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上海の茶市場と激辛四川料理

「上海の茶市場などに行ってみようと思うんだけど、一緒にどうかね」

知人のそんなお誘いをもらったのは、4月も半ばを過ぎた頃である。職を辞して約2週間、せっかく時間があるのだから久しぶりに外国なぞに行ってみようかしらと思っていた折も折、二つ返事で行きましょうということになって、いそいそと着いていったのだった。

昨年は台湾の台北を旅行して、食事の美味しさやらごちゃごちゃとした町並みの魅力やらに感激した。だから同じ中国文化圏である上海にも大変な期待をしていたのだが、果たして、上海も台北に輪をかけて面白いものたちにあふれた町だったのである。

 

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タケノコのように経済成長を続ける中国の中でも、特に景気のいい街が上海であると聞いていたから、さぞかし活気があるのだろうと思っていたが、空港から市街地へ向かうタクシーの窓から見ただけでもそんな雰囲気がビシバシと伝わってきた。

なんせ建設中のビルの多いこと多いこと、そこかしこに建設用のクレーンが林立しているのだ。何度も上海に来ている同行者は、来るたびにどんどん街の姿が変わっていくと言っていたが、さもありなん。

その反面、近代的で個性的なデザインの高層ビル群の谷間に、古めかしく赴きある外観の洋館などがちらほらと混ざっているのも印象的だった。上海にはかつて欧米各国の租界があったため、当時立てられた欧風の建物が今も多く残っているのだ。

日頃、感じのいい古い建物が耐震性やらの問題で取り壊されるのを歯噛みして見送っている身としては、うらやましい限りである。

 

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宿の近くでも何かの建て替えをやっていた。

 

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茶市場は宿の近くであったため、余計な荷物を置いて歩いて行くことに。

道を歩いていて面白いと思ったのは、日本では滅多に見ない電動の原付がたくさん走っていることだ。ほとんど音を立てずに近づいてきて脇をすり抜けて行くので、ヒヤッとすることもあったが、運転者はまったく気にも留めていない様子。大らかだなあと思う。

他にも、カードをかざすとロックが外れて使えるようになるレンタサイクル(乗り捨て自由)なども町中にあふれている。非常に便利そうだから、是非日本でも導入してもらいたい。

 

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目的地の茶市場、天山茶城。

3棟建てのビルの中に茶器や茶葉その他、茶に関する品物を商う店がぎっしりと詰まっている。

 

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ビルの中は、爽やかな茶の香りが立ち込めていた。どの店の店先にも、たくさんの種類の茶葉のサンプルを置かれていて、目移りがする。春は新茶の季節だからだろうか、店先に置かれている茶は、綺麗な緑色の緑茶が多いようだった。

中国茶といえば、烏龍茶のイメージが強いので、中国茶=発酵茶のことだと思っている人が多いのではないだろうか(私はそう思ってた)。実はそんなことはなくて、中国でも、茶は無発酵の緑茶で飲むことの方が多いんだそうである。一つ賢くなった。

 

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こちらは、茶葉だけでなく乾燥させた花(花茶などにするのだろうか)や漢方を売っている店。

他にも、茶器を売る店、茶を入れる化粧箱や包装紙を扱う店もあり、中国茶に関するものならないものはないのではないかと思うくらいの充実振りだ。

 

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せっかくだから茶道具を買おうと思い、いかにも道具屋のおっさんという感じの店主が番をしている、ひなびた店に入ってみた。

壁には棚が作り付けてあって、形も色もさまざまな大小の急須がたくさん並べられている。丸いのもいいし、平べったいのも面白いなあなどと思案しながらそれらを眺めていると、店主がベラベラと何か話しながら、次々と棚から急須を出して、台の上に並べ始めた。

中国語が堪能な同行者が前に立って話を聞いてくれたが、最初は店主が何を言っているのかよくわからない様子であった。そうこうしている間も、店主は急須を並べ続ける。

店主が急須をガラス製の台の上に置くたびに、コトンッ、コトンッと陶器を置くにしては派手な音が響いて、こちらは少し不安になる。同行者は店主に何か話しかけていたが、私は中国語がまったくわからないので、「案外適当に扱うものなんだな」などと思いながら、黙って眺めている他にできることがない。

そうして、私が内容を感知しない一連のやり取りが済んだ後、元の価格から大幅に値引きされた値段で急須が買えることになった。市場でのやり取りは、なんとも奥が深い。

 

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気に入った道具を安く買えた我々は、ホクホク顔で茶市場を後にして、夕飯を食べるために四川料理屋に向かった。

四川料理といえば、とにかく辛いんだろうなという先入観があった。実際には辛くない料理もメニューに上げられていたのだが、辛い辛いというイメージが先行してしまって、とにかく唐辛子が大量に入った料理ばかり注文してしまった。

上の写真の料理は、鶏の軟骨のから揚げが唐辛子やにんにくの山の中に埋もれた状態で供される料理である。

 

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こちらは、油に浸した唐辛子の山の中に魚を漬け込んだもの。

どちらも、唐辛子の山の中から可食部を掘り出して食べるタイプの料理である。

 

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豚肉ときゅうりの唐辛子炒め。

 

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豚の血を固めたものや内臓を、唐辛子と山椒が入ったスープで煮込んだもの。

他の3つの料理は、辛いながらもたいへん美味しく、ヒイヒイ言いながら食べたのだが、この最後の一品だけは厳しかった。唐辛子とは毛色の違う、山椒のスーッとする、粘膜に滲み込んでくるような辛さが、口、鼻の奥、喉、食道と、食べ物の通り道を順番に焼き尽くしていくのだ。

まさに辛さの暴力。ビールや水で舌を休ませながら食べ勧めたが、完食することは諦めた。これでも観光客向けにマイルドにされているらしいのだが...。

 

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まだまだ夜は長いので、夜景を見るためにタクシーで移動。

昼は大人しかった高速道路は、夜になると、なんと青く光り始めるのである。

「この街のイケイケっぷりをアピールするために、高速道路を青く光らせようと思います」

なんていう企画を会議で出したら、日本なら道路ではなく上司の顔が青くなりそうだが、上海では実現してしまうのである。軽はずみな発想に全力で投資できるなんて、楽しい街だなあと感心する。

 

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通った区間はずっとこんな感じで光っていた。

 

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足湯のある展望台に来た。

 

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お湯は少しぬるい。

 

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有名なテレビ塔が見える。

カラフルな上に、ビルの外壁に馬鹿でかい文字(しかも漢字)が映し出されたりするので、見ていて飽きない。

 

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ビルの壁面を使って自己主張しまくるので、とにかく派手。

 

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川を挟んで右手に見えるのは、外灘(ワイタン)と呼ばれる、歴史的な建築物の残る地区である。こちらは、ライトアップの仕方がずっとお上品である。

 

けばけばしいライトアップだが、ここまで派手だと、逆に気取ったところがない。大阪に住んでいた頃に初めてスーパー玉出を見たときも驚いたが、上海の夜景は同じ発想で規模を数千倍に拡大したようなものであり、ただただ「すごいなあ」と感心することしかできないのである。

なおライトアップは10時で示し合わせたように(実際、示し合わせているのだろうが)消灯されるため、それ以降は幕が下りたように真っ暗になった。