キウイが豊作だった

もう4ヶ月近く前のことだが、昨年の秋は実家の庭のキウイが大量に実をつけた。

ちまちま食べていても一向に減る様子を見せず、やがて飽きが来たか皮を剥くたびに手が痒くなるのに嫌気が差したかで、なんとなく部屋の隅に放置していたのだけれど、このまま腐らせるのはあまりに忍びなくて、一念発起、重い腰を上げて果実酒とジャムを作ることにしたのだった。

 

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キウイの汁まみれになりながら手を動かしていると、途中から痒いを通り越してヒリヒリと痛くなってきた。相当に苦痛だったのだけれど、美味しんぼに出てきた台詞(「ごわごわした毛だらけの皮を剥いたらエメラルド色の果肉が現れる。道化師の仮面を剥いで見たら中から美女が現れたみたいじゃないか」台詞もよくわからないが、発言者のおっさんは真っ二つに切られたキウイを見ながらハアハア言い出すんである)を思い出してニヤニヤしたりしながら、あるいは翡翠色のキウイをカメレオンに見立て、ゴミ溜めに落ちて汚物まみれになったカメレオン(カメレオンはとてもとろい動物なのだ)を綺麗にしてやるところを一人芝居よろしく思い浮かべて、やはりニヤニヤしながら、なんとかやり切った。

皮を剥きながらつまみ食いをしていると、あんなに食べ飽きたと思っていたはずなのに、甘酸っぱい美味さについ口に入れる手が止まらなくなった。このまま全部食べてしまおうかという思いがよぎったりもしたけれど、理性を振り絞って加工する分を確保した。

まだ硬いものは氷砂糖と一緒にホワイトリカーに漬けてキウイ酒に、熟れて柔らかくなってきているものは砂糖で煮てジャムにした。

 

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多寡の違いはあれど、毎年キウイは実をつけるのだが、果実酒にするのは今年が初めてである。初めてなのでもっとも無難なな氷砂糖+ホワイトリカーにしたけれど、なんせ材料はたくさんあるので、次回からはもっと違った漬け方も試してみたい。

 

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ジャムも大量にできた。自家製ジャムはそれほど日持ちしないのだけれど、こんなに作って腐らせる前に消費し切れるだろうか。問題を先送りにしただけなのでは...という疑念がなくはない。

 

キウイの木は、かれこれ20年くらい前に私が親にねだって買ってもらったものなのだけれど、当時買ってもらった植物には、他にもぶどうの木、さくらんぼの木、ひめりんごの木、グミの木なんかがあって、ものの見事に果樹ばかりだと我ながら可笑しくなる次第である。

ひめりんごの木とグミの木は買って2年足らずで枯れてしまい、さくらんぼの木は大きく生長したものの実をつけることは滅多にない。ぶどうは年によって実がついたりつかなかったりまちまちである。その点、特に世話もしていないのに、ほぼ毎年実をつけてくれるキウイは、なんと優秀なのだろう。まだヒリヒリと痛む手を擦りながら、建物を出て、壁を覆うように生長したキウイの木を見上げる。普段は背景の一部になってしまって注目することはほとんどないけれど、あらためて見るとこの20年でずいぶんと大きくなったものだ。毎年実をつけて偉いなと褒めてやる。褒めてから、都合のいいときだけ相手を持ち上げているみたいで後ろめたくなった。