ヤマナシで果実酒を造る

前に紹介した、山の中で見つけた野性の梨(ヤマナシ)だけれど

 

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小ぶりのものは皮を剥くのも大変なので、まとめて果実酒にすることにした。

 

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表面をよく洗って

 

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水気をよく拭ってから真っ二つに切る。このとき、変色していたり種の周りにカビが生えているものは捨ててしまう。たくさんあるから、大盤振る舞いができるのだ。

 

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氷砂糖と一緒に瓶に入れ

 

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ホワイトリカーを流し込む。いたって簡単である。

材料の組成は

 ・梨 800g

 ・氷砂糖 100g

 ・ホワイトリカー 1.8L

栽培種の梨を使った果実酒のレシピをそのまま使わせてもらった。2週間くらいで飲めるようにはなるそうだが、時間をかけて熟成させた方が味がよくなるらしい。せっかくなので気長に待とうと思う。生で食べてみた感じだと栽培種に比べて酸味や渋味が際立つが、酒につけたときにこれが吉と出るか凶と出るかが気にかかるところだ。

ところで、ヤマナシと聞いて宮沢賢治の童話『やまなし』を思い浮かべる人も多いのではないだろうか?この童話は小学校の教科書にも採用されているので、作中で蟹の親子の会話に登場する「クラムボン」という謎の言葉の解釈に苦しめられた人も多いはずだ。

山中で夢中になって梨をもいでいるとき、「『やまなし』ってひょっとしてこのヤマナシ?」という思いつきが頭に舞い降りた。この着想は、希少な植物の実を見つけたという喜びに輪をかけて彩りを添えてくれたのだけれど、帰宅して調べてみると、作中の「やまなし」が植物学的に何を指しているのかは今をもってはっきりしないようである。

今、青空文庫で『やまなし』を読み返してみると、最後の方のお父さん蟹の台詞に次のようなものがある。

「待て待て、もう二日ばかり待つとね、こいつは下へしずんで来る、それからひとりでにおいしいお酒ができるから、さあ、もう帰ってよう、おいで」

やまなしは時間がたつと発酵(「ひとりでに」とあるので)して美味しい酒になるらしい。私のヤマナシと賢治のやまなしが同じものかはわからない。発酵酒と果物を酒に漬け込んで作る果実主もまったく別のものだ。わかってはいても、あの童話のような、ふわふわした甘美な現実感のなさをもった酒ができはしないと期待してしまうのである。