ベストショット「交尾するハンミョウ」

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ハンミョウという虫は、こちらが近づくと飛んで少し離れたところに逃げる、また近づくと逃げるの繰り返しで、なかなか捕まえたり観察したりできないのだが、さすがに交尾中は飛翔することができないようだ。

沖縄で川のほとりを散歩していたとき、一心不乱に励んでいるハンミョウのカップルを偶然発見したので、ここぞとばかりにじっくり観察と撮影をしてやった。

初夏の正午の日差しに照らされてキラキラと輝く姿が綺麗なのは当たり前だけれど、衝撃的なのはオスの牙の使い方だ。メスの背中をがっちりと咥えて、目的を果たすまでは死んでも離さないぞという強い意思を感じて、「肉食昆虫だけあってあっちも肉食系なのね」という下品な感想を抱いてしまった。

 

 

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プレコことマダラロリカリアを捕るために沖縄まで行ってきた

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沖縄の河川では、人の手で放流された南米原産のプレコことマダラロリカリアという熱帯魚がうじゃうじゃ生息している。しかも、こいつらは鎧のような防御力の高い鱗にかまけて、敵がきてもちっとも逃げようとしないから、手掴みで簡単に捕獲できる。そんな心躍るようなわくわくする話を聞いたので、さっそく捕りに行ってきた。

 

安里川を散策する

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沖縄本島一の観光スポットである那覇国際通りの、そのすぐ脇を流れる安里川。那覇空港発のモノレールの駅を出て、そのすぐ目の前を流れる川である。

こんな街中の川に魚なんているの?という気がしそうなものだが、熱帯の川の包容力を侮ってはいけない。ちょっと川面を観察しただけで、大小の魚が泳いでいるのを見ることができる。

事前に情報収集をして、沖縄本島の南部の河川にはほぼ例外なくプレコが生息していることはわかっていたので、この安里川にも間違いなく彼らはいるはずだ。

プレコは藻などを食べるために水底にへばりついているので、水深のあるところでは目視で探し出すことはできない。なので、ここよりも水量が少なく浅い上流を目指しつつ、プレコを探すことにした。

 

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1本目の橋から下を覗き込むと、流れに逆らって泳ぐオオウナギがいた。

1m以上あるウナギが、真昼間にその大きな体を隠すでもなく普通に泳いでいるんだから、やっぱり沖縄は違うなあと、非常に興奮した。

 

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次の場所ではミシシッピアカミミガメミドリガメ)もいた。こいつはほんと、どこにでもいる。

 

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プレコと同じく外来魚であるティラピアや、国内移入種のコイは、それこそいくらでも泳いでいる。しかもかなり大きい。でかい魚がうじゃうじゃ泳いでいるのを見て、ここでもはしゃいでしまう。

が、である。肝心のプレコがいないのだ。事前に調べたところでは、これと言った天敵のいないプレコは沖縄の川で大繁殖しているという話だったはずだ。それこそカメも泳げばプレコに当たるくらいの密度でいるはずだったのだけれど、1時間以上探しても1匹も見つからないのはどういうことだろう。

そろそろ日が傾いてきた。今日はもうだめかな、と思いつつも、あと少しだけあと少しだけと、往生際悪く川を遡上する。そして、ある橋の上から、川に水路が合流して少し水深が深くなっているところを観察していたときだった。

 

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いた(中央に写っている魚がそれ)。

双眼鏡で観察して、特徴的なマダラ模様が見えたときには、喜びと興奮のあまり周りに人通りがあるのも憚らず「いたいた!」と叫んでしまった。

たった1匹だけれど、プレコは間違いなくそこにいた。事前情報ほど大量ではないが、生息していると言うのは間違いではなかったのだ。わざわざ沖縄まで来た甲斐があった。

 

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あとは網ですくうだか手づかみだかで捕獲するだけなのだが、ここで二の足を踏んでしまった。

そろそろ日が沈みそうだとか、護岸工事されていて水面まで下りるのが大変だとかいうのも確かにある。しかし、それは一番の理由ではない。これは安里川に到着した瞬間から気になっていたことなのだが、川が汚いのである。

プレコを見つけた場所にしてからが、脇の水路からは真っ白に濁った生活廃水がドボドボと流入していて、橋の上からでも人工的な芳香の混じった汚臭がかすかに嗅ぎ取れるほどである。

それでも、私は川に下りた。ひょっとしたらプレコの生息数は言われているよりもずっと少なくて、この機会を逃したらもう会えないんじゃないかと危惧したからだ。

臭い水に膝下まで浸かりながら、ゆっくりとプレコに近づく。と、プレコはこちらの気配を察して、瞬く間に逃げてしまった。

「おい!警戒心がないんとちがったんかい!」

事前情報と違う俊敏な動きになすすべもなく立ち尽くした。プレコの逃げ込んだ先は水が相当に深くなっているところで、さすがにそこまで追いかけるのは嫌だった。

コンクリート壁をよじ登ると、地元住民が何をしているのかと話しかけてきた。

「プレコという魚を探しているのです。うまく捕れたら食べようと思いまして」

と言うと、

「変わった魚がいるのね。でもこんな汚い川の魚は食べないほうがいいよ」

と言って、行ってしまった。

 

