リス村の続き。
リスと一通り戯れてから、移動を開始した。山間部を縫うように走る道を抜けると、場違いな感じがしないこともない垢抜けた町に出た。郡上八幡である。
郡上八幡には、郡上踊りという伝統が伝わっている。何をするかというと、日が落ちてから何時間も踊り続ける。それだけならどこにでもありそうだ。すごいのはここからだ。なんとこれを33晩に渡って続けるというのである。
目抜き通りはとても綺麗に整備されている。
側溝には綺麗な水が流れていて、鯉や川魚がゆらりゆらりと泳いでいるのが見える。台所から出た汚水に混じる残飯を食べて水の浄化を手伝ってくれる上に、ハレの日にはご馳走として食卓に上るという。
こんなところに猫発見。そんなところで寝ていると危ないよと注意しようとしたが、威嚇されてしまった。
おお、レトロで綺麗な建物がある!
もともと郡上町役場だった建物を観光拠点として再利用した施設とのこと。失礼ながら、こんな僻地の町役場ですらそこそこ凝った建物を建ててしまう、戦前日本の建築デザインに対するこだわりはすばらしいと思う。
元町役場の前の橋では川に飛び込んで遊んでいる人たちがいた。
日が傾いてきた。心なしか、そろそろ踊りが始まるのではないかと、周囲がそわそわしてきたようだ。見上げると、商店街のアーケードにも踊る人々の姿が。
踊りが始まった!山車が車道のど真ん中に引きずり出され、その上では三味線、太鼓、笛を使った囃子の演奏が始まる。
囃子を中心にして踊る人々。見よう見まねで参加する我々。
群集は、踊りながら山車の周囲を少しずつ回っていく。最初は周囲を見ながらぎこちない動きを繰り返すばかりだった我々も、一回りし終える頃にはそこそこ様になるようになってきた(ような気がした)
1時間ほど踊っただろうか、住民はまだまだ踊り続けていたが、我々は離脱して宿に向かうことにした。なんか小雨がぱらついてきたし、でも本当に雨が降っても踊り続けるんだね、などといいながら車を駐めた駐車場に向かい始めてから、すごいことに気がついた。
彼らが踊っている場所は駐車場の出入り口の真ん前だ
困ったことになった。そう、踊りが終わるまで車は出られないのである。暇で仕方がないので、団子屋でみたらし団子を買い、店主に「雨が降ってるけど踊り続けてますねえ」と水を向けてみたところ、「特別な祭りだからね!災害警報でも出ない限りやめないよ!」というような答えが返ってきた。すごいと思うやら、もどかしいやら。結局、10時頃になって踊りが解散する段になって、ようやく脱出することができた。
最後は散々な目にあったが、大勢の人々が山車を中心にして踊るさまは壮観だった。踊りの型にはいくつかあるのだけれど、どの型にも下駄をカランッと鳴らすステップがあって、大勢の人間が足踏みを合わせてこのカランッを鳴らす、その一糸乱れないさまが気持ちよかった。次は下駄を履いて来たいと思った。
町家の中に郡上踊りの歴代ポスターがずらりと展示されていた。一番のお気に入りはこれ。虫たちもついはっぴを羽織って踊りに来てしまうようなお祭りなのだ。