手軽に鯛の活け造りができる皿を作った

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豪勢な魚の活け造りが食べたい、しかし魚を美しく捌く技術もなければ、店で食べる金もない。ということで、上に載せるものさえ用意すれば手軽に活け造りを楽しむことができる機械を作った。

 

活け造りは見た目が大事

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味も見た目も豪勢な活け造りは、贅沢な魚料理の筆頭だが、そうそう手軽に楽しめるものではない。家庭で作るには材料となる生きた魚の調達からして難しいし、店で食べようとするとお金がかかるからである。

しかも、である。活け造りには「この魚さっきまで生きてたんですよ!」という、新鮮さを視覚的にアピールする意味もあるのだろうが、流通の発達した現代では、スーパーのパック詰めされた刺身も相当に新鮮で美味いのも事実だ。むしろ「ヘタに生きたまま輸送するより、釣り上げたその場でさっさと〆て血抜きした魚のほうが美味い」などと言われる始末。

マイナス点ばかり述べたが、活け造りが時代遅れだと言いたいわけではない。死んでいるはずの魚がピクピク動く姿に「きゃーー生きがいい!」などとはしゃぐこともできるし、切り身では味わえない魚の造形美を堪能することもできるのだから、活け造りが出てきたら否が応にも気分が盛り上がるのは事実である。

活け造りが食膳に上がってきた瞬間に思わず「おお!」という声を上げてしまう、あの胸の高まりを、いつでもどこでも好きなだけ楽しめるようになれば、素晴らしかろう。

ということで、作ったのがこの 活け造りマシーンである。

 

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使ってみた

作った活け造りマシーンを使ってみるために河原にやってきた。

作り物故に場所を選ばないのも、こいつのいいところである。

 

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組み立て中。

 

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セット完了!

 

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その辺のスーパーで買ってきたばかりの、ただのパックの刺身を盛り付ける。作り物に添えるのに相応しく、刺身にのせられた食用菊もプラスチック製の作り物である。

 

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盛り付けた。おお!見た目は完全な活け造りだ!

 

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「いつでも、どこでも」というコンセプトどおり、川の流れを眺めながら、活け造りを楽しめて大満足である。

さて、できの良い皿活け造りは、魚の鮮度が良すぎて皿の上でピクピク暴れてしまうことがあるようだが、そこのところももちろん再現してある。

スイッチを入れてみよう。

 

youtu.be

 

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ちゃんと動いた!

正直、スイッチを入れるまで対して期待はしていなかったのだが、実際に動かしてみると思ったより自然な跳ね方をし出して、笑ってしまった。

作り物なので、いつまでたっても活きの良さが衰えないのも素晴らしい。逆に難点は、モーター音がかなり騒々しいところだろうか。音のせいで道行く人も思わずこっちを見てくるし。

 

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心なしかただの刺身も美味しく感じる。

 

雨宿りをはさんで、かまぼこを載せてみた

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刺身を食べていたら雨が降ってきたので、橋の下に避難した。

 

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逃げ込んだ橋の下では、なにやら大勢の人が集まって演説に耳を傾けていた。なんでも、不法投棄取締りの新しい看板の除幕式で偉い人が来ていたらしい。

 

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隣に立っていた人が手元を見て「え?」という感じの表情をしたが、恥ずかしいのでできるだけ目を合わさないようにした。変わったスタイルのデモをしに来た奇人だと思われたかもしれない。

 

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雨がやんだので、しつこく再開する。

今度はかまぼこである。活け造りの趣旨には反するけれど、どこまで低コストでそれらしい雰囲気を再現できるか試してみたくて載せてみた。足元が悪い中で、かまぼこを綺麗に並べようと奮闘していると、「私は何をやっているんだろう?」という思いが湧き上がってくるが、正気に戻ってはいけない。

 

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見た目だけは風流。

 

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感想

予想外にちゃんと動くものができたのでうれしかったし、パックの刺身やかまぼこをただ食べるよりもずっと楽しく食事することができた。しかし一つ問題がある。最初のインパクトを過ぎると、だんだん見飽きてくるのだ。でもよく考えたら、それって本物の活け造りでもそうなんじゃないだろうか。最初出てきたときは「わあ!」と思うんだけど、可食部を食べつくす頃には、生臭くて扱いに困る肴の残骸になっているのではないだろうか。良くも悪くも出オチな道具で、宴席などで使う場合はころあいを見計らってスイッチを切ってしまうのがよいだろう。そう言う意味でも、本物に忠実な偽物を作ってしまったと言えるかもしれない。

 

作り方

需要があるかどうかわからないのだが、一応作り方をさっくりと解説しておく。

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魚部分の材料は、芯になる発泡スチロールと、造形用の石粉粘土である。

 

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作りたい魚が決まったら、ネットや図鑑で写真を見たり、現物を観察して、大まかな形を発泡スチロールに書き込んでいく。

 

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それっぽい形に削り出す。

 

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活け造りなので、頭と尻尾だけ作ればよい。

 

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石粉粘土を盛り付けて、

 

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目指す魚の形に近づけていく。

 

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乾燥したところから、カッターナイフで削って鱗などの細かい部分を作りこんでいく。ヒレは薄く作りたかったので、発泡スチロールではなく針金を芯材に使った。

 

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削ったり、粘土を盛り直して修正したりを繰り返しつつ、なんとかそれらしい形になった!

 

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裏側は見えなくなるので、手を抜いている。

完璧を目指すと気がもたないので、そこそこのところで切り上げることが肝心だ。

 

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アクリル絵の具で色をつける。

 

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できた。

色を重ねるごとに魚がいきいきとしてくるのが楽しくて、途中で金や銀のアクリル絵の具を買い足してしまった。化粧品をたくさん買い集める人の気持ちが少しだけわかった気がした。塗る相手は作り物の魚だけれど。

 

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別に作っておいた胸鰭を合体させて、表面に耐水性のニスを塗ったら

 

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魚部分の完成!

なお、ここまでの魚の造形と着色に全工程の8割ほどの時間がかかっている。

 

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台を作る。

まず木枠を組み立て

 

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魚を固定するためのピンを埋め込む。

 

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魚が動く仕組みには、タミヤ模型のギアボックスを使った。

 

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モーターの回転をギアボックスで減速、さらにクランクで回転運動をピストン運動に変換し、魚に繋がった紐を引っ張ったり緩めたりしている。

より断続的で自然な動きにするためにArduinoで制御を...とも思ったけれど、面倒なので今はやらないことに。

 

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手巻き寿司用の巻き簾で蓋をし、魚を取り付けて完成である。

この記事を読んで、「活け造りといえばイセエビだろ!」とか思った人は、是非作ってみてほしい。

 

おまけ

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 グレープフルーツを盛り付けてみた。もはや魚肉ですらなく、偽物に偽物をのっけた格好で何をしたいのか自分でもわからないのだが、見た目だけは綺麗に収まっているのだからすごい。魚を食べられない人に出して反応を見てみたいと思った。

 

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