もうちょっと綺麗そうな川にやってきた

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都市部はプレコの数も少なく、よしんば捕獲に成功してもあまり食べる気にならない。

前日の体験からそう痛感したので、翌日は郊外を流れる別の川に捜索に出た。こちらの川はあからさまな生活廃水の臭いはしないし、護岸工事もされていないので安里川に比べれば楽に川に入れそうだったからだ。(ただし、川岸の藪には蛇がいるかもしれないので、それなりに安全に川に入れる場所を探す必要はあった)

見つからなかったらどうしようというこちらの心配をよそに、なんと水に入って30秒ほどで、1匹目がへばりついているのを見つけてしまった。

 

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田舎のプレコは、近づいても逃げない。都会のプレコと違ってスレていないのだろう。

 

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頭のあたりを静かに手でつかんで...

 

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あっさり捕獲に成功!うわっ!簡単!

そこからはお祭りだった。よく見ると、プレコがそこら中にいるのである。しかも、近づいてもほとんど逃げようとしないのだ。手でつかんで、水から引き上げられると、尾を振って抵抗らしいことをするのだが、時すでに遅しである。

 

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両手にプレコ。

 

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この下向きについた口で、川底の藻を食べる。サイドについているヒゲが、ナマズらしさの名残である。

 

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地面に並べてみて、アブノーマルなその外見に見入ってしまった。ヒレが大きくてとてもかっこいい。そして何より驚くのは、釘が打てそうなほどカッチカチの鱗である。防御力に絶対の自信があるから、敵が近づいてきてもほとんど逃げないのだろう。

濁った川では特徴的なマダラ模様が迷彩効果を生むので、目が慣れないと近くにいてもなかなか気づかなかった。

 

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あっという間に4匹捕まえた。その気になればいくらでも捕れたのだが、持ち帰るのも大変だしたくさんはいらないので引き上げることに。

 

料理して食べる

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宿にもって帰ると、一躍大人気に。観光客も現地住人も、みんなしてこんな魚は見たことがないと言っていた。

 

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まな板の上のプレコを

 

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捌く!ここにきて急に激しく動いたりして抵抗を試みるが、もう遅いのである。「暴れるタイミングを間違ってるよ、君たち」と言ってあげたい気分だ。ていうか水揚げしてから1時間以上たってるのに、まだ生きてたのね。

捌き方としては、まず比較的柔らかい腹側の適当な場所に切れ目を入れて、そこから厚くて固い装甲のような鱗をはがしていく。背側の鱗は本当に固くてとても断ち切ることはできないため、鱗と肉の間に刃を入れて少しずつ引き剥がすようにした。

実際には包丁よりもキッチンバサミを多用した。

 

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で、取れた肉がこれ。装甲が厚いので、必然的に肉の部分は着痩せして少なくなる。

 

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装甲は固いだけではない。その表面には細かい棘がびっしりと生えていて、ヤスリのようになっているのだ。おかげで、プレコと格闘したあとの指先はこの通りボロボロである。

 

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装甲を脱がしてしまえば、あとは普通の魚と同じ。ナマズの仲間ということで、臭みを警戒してスープカレーにしてみた。

 

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うん、プルプルしてていける!

臭いはほとんどしなくて、非常にタンパクな白身魚だ。あえて言うなら、ゼラチン質が多いのが特徴だろうか。

 

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二品目を作る。もう一度この装甲と格闘するのは骨が折れるので、皮をつけたまま強引に丸焼きにしてやることに。

 

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腹の切れ目から内臓をとり、代わりにネギ、生姜、胡椒、ごま油、白ワインをあわせたものをたっぷりと詰める。カレーほどの臭み消しの効能は望めず、プレコそのものの味を味わうことになりそうだが、どうなるだろうか。

 

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オーブンに入れ、250℃で20分くらい焼く。

 

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『プレコの香草丸焼き』完成!

