中国で大ブームのザリガニ料理、麻辣小龍蝦(マーラー・シャオロンシア)はハマる味だった

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中国で今、ザリガニ料理が熱いらしい。

ザリガニを食べること自体は、別に驚くことではない。欧米にもザリガニ料理はあるし、そもそも自他共に認める「なんでも食べる」中国人民のことだから、ザリガニを食材として利用しようとするのはごく自然なことだ。

大変なのは、そのザリガニブームの勢いである。ザリガニを提供する店は年々増え続け、なんでもその数はケンタッキーやマクドナルドをもしのぐと言うのだから、尋常ではない。

そんなに美味しいのだろうか?

とても気になるので、ザリガニ料理の中でも一番人気があるという麻辣小龍蝦(マーラー・シャオロンシア)という料理を、作って食べてみることにした。

 

材料調達

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材料調達と言ったものの、要するにただのザリガニ釣りである。

いまどき、そこらの田んぼで見ることのできるザリガニのほとんどは、外来種であるアメリカザリガニである。本来なら憂慮すべきところなのだろうが、アメリカザリガニは在来種のニホンザリガニよりもずっと大きいため、食材としてはありがたい存在である。さらに言うと、アメリカザリガニよりもさらに大きいウチダザリガニという外来ザリガニも存在するのだが、近場の生息地を知らないので、今回はアメリカザリガニを狙うことにする。

 

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投げやりな案山子に一瞬ヒヤッとさせられつつ、ザリガニを探す。

 

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見えている魚は釣れないというが、見えているザリガニは釣ることができる。

タコ糸の先に餌のスルメとおもりの小石を結びつけて、水底で待機しているザリガニの目の前に沈めてやると、腹を空かせた個体であればすぐに食いついてくる。

 

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後は慎重に引き上げるだけだ。ザリガニに不信感を抱かれぬよう、そーっと糸を手繰り寄せる。

 

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アメリカザリガニ、ゲット!

ザリガニを釣るのはものすごく久しぶりだったのだが、目視でザリガニを探すのは宝探しのようで楽しいし、餌を沈めたら沈めたですぐに食いついてくれて楽しいしで、狩猟本能と達成感を短時間で何度も満たしてくれる素晴らしい娯楽であると思った。何より、長大な待ち時間が発生しないのが良い。

 

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警戒心が強く、水面に出た途端に餌を放して逃げてしまう個体もいた。

こういう賢いやつが、最後には生き残るのであろう。

 

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1時間ちょっとで11匹を釣り上げることができた。試しに料理する分には十分な量である。

子供たちに釣り上げられたのならば、その場で逃がされるか、持ち帰られても飼育されるのであろうが、私に釣られたこいつらは食べられてしまう運命にある。食いついた餌の先にいる相手次第でその後の生死が決まってしまう、ザリガニの社会はかくも厳しいのである。

 

 

調理する

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麻辣小龍蝦は四川風の辛くスパイシーな味付けの料理なので、味付けにはいろいろなスパイスを使用する。中国版クックパッドのようなサイトに掲載されたレシピを翻訳して読んでみた感じでは、四川風の味付けに欠かせない生姜、にんにく、唐辛子、花椒に加えて、自分の好きなスパイスを使って好みの味付けにしているようだった。

今回は、生姜、にんにく、唐辛子、花椒八角、ローレル、たまねぎ、それから写真には写っていないが黒胡椒を使うことにした。量は全て適当である。

余談だが、スパイスを全部皿に出すと中国に行ったときに食堂や市場で嗅いだ、いろいろな料理や食材の入り混じった空気の匂いが台所に立ち込めて、ものすごくテンションがあがった。

 

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唐辛子は種を取り除き、八角とローレルは細かくちぎる。

 

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生姜、にんにく、たまねぎはみじん切りに。

 

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ここでメインの食材の登場!

自分たちの運命も知らずに、ガチャガチャ音をたてながら動き回っている。

 

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まずはザリガニを綺麗にする。殻の間に入り込んだ泥などを落とすために、歯ブラシでごしごしと擦ってやる。たまにものすごい勢いで暴れて抵抗するものもいて、手を切りやしないかと肝を冷やした。

 

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ワーイ、綺麗になったよ!バンザーイ!

とは思っていないだろうが、ともかく綺麗にはなった。次は背ワタの除去である。

 

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背ワタとはザリガニの腸にあたる部位であり、中には消化された餌や泥が詰まっていて汚いので、調理する前に抜き取ってしまう。

やり方は簡単で、尻尾の真ん中、上の写真の青く囲った部分を折り、

 

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引き出してやるだけである。

背ワタは残っていると臭みの原因にもなるので、途中で千切れたりしないよう慎重に引き抜いてやることが大切だ。

 

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最後に邪魔なヒゲを切り落とし、もう一度水でよく洗えば、下ごしらえは完了だ。

さしものザリガニたちも、腸を抜かれたりひげを切られたりですっかり元気をなくしてしまった。活きがよすぎると油に入れたときに暴れ出して危ないので、これはこれで好都合である。

 

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スパイス、ザリガニの両方が準備できたら、調理開始だ。

中華鍋に多めの油を入れて加熱し、

 

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ザリガニを投入する!

 

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ザリガニの全身が赤くなったら、スパイスと砂糖を入れて全体になじませる。

 

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スパイスの匂いが立ってきたら、酒と醤油を入れ、混ぜる。

さらに塩とザリガニがギリギリ浸らない量の水を入れ、

 

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蓋を被せて蒸し煮にする。

 

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水気が半分くらいになるまでとんだら、麻辣小龍蝦の完成だ!

 

食べる

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皿に盛り付けた。

各種スパイスの混じりあった香りはとても良い。さて、肝心のザリガニの身の味はどうだろうか...。

 

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これは殻を剥く前。

 

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で、これが殻を剥いた後。

ちっさ!

と思ったかもしれないが、基本的にはエビと同じで、主な可食部は腹部のみであるため、まあこんなもんである。問題は味だ。めちゃくちゃ泥臭かったりしたらどうしよう...。

 

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知らないものを口に入れる瞬間は、いつも少し不安。

 

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ん!美味しい!大勝利

 

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エビに似た味だけど、ちょっと違う。爽やかな甘みのある味だ。そしてその甘みを、四川風のスパイシーな味付けが見事に引き立てている。心配した泥臭さだが、こちらは逆にスパイスによって打ち消されているのか、それともはじめから臭みなどなかったのか、まったく感じられなかった。

肉質も特徴的だ。こちらはエビよりも蟹に近く、繊維質だがフワフワとしている。そのフワフワとした肉に、漬け汁がよくしみこんで、一口噛んだ瞬間のジューシーな食感を生み出している。

つまりはとても美味しくて、中国人が夢中になって国中にザリガニ屋を乱立させてしまうのも納得の味なのである。

 

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せっかくなので他の部位も食べてみよう。

まずはハサミだ。

 

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噛み割って中の肉と食べる。

うーん、噛んだときは旨い汁がジュッと出てくるんだけど、いかんせん食べにくい。爪楊枝でわざわざほじくりだすほどの量でもないし、スルーしてもいいかもしれない。

 

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次は胸部に詰まったザリガニみそ。こちらは背