟カレンダーも同封だ。

出猟カレンダーを記入していると、猟期中の出来事が思い出された。初めて鹿が罠にかかったときのこととか、初めて鹿を撃ったときのこととか...。

経験したことを思い出すのはいいのだけれど、同時にやりたかったのにできなかったことも心に浮かんでくる。皮鞣しをやってみたかったけどできなかった、タヌキやヌートリアやアライグマを捕って食べてみたかったけどできなかった、イノシシを罠で捕りたかったけどできなかった...こう考えると、できたことよりもできなかったことの方が多そうである。悔しい!

でもこういう悔しさがあるから、次の猟期までにいろいろ準備してやろうという気が湧いてくるんやね。