なんだか、グレーでマットな感じになった。

 

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シューシューと音をたてるプレコの殻を、包丁の背で恐る恐る叩き割ってみる。

するとどうだろう。生の時はあれほどの固さと粘りとで我々を苦しめた殻が、加熱によってすっかり脆くなって、バリバリと破れていくではないか。

肝心の味はどうだろう。驚いたことに、これが非常に美味しいのだ。厚い殻が香りや水分を閉じ込める役割を果たしてくれたようで、香草の香りが、ゼラチン多目のしっとりとした白身全体にふんわりとゆきわたっているのだ。

調理の楽さと、見た目のインパクトと、味の良さをどれも満たしてくれる、プレコにぴったりの料理法である。

 

まとめ

どこにでもたくさんいる、と言うわけではないが、沖縄の河川には確かに外来魚のプレコが生息していた。そして実際に触ってみて、彼らが着ている鎧の固さに驚いたし、これなら天敵がいなくて落ち着き払っているのも当然だと思った。プレコの側からすれば、向かうところ敵なしと思っていたのが、突然手先が器用なサルにつかまってしまって驚いたに違いない。

プレコは簡単に捕獲できて(ただし捌くのはすごくたいへん)、味も良い。そしてなにより見た目がかっこいい。この魚が沖縄に定着したのは、飼育しきれなくなって野に放った不届き者のおかげなわけだが、非常に魅力的な魚なので飼育したくなる気持ちはわかる。次に沖縄に行くときには、また捕まえたいと思う。私が、彼らの天敵なのだ。

 

 

 

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食べた後はとりあえず骨をとる

カミツキガメの骨を回収した。

骨を煮て、余分な肉や脂を洗い流す作業は、流し台でやると長時間中腰になることを強いられるため、大変に面倒である。やりたくないことを先延ばしにすることに定評のある私だが、放っておくと腐ったり虫が湧いたりする今回のようなケースでは、とっとと済ませてしまわざるを得ない。

 

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骨をとってみて驚いたことには、骨と骨の継ぎ目がとにかく脆い。手で持って持ち上げただけで、重力に負けてぽろぽろと分解されてしまうのだ。頭蓋骨からして、こんな感じでばらばらである。

スッポンの骨はもっとしっかりしていたぞ!と叱咤してやりたい気分だ。

組み立てるのには難儀しそうである。

 

 

 

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3日粘った末に印旛沼でカミツキガメを捕まえて、食べた話

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読者はカミツキガメというカメを知っているだろうか?

主に北アメリカを原産とするこのカメは、モンスターのような雄雄しい外見のおかげでペットとして人気を博したが、現在では特定外来生物に指定されて販売はおろか無許可の飼育さえも禁止されている。

他の元ペットの外来野良動物たちと同じく、こいつが成長するととんでもなく大きくなることから、飼い切れなくなった個体の野外への無責任な放出が跡を絶たないからだ。

大きいものでは甲羅の長さが50センチほどという、「それ、ほぼウミガメじゃん」と言いたくなるくらいにまで成長するというから驚きである。

カミツキガメはその名の通り、目の前にやってきたものに反射的に噛み付く習性がある。こんなに大きくて力の強そうな生き物にまともに噛みつかれたら、軽い怪我ではすまないだろう。カミツキガメを野外に放逐するのは、公道に地雷をばら撒くのに等しい許しがたい行為だ。

違反者には『裸で水に入り、噛まれる恐怖におびえながらカミツキガメを1匹残らず回収する刑』を言い渡したいところなのだが、私がこうして国外まで足を伸ばさずとも、そこそこ気軽にモンスターハンター気分を味わえているのは、彼らの愚行の恩恵と言えなくもないので複雑だ。

ともかく、このかっこいい生き物に会いたくなった私は、捕獲に乗り出した。

 

 

カミツキガメは千葉の印旛沼周辺に多い

日本の田園風景には不釣合いなこの巨大カメが闊歩しているところをぜひとも見てみたい、あわよくば捕獲して食べちゃいたいと思った私は、友人たちとともに千葉県の印旛沼を目指した。この沼や周辺の河川、特に鹿島川の水系では、すでにカミツキガメが定着、繁殖してしまっていると聞いたからである。

推定生息数、なんと1万6千匹。

戯れに野に放たれたものたちの子孫が、新天地で着実にその数を増やしているのだから、外来種といえどやはり生き物はすごいなあと感じ入ってしまう。

印旛沼広しといえども、これだけ生息しているなら、我々に捕まってくれる酔狂なカミツキガメが少しはいるはずだ。ネット上にレポートを上げている先行者たちも、なんだかんだと苦労しつつも捕獲に成功しているようである。

楽観的な雰囲気の中、まずはカメが好みそうな場所を探すことにした。

 

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そこそこ広さがあって、水が濁っているポイントを発見したので、釣針にアジの切り身をつけて放り込む。同時に、ウェーダーを着て、タモ網を持ち、川底の泥の中に隠れたカミツキガメを捜索する。

数時間かけて探し回るも、まったく気配なし。

しかし、ここまではある程度予想していたことである。カミツキガメは、夜行性だと聞いていたからだ。

 

日が落ちてから、再度釣りによる捕獲に挑戦した。合計5本の釣竿が、適当な間隔をおいて川岸にセットされる。天気は晴れで、周辺の草むらでは、大小様々なカエルたちのたてる鳴き声がうるさいくらいに響いている。特にウシガエルの「グー・ゲー」という声は特徴的で、容易にそれと判別できた。

