ちょっと前ですが、ゴールデンウィークの翌週末に台湾へ行ってきました。
台湾にハマって年に何度も渡台する人が後を絶たない昨今、そんなに楽しいなら1回くらい行ってみようかなと軽い気持ちで決めた旅先でしたが、これが予想外に面白く、かつ気楽で、帰国するなり次はいつ行こうかななどと考えてしまうほどでした。
3日間の旅程をつらつらとまとめましたので、見てやってもいいぜという方はお付き合いください。
台北郊外にある桃園空港からは、市街地へ向かうバスが頻繁に運行されています。わかりやすい看板が設置されていて、まず迷わないので便利です。
海賊版DVDなどを捨てるための箱なんだろうけれど、なぜか中には少なからぬお金が...。泉や鳥居があると反射的にコインを投げたくなってしまうアレと似たようなものだろうか。
農園や山間部を縫うように走る高速道路を進むと、次第に土地が開けビル郡が現れるようになります。
台湾の建物は出窓や鉄格子で作ったベランダのようなスペースを標準装備していることが多いようです。そこに植木やガラクタを置いているので、町に独特な雰囲気が添えられています。
奥に見える特大のお坊様の垂れ幕と、手前の気の抜けたような手書きも字の看板の対比に注目してほしい。看板の字体が家の近くにある鉄工所のそれとそっくりで、どこの国にもこういうのを作る人がいるのだなあと関心。
異国情緒ある町並みや、そうかと思うと吉野家が現れたりするのを車窓から眺めて楽しんでいるうちに、台北駅の前に到着。特になにもない道端でバスを降ろされました。何もないと言いましたが、実際にはガラクタを寄せ集めて作った珍妙な人形たちが出迎えてくれました。
台北市内は非常によく交通網が整備されており、MRTと呼ばれる地下鉄を使えば市街地であればたいていのところへ行くことができます。初日は郊外にある猫空(マオコン)というお茶の名産地に行ってみることに。
猫空へ向かには、地下鉄の終着駅でロープウエイに乗り換えるですが、今は整備中で使えないという張り紙が。そして付近では、ロープウエイが止まったことを聞きつけたのか、乗りそびれた観光客を狙ってたくさんのタクシーが客引きをしています。聞けば山上の終着駅まで300元だとのこと。高いのか安いのかわからないし、そもそも普通にメーターを使えばいいじゃないかとも思いましたが、時間ももったいないので乗ることにしました。
目星をつけていた四哥の店という茶芸館が営業していた!台湾の人が真面目で良かった。
茶芸館というのは、ご当地物の茶葉を売りつつ、それらを使った料理や喫茶も提供してくれるお店のことです。
とても見晴らしの良い席を確保できました。手前には猫空の茶畑が、その向こうには台北市街地が一望できます。今回の旅行ではスルーする予定だった台北101ですが、図らずも遠くから眺めることができました(写真左寄りの、頭一つ抜けて高い建物)。
▲鶏肉の茶燻製
ほんのりと茶の香りがします。肉についた茶の渋味が、柑橘ベースのソースによく合っていました。
▲茶の葉の天ぷら
こんなに存在感のある茶葉は初めてだよ...と思わずつぶやきたくなる一品。
▲アフリカマイマイ
▲サシガメの幼虫
▲クモ(詳細不明)
▲何かのさなぎでしょうか?
▲ジンガサハムシ
山の中なので、車道のそばの茂みを除いただけでいろいろな生き物が観察できるのがうれしい。いつも思うのですが、生き物が好きだとどこの土地に行ってもそこでしかない出会いに恵まれるので、それだけで旅行の楽しみが数倍に膨れ上がります。
そんなこんなでお目当ての茶芸館に到着。こちらは六季香茶坊というお店です。
とても素朴なお店です。例によって人が少ないこともあり、雰囲気は最高。店内には見たところ照明がほとんどなく、軒から入る自然光がきれいな陰影を作っています。こういうところで飲むお茶は最高に美味しいに違いないと、期待が膨らみます。
凍結烏龍茶というお茶をいただきました。
”凍頂”烏龍茶の間違いでしょと思った人、”凍結”であってるんですよ!
この地域にはお茶を凍らせて保存する習慣があるんだそうです。冷凍庫から取り出したばかりのお茶の袋が汗をかいています。
店員さんは中国語オンリーなので茶葉の種類についての細かい説明なんかは聞けませんでしたが、筆談で丁寧に煎出回数や、煎出時間について説明してくれました。なんと7煎目くらいまではきちんと味が出るそうです。スプーン1杯の茶葉で2時間くらいお茶ができてしまいそうです。
茶葉を買うと、茶器一式と湯沸かし器を貸し出してくれます。思う存分、お茶をしながらダラダラしましょう。
各々の茶器の名称はこの通り。
せっかくなので教えてもらった茶を入れる手順を紹介します。
1. 茶海にお湯を注ぎます。
2. 茶海が温まったら、お湯を茶杯に移します。
3. 茶壷に茶葉を入れ、たっぷりのお湯を注ぎます。
4. 蓋をして待ちます。
5. 茶漉を通して全てのお茶を茶海に注ぎます。茶壷の中のお茶をいったん全て茶海に移すことで、茶壷の中でお茶の抽出が進みすぎたり、濃さが不均一になることを防ぐことができます。
6. 茶杯のお湯を茶盤に捨て、お茶を注ぎます。
完成!
茶杯を口元に近づけただけで、その香気の強さに圧倒されます。乾燥させた茶葉に比べて、すがすがしい香りが強いように感じました。口の中で花が開いたような感じです。今まで飲んだ中国茶の中で、一番美味しいかもしれません。
お茶請けには自家製の茶梅をいただきました。すっきりとした甘さで中国茶によく合います。
あまりお客がいなかったからでしょうが、横のテーブルで店の人たちが茶葉の選別だか加工だかをしていました。店に入ったというより、茶農家の軒先を借りている気分です。茶を入れては飲み、入れては飲みしているうちに、本当に2時間近く居座ってしまいました。
店の前に広がる茶畑を散策しながら駅まで戻ることに。観光客向けの遊歩道が整備されているので、作業をする人たちの邪魔をせずに畑の中を歩くことができます。
茶を蒸す釜でしょうか?
茶畑の中にお墓がありました。
装飾がカラフルでとてもかわいらしいです。
石でできた牛。
日本ではなかなか見かけない、日干し煉瓦でできた物置もありました。地蜂の巣穴がたくさん開いていました。
石でできた豚達。
何かと思ったら豚舎の展示でした。今は使われておらず、外に置いてあるのより少しだけリアル寄りの石豚が中に配置されています。牛も豚も、本物はもう飼っていないのでしょうか。
本物の猫。そこそここぎれいなので、誰かに世話してもらってるのでしょう。観光客には関心がない様子でした。猫空という地名にも関わらず、猫は2匹しか見ませんでした。
駅に戻る頃には日が傾き始めていました。暗くなってきたので行けませんでしたが、猫空には茶の博物館や、少し離れたところには山寺もあるそうです。個性的な茶芸館もまだまだ何軒もあり、一軒に居座ってゆっくりするもよし、何軒もはしごするもよしでいろいろな楽しみ方ができそうです。そしてなにより、お茶が美味しい!お茶を飲むためだけに台湾まで来る価値もあるかも、と感じさせてくれる場所でした。
続きます