伊丹市昆虫館できらめく昆虫たちの美しさに悶絶する

伊丹市昆虫館できらめく昆虫展を見学し、丸山宗利先生の講演を聴講してきた。
 

f:id:yanenouenomushi:20160811140202j:plain

 
丸山宗利先生は現在は九州大学総合研究博物館に所属しておられる昆虫学者だ。最近は「昆虫はすごい」や「きらめく昆虫図鑑」などの著書を活発に出しておられるので、名前を聞いたことのある人も多いのではなかろうか。
講演の内容は、先生の専門である好蟻性昆虫の話と外国での採集旅行の話がメインだった。好蟻性昆虫とは、蟻の巣に住み着いて食べ物や安全を提供してもらっている昆虫のことである。蟻の好物である蜜を出すなどしてきちんとギブアンドテイクの関係を守る律儀なものもいるにはいるそうだが、多くは一方的に蟻の巣に寄生するだけ。中には大切な蟻の卵や蛹を食べてしまう不届き者までいるそうだ。人間の世界と同じで自然界にもひどいのがいるなと思ったが、好蟻性昆虫は蟻に「ん、こいつ本当は仲間とちゃうのでは?」と感づかれたが最後、たいていは八つ裂きにされて殺されてしまうらしいので、寄生する側も命がけである。世知辛くなったとはいえ、人の世は虫の世に比べればまだまだずっと優しさに溢れているようだ。
論文未発表の研究成果や海外採集の話も含め、講演は非常に面白かった。もっとも印象に残っているのは、先生が北海道の草原に寝っ転がっていたときに、そばを通っている蟻の行列に見慣れない虫が紛れ込んでいるので、採集して調べてみたら新種の好蟻性昆虫だったという話だ。動植物と人間の間でも、運命的な出会いというものがあるのだろう。
 
 
 講演後はきらめく昆虫展で、キラキラした虫たちを存分に見学した

f:id:yanenouenomushi:20160811140803j:plain

f:id:yanenouenomushi:20160811140731j:plain f:id:yanenouenomushi:20160811140730j:plain

f:id:yanenouenomushi:20160813153330j:plain f:id:yanenouenomushi:20160813153338j:plain

▲大量に並べられるホウセキゾウムシの仲間たち 
 

f:id:yanenouenomushi:20160811140420j:plain f:id:yanenouenomushi:20160811140437j:plain

f:id:yanenouenomushi:20160811140533j:plain f:id:yanenouenomushi:20160811140534j:plain

f:id:yanenouenomushi:20160811140559j:plain f:id:yanenouenomushi:20160811140637j:plain

f:id:yanenouenomushi:20160813153302j:plain

 

f:id:yanenouenomushi:20160811140708j:plain

▲ニジダイコク

 

f:id:yanenouenomushi:20160811140520j:plain

▲生体展示されていたアイヌキンオサムシ
 
展示されている虫たちは、息を飲むほどに綺麗だった。すばらしい色彩美と造形美をあわせもった虫たちを収集して、部屋に並べて飾ることができたらどんなに素敵だろう。森を歩いていて、輝く虫を見つけ、捕まえることができたら、どんなに感動するだろう。自分もきらめく昆虫の標本を集めたい、できれば自分でも採集したいと強く思った。
 
 
時間があったので常設展示も見学した。こちらもなかなかクレイジーなものがあったので、いくつか紹介する。
 

f:id:yanenouenomushi:20160811140151j:plain

 
まずエントランスホールに入るとすぐに、巨大なミツバチが出迎えてくれる。
通称ビッグ・ビーと呼ばれる、ミツバチの巨大模型で、当然のように細かいところまで作りこまれている。
余談だが、蟻の巣に好蟻性昆虫がいるなら、同じ社会性昆虫である蜂の巣には好蜂性昆虫がいるのではないかと丸山先生に質問したが、今の所そういった昆虫は見つかっていないとのことだった。好蟻性昆虫は、異物と認識されて蟻に攻撃されることがないよう姿や行動を蟻に真似ていることが多い。蜂の場合は三次元的で蟻よりもはるかに複雑な動きをするため、真似をしようとしてもすぐに見破られてしまうのが、好蜂性昆虫がいない理由ではないかと言っておられた。
 

f:id:yanenouenomushi:20160811140134j:plain

f:id:yanenouenomushi:20160811140215j:plain

 

シロモンオオサシガメの生体展示。「ここでえものの肉ジュースをすうよ」とわざわざサインペンで書き足されている。

以前、恐竜を紹介する番組の中で、外国の古生物学者が化石の歯が生えているあたりを指しながら「すごい歯でしょう。夜道でこいつに出会ったりしたら、一瞬でミンチにされてしまいますよ」と言っているのを見たことがある。サシガメのPR文もこれと同じ発想から生まれたもので、肉食動物への愛着が暴走して、グロテスクな表現がはみ出てしまうことがあるのだろう。

 

f:id:yanenouenomushi:20160807173612j:plain

観光地によく見られる、顔を出して記念撮影するための看板もある。あえてこの虫をチョイスする姿勢がすばらしい。私も思わず顔を入れてしまった。
 
きらめく昆虫展の方はとっくに会期が終了してしまっているが、昆虫に興味がある人は常設展だけでも十分に楽しめると思われるので、訪問を検討してみるといいだろう。