これはうれしい兆候だ。カエルが活動できる水温なら、カメも動いている可能性が高いからである。そして、1時間ほどたった頃、最も下流に設置していた竿が音を立てて大きく傾いだ。

「来たぞ!」

大きな声を上げて竿にかけ寄る我々。

今から思うと、探索初日のピークはこの瞬間だった。

「さあ、カミツキガメの顔を拝んでやろう!」

みんながそう思って興奮していたと思う。たぶん。

 

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バタバタと音を立てて上がってきたのは、アメリカナマズだった。

 

いや、期待はずれだったのは認めるが、決してがっかりなどしていないし、アメリカナマズが悪いのでもない。現に、一座はそれなりに感興を催した。昼間からずっと釣糸を垂れていて、初めてあがってきた獲物だったからである。ただ、上がってきたのがカミツキガメだったら、どんなにか喜び、安心しただろう。

気を取り直して釣りを再開したのだが、待てど暮らせどカミツキガメは捕まらない。

結局、その日はもう1匹アメリカナマズを吊り上げたところで解散となった。

 

 

カミツキガメを求めて雨の沼のほとりを彷徨う

翌日はあいにくの雨だった。他の人たちは用事があったり疲れたりで帰ってしまったので、今日からは私一人での探索である。

強烈な日差しで体力をガンガン削られることがないので、野外に探索する身にはありがたいのだが、カミツキガメ探しに限って言えばどうだろか?

昼間なのに肌寒いし、夜になれば一層気温と、それにつられるように水温が低下することが予想される。そうすれば、昨日にも増してカミツキガメの動きが鈍くなることはまちがいない。せっかく冬眠から出てきたものも、また冬に戻ったのかと二度寝をしてしまいかねない寒さだ。

悪い予想は的中した。この日はカミツキガメはおろか、アメリカナマズすら釣れなかったのだ。ゴールデンウィーク明けの、水温的にギリギリな時期に来たことを後悔させられた。

 

なんの釣果もなかった2日目の探索だが、釣り人から興味深い話を聞くことができた。

雨の中、傘をさして釣りをしている人を見かけたので、物好きなお方もいるものだと、「お前が言うな」と言われそうなことを考えながら声をかけてみた。話題はもちろん、カミツキガメのことだ。この方もカミツキガメを見かけたことがあるというので、俄然食いつくようにして情報を得ようとする。

その人のいうことをまとめるとこうである。

  • カミツキガメは、釣りたくなくても年に1回くらいは釣れてしまう。
  • 漁協の人たちが駆除用の罠を設置していて、最近も5,6匹捕まえて処分していたようだった。
  • こういう川幅が広いところよりも、田んぼの用水路みたいな狭いところの方が数は多い。

特に最後の一つには驚いた。カミツキガメは大きなカメなので、自然と、川幅が10m以上あるところを中心に捜索を行っていたのだ。

その後、いただいたアドバイスをもとに探してみたが、前述のように成果は芳しくなかった。しかし、リベンジするための足がかりを抑えられたことがうれしかった。

 

 

 カミツキガメは突然に 

 翌日の天気は打って変わって快晴で、沼の畔はポカポカと暖かい陽気に満ち満ちていた。

捜索を続けてもよさそうなものだが、引き上げようかと言う気になった。野宿で2泊3日に及ぶ捜索行で疲れてきたのと

「時期的にまだ早かったのでは...6月に出直したほうが可能性は高そうだ」

という思いが頭の中でだんだん大きくなってきたからだ。

ただ、そうは言いつつも諦めきれない往生際の悪さを発揮して、最寄り駅まで移動するのに、鹿島川のそばの田んぼの脇道を歩いて用水路の様子を伺いながら移動することにした。結果的にこれが功を奏した。

水路脇の草が生い茂る道を歩いているときにそいつは現れた。

 

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ん?

 

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んんんんんん???

 

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う...う...うう......

 

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うわあああああああああ!!!

 

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なんという皮肉だろう。

2日間、あれだけ苦労して探したり釣ろうとしたりしても、気配すらなかったのに、帰ろうとした途端に道の端に転がっているんだもんなあ。

「やってらんねえよ」と思いつつも、顔には満面の笑みを浮かべて喜びを隠し切れないでいるのである。大げさなようだが、『奇跡』という言葉が頭をよぎった。これは『捕獲』というよりも『出会い』である。カミツキガメと私が、道端で偶然ばったり出くわしたという奇跡なのだ。

ともかく、道を歩いていてカミツキガメに出くわすなんて、ほぼ毎日田んぼに出てくる農家の人でも1年に1度あるかないかのことであるらしいのに、なんと運の良いことだろう。それとも、推定生息数1万6千匹というデータが出された頃よりも、さらに個体数が増えているのだろうか。

 

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ちょっと笑っているようにも見えるが、威嚇中である。慎重に手を近づけると、縮めた首を目にも止まらぬ速さで突き出して噛み付こうとしてくる。空を噛んだ口は、歯と歯がかち合う「カチッ!」という小気味良い音を立てる。

 

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腹側の造形は、私の知っているカメのそれとだいぶ違う。甲羅による防御の範囲が狭い分、手足の可動範囲が大きくてダイナミックな動きができるのかもしれない。

 

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長い首を回してこちらを噛もうとしてくるのだが、甲羅の後端まではさすがに首が届かないので、こうして持てば安全である。

甲羅のサイズにして20センチ強、大きいほうではないのだろうが、まごうかたなきカミツキガメだ!ついつい飼いたくなるのも納得のかっこよさである。

 

このとき私は一人だったのだが、この喜びを誰かと共有したくて、近くにいた農作業中の翁に話しかけた。

「このカメ、カミツキガメって言うんですけどね...うふふ、僕が3日かけてやっと捕まえたんですよ、かっこいいでしょう!」

翁は

「ははあ、よかったですね」

と言って、曖昧な笑みを浮かべて肯いたあと、どこかへ行ってしまった。

 

それでも収まらないので、「クハークハー」という威嚇の声を上げるカミツキガメを手に持って喜びの舞を舞っていると、こちらに向かって軽トラが走ってくるのが見えた。

私がカミツキガメを見せびらかすようにして持ち上げると、はたして軽トラは停車し、中から驚きの表情を浮かべた年の頃60くらいの女性が出てきた。

首を振り回してもがくカミツキガメを手に持ったまま、しばし歓談する。女性の親族の男性は田んぼでの作業中に泥の中に潜んでいたカミツキガメに指を噛まれてしまい、病院に行ったことがあるそうだ。やはり危険な生き物であることは間違いなかったのである。

 

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写真を撮ってもらった。

 

「そのカミツキガメをどうするのか」

と聞かれたので、私は正直に、もって帰って食べるつもりですと答えた。答えてから、そんなことを言ったら気味悪がられるかしらと危惧したが、彼女の口から出てきた言葉はこちらの意表を突くものだった。

なんと、道の真ん中でカミツキガメを〆るのはなんだから、農地の端まで軽トラで運んでくれると言うのだ。(特定外来生物であるカミツキガメは生かしたまま持ち帰ることができない)

距離にするとおそらく300mも離れていないのだが、水路やぬかるみなどに分断された農道の移動は大変だ。大荷物を背負い、暴れるカミツキガメを抱えたままではなおさらであり、とても助かった。

 

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カミツキガメと一緒に軽トラの荷台に乗ることになるとは思わなかった。

初夏の日差し、風を切る音、おそらくもう2度と体験しない、カミツキガメとの青春の一コマ。

カミツキガメはというと、おそらく初めて体験するであろう車の振動をものともせず、活発に動き回っていた。どっしりとした落ち着きがあって、なかなかかわいらしく思えてきた。

 

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ノッシノッシと力強く歩くカミツキガメ。尻尾の存在感の大きさがわかる1枚だ。

 

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元気に脱走しようとするのでたまに網をかけてもとの位置に引き戻す。

 

女性に礼を言って別れ、四苦八苦しながらカミツキガメを〆て持ち帰った。

これが、カミツキガメ捕獲の顛末である。ひとつひとつの出来事を思い出しながら記事を書き起こしている間も、興奮の追体験をして動悸が速くなってくるようだ。

 

 

食べる

東京の友人宅に持ち帰ったカミツキガメは、から揚げとスープにして食べた。

以下はその感想である。

 

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まずはカミツキガメのから揚げ。足の周りには肉がたっぷりとついていて、とても食べ応えがある。甘い脂肪分と、さっぱりとした筋肉のバランスがよい。肝心の肉の味はというと、噛めば噛むほどにじみ出てくるこの味は...なんともいいがたい。とても美味いのだけれど、他のものに例えようとしても、ぴったりあてはまるものがないのだ。鶏肉のようでもあり、ツナのようでもあり、一言でいうとこれはカメの味としか言いようがない。

 

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余談だが、食べているところが異常者のようで怖いと言われた。ずっと髭を剃っていなかったからだろう。

 

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こちらはカミツキガメのスープ 。にんにくとしょうがを少し入れた以外は、塩で味を調えただけである。醤油で味付けしたから揚げに比べて、まじりっけのないカミツキガメの味が堪能できるはずなのだが...。

うーん、から揚げの時ほど「美味しい!」という驚きがなかった。旨味は強い。が、その背後にある種の臭みが残っている気がしてしょうがないのだ。これがカミツキガメの匂いなのか、印旛沼の匂いなのかわからない。

前者なら、解体の際により注意を払って内蔵等を傷つけないように取り除き、牛乳にしばらく漬けるなどして改善する余地がある。

後者の場合は難しい。たとえばスッポンを調理するときには、綺麗な水の中で1週間ほど餌を与えずに飼育する、いわゆる『泥抜き』によって泥臭さをある程度は抜くことができるのだが、生かして持ち帰ることのできないカミツキガメの場合、この工程を踏むことが不可能なのだ。

ともかく、私は濃い味付けのほうが好みだった。

 

 

また捕りに行きたい

カミツキガメは日本の河川にいてはいけない生き物である。不意に出くわせば非常に危険な存在になりうることもわかった。しかし同時に、その外見は惚れ惚れするほどかっこよくて、食べれば魅力的な味のする生き物であることも間違いない。

行政は、この厄介な生き物の駆除に一層の力を入れていく方針を示しているため、うまくいけば数年で個体数は減少に転じるのだろうが、それまでにもう一度くらい会いに行きたい、あわよくば今回のよりももっと大きいのを捕まえてみたいと思っている。

 

 

 

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印旛沼のカミツキガメ、無事捕獲成功

「千葉の印旛沼にはカミツキガメという、たいそう大きくてかっこいいカメが繁殖している」という話を聞いてはるばるやってきた。

魚の切り身なんかを餌にすれば案外すぐに釣れる、みたいな体験談もあったのだが、現実はそう甘くなかった!場所を変え餌を変えひたすら釣り糸を垂れても、ピクリとも反応がないのだ。初日の夜こそアメリカナマズが釣れたのだけれど、2日目からはそれすらなくなった。

「もういいやん、外来種なんていなけりゃその方がいいんだし...」

とあきらめようとするも、どうにも踏ん切りがつかず、沼のほとりをさまようこと丸3日、なんと真昼間の田んぼのあぜ道でボケっとしているところに出くわしてあっさり捕獲に成功した。

詳しいことは帰ってから記事にすることにして、まずはこの肉肉しいプロポーションを見てみてほしい。

 

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「クハ―」と息を吹いて威嚇するカミツキガメ

この状態だとわからないけれど、首はかなり長い。

目の前に敵や餌がくると、甲羅の中に格納した長い首をバヒューン!と一気に突き出して噛みつこうとするので、迂闊に手を出せない。

 

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腹側の造形が知ってるカメのそれと違う...。

 

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甲羅の後ろ方を持てば、ぎりぎり首が届かないので安全だ。

 

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こいつをどうするかって?食べるに決まってるだろ!

 

 

 

採ってきたタケノコとクレソンでスープを作った

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野外で採ってきたタケノコとクレソンが両方手元にあるので、前に蜂インザヘッド氏から存在を聞かされたタイ料理「鶏肉とタケノコのスープ」を作ってみた。レモングラスの爽やかな香りを活かした、非常にさっぱりとした味付けで、新鮮なタケノコの味を十分に引き出せる料理だった。

 

【材料】(2人分)

  • もも肉150g
  • たけのこ(水煮) 1/2本
  • クレソン 1束
  • 鶏ガラスープ 3カップ
  • レモングラス 3~4本
  • ナンプラー 大さじ1
  • 塩 小さじ1くらい
  • レモン汁 適量
  • 好みでヤングコーンを加えてもいい(今回は入れなかった)

【作り方】

  1. 鶏肉とたけのこを食べやすい大きさに切る。クレソンはザク切りに。
  2. 鍋に鶏ガラスープを煮立て、鶏肉とレモングラスを入れて弱火でアクをとりつつ煮る。
  3. 鶏肉に火が通ったら、タケノコを入れ、ナンプラーと塩で味つけする。
  4. クレソンを入れ、一煮立ちしたらレモン汁を加えて完成。

 

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副菜として、少しとうが立ったタラノメを湯がいたのを、マヨネーズと醤油で食べた。

 

 

 

竪穴式住居のそばでタケノコを掘る

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京都府南部にある山城郷土資料館というところで、タケノコ掘りが体験できるという話が舞い込んできた。しかも、体験学習とかそういうのではない。繁殖力の強い竹林によって、このままでは施設が飲み込まれてしまう、それをなんとかするために、タケノコを掘って竹林の拡大を食い止めるのを助けて欲しいというのだから驚きだ。5月初旬といえばタケノコシーズンも終盤に差し掛かった頃だが、遅咲きのタケノコに望みを託して、タケノコ掘り、もとい施設維持のためのボランティアに行ってきた。

 

 

郷土資料館を目指す

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最寄駅はJR奈良線の上狛駅である。

 

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駅前の看板に趣のある手書き地図が載っていた。

 

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こちらも味のある案内板。駅を出て住宅地を抜けるまでの、道を間違いやすいと思われるところに計3枚設置されていたのだが...

 

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緑色の埴輪の表情が...

 

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3つとも違うのがおもしろい。手書きの地図といい、手作り間満載でほっこりする演出だ。

最後の1枚は錆びた鎖でぐるぐる巻きにされていて若干不気味だったが、ともかくおかげ様で迷うことはなかった。

 

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天気にも恵まれて絶好のタケノコホリデー(平日)である。

中通り過ぎた畑にはレンゲの花が咲き乱れていて 、とても綺麗だった。

 

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1.6km歩いて山城郷土資料館に着いた。

 

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館の周辺には、人の背丈の倍ほどに伸びた、育ちすぎのタケノコがたくさん立っていて、不安を煽る。食べられるやつが残っているといいのだが...。

 

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おお、書いてある書いてある!

はるばるやってきたはいいが

「もうタケノコは掘りつくされちゃいました」

とか

「タケノコ目当てのイノシシが出たので、安全のために竹林を閉鎖しました」

とか言われたらどうしようかと心配していたが、杞憂だったようだ。

 

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受け付けでタケノコを掘りたい旨を伝えて、入館料の200円を支払い、名前と連絡先を書く。「環境整備協力事業への参加」という、小難しい名目がついている。まあ、実際にやることはタケノコ掘りなのだが。

 

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注意事項についての説明を受ける。特に、資料館の敷地外では絶対に採取しないように厳命された。タケノコはこの地域の特産品で、フェンスの向こうはきちんと整備された商業用の竹林である。この企画の実践にあたって、周囲との折衝などで苦労があったのかもしれない。

 

 

タケノコを掘る

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館の裏手に来た。右手に見えるのが、屋外展示の竪穴式住居である。

 

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そしてその周囲には迫り来る竹林が...。たしかに、これは放っておいたらいずれ全てが竹林に飲み込まれてしまうだろう。

 

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竪穴式住居を守るためにも、さっそくタケノコを探そう!

 

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地面をよく観察して、土が盛り上がっているところや、タケノコの穂先が顔を出しているところがないか調べて行く。タケノコの姿が完全に地上に露出してしまったようなものは、育ちすぎであり、固くてアクも強く美味しくないとされているからだ。

 

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ところどころにぼこぼこと穴が開いている。先人たちが、郷土資料館を竹林から守るために戦った跡だろう。

 

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タケノコの真新しい断面が残る掘り跡もあった。まだまだ若いタケノコがあるということだ。希望が見えてきた。

 

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そうこうするうちに、それらしい地面の盛り上がりを見つけた。期待を込めて掘り返してみたら、なんということだろう、発芽した栗だった。私のときめきを返して欲しい。(埋め戻した)

 

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10分ほどたった。「雨後のタケノコのごとく...」なんて言葉があるくらいだから、そこら中にボコボコ生えてるもんだと、頭の片隅に甘い期待を抱いていたが、そんな幻想は打ち砕かれてしまった。最近雨も降ってなかったしな...。

掘り跡の数から推察するに、そこそこの密度で生えていた時期もあったのだろうが、私が来る以前にも環境整備の有志たちがきちんと働いていたようだ。それはそれで、素晴らしいことなのだけれど。

といって、諦めるわけにはいかない。タケノコに限らず、目当ての生き物を見つけるために大切なのは「生息地に入ったら、見つかるまで探す」ことである。目視で探すだけだったのを、持参したクワで地表の土や落葉を掻き分けて探すようにした。

すると、

 

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お?

 

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見つけた!

表土をどかしてやるようにすると、以外にすんなり見つかった。頭を出したり地面を盛り上げていたタケノコは、朝から掘りに来ている人たちがとってしまっていたのかもしれない。

 

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タケノコを傷つけないように、優しく周囲を掘っていく。

 

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だいぶ出てきた。

 

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根元が見えてきた!

 

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根元と土の間にクワを入れる隙間を作って、

 

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テコの原理でいっきに地面から引き剥がす。

 

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ゴポッ!

という音がした気がした

 

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とれた!とれたよ!

 

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「オギャーオギャー!」という声は出さないが、正真正銘、生まれたての竹の子を取り上げた。ずっしりと重く、鼻を近づけるとみずみずしい香りを放っているのがわかる。上から下まで綺麗に掘り出すことができて、達成感がすごい。

 

コツがわかると、地面に埋まったタケノコを見つけるのはそれほど難しいことではなくなった。

 

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2本隣接して生えているのも見つけた。双子である。

 

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まずは小柄な弟を掘り出して、

 

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次にお兄ちゃんを掘り出そうとしたところ、

 

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クワの勢いがあまって折ってしまった。

 

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やっちまった...という顔である。

弟の前で兄にこんなむごい仕打ちをしてしまって、タケノコに口があったら恨み言を言われたかもしれない。折れた部分もきちんと食べるから、どうか許してほしい。

 

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疲れたので食事休憩中。

 

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午後も続けて彫り続ける。こんな形のいいやつや、

 

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すごく大きいもの(左)や三つ子(右)も見つけて、掘り出した。

 

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さすがに疲れてきた。ずっと中腰で作業する上に、土の中を縦横に走る固い竹の根を切って穴を掘らないといけないので、とても力が要るのだ。

 

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これだけ採れば十分だろう。食べる量的にも、環境整備という点でも。

 

 

魅力はタケノコだけではない

 

タケノコ掘りの話がなければこの郷土資料館に来ることはなかったかもしれない。

せっかくタケノコがつないでくれた縁でもあり、また入場料も払ったことなので、展示された郷土資料たちをしっかり見学して行くことにしよう。

 

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まずは竹林のすぐそばにある竪穴式住居。周囲の柵以外に、見たところ保護するための設備は一切なく、文字通り雨ざらしの状態である。大丈夫かしら?と思ったが、そもそも人が住むためのものなのだから、雨ざらしにしても大丈夫でなくては困る。ある意味、現物にもっとも忠実な展示といえるだろう。しかし竹林の侵攻を食い止めないと、数年内に竹で串刺しにされてしまうような気がする。

 

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すぐ近くには、余った材料も置いてあった。

 

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行きは気づかなかったが、本館と屋外展示をつなぐ砂利道にもタケノコの手が伸びてきていた。こんな押し固められた地面にまで生えてくるなんて、恐るべし、タケノコの繁殖力!

 

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館内の展示も見て行くことに。

 

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かわいらしい仏像や埴輪。

 

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日本初の貨幣である和同開珎の失敗作なんかも展示されていた。大昔には日本の中枢に程近い地域だっただけのことはある出土である。

 

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日本史の教科書で見た銅鐸の復元品が設置されていて、実際に音を鳴らすことができる。

写真で見るだけだと、いまいちどんな感じで使うのかわからないだけに、面白い体験だった。

 

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お茶の名産地なので、製茶機械などの展示もあった。

 

以上、疲れていたので細かい説明などはすべて読み飛ばしてしまったが、山城では貴重な遺跡がたくさん出土していることや、茶の製造には大変な手間がかかることがわかった。

 

 

採ってきたタケノコを茹でる

 

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タケノコは土から掘り出した瞬間から風味が落ち始めるので、疲れていたが帰宅してすぐに調理を始めた。

 

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穂先の固いところを切り落として、

 

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米の研ぎ汁に唐辛子を加えたもので2時間ほど煮込む。ボコボコボコと、面白いくらい盛大にアクが湧いてくる。

 

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手で持てるくらいまで冷めたら、皮を剥き固そうなところを切り落とす。茹でタケノコの完成である。

 

 

すでに夜中だが、食べる

 

茹でて皮を剥いた時点で夜の11時をまわっていたのだが、このまま食べずに寝てしまうなんて我慢できない。タケノコは新鮮なほど美味しいのだ。

料理が出来上がる頃には午前0時を過ぎていた。以下に載せるのは、文字通り丸一日の労働の成果である。

 

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タケノコご飯。

定番中の定番であり、絶対にはずせないメニューだ。

 

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茹でタケノコの刺身。

剥いた皮の端っこをかじってみると、なんの味付けもしていないのに強烈な旨味があって驚いた。ありのままのタケノコの味をそのまま堪能したい!という欲望を満たすために思いついた一品。

 

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タケノコのキンピラ。

私はキンピラが大好きなので、キンピラになりそうなものはなんでもキンピラ化する。風味を生かすために、唐辛子は入れていない。

 

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どれもびっくりするほど美味しい。

シャクシャクとした食感も、爽やかな香りも、舌にキュッとしみてくるような味も、どれもが目が覚めるように鮮烈だ。実際、早朝からずっと動き回っていてかなり疲れているはずなのに、横になった後もタケノコの味について反芻していたらなかなか寝付けなかった。これが、掘りたてのタケノコの力なのか!

 

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郷土資料館を助けるはずが、思わぬ素晴らしい体験をさせてもらった。なんといっても、たった200円の入館料で、タケノコ掘りから展示の見学まで存分に楽しめるのだから。

私が訪れた日にも、平日であるにもかかわらずタケノコ目当ての来場者が多数いるようだった。その中には、私のようにタケノコがなければ来館することのなかった人も含まれているはずだ。

この企画が来年も実行されるかどうかはわからないが、興味を持った人は施設維持のために人肌脱ぐことを検討されてはいかがだろうか。かくいう私も、来年もまた採りに行く気満々である。

こんなに美味しくて、人を惹きつけるタケノコが、放っておいてもあたりかまわずポコポコと生えてくる間は、山城郷土資料館も安泰であるにちがいない......(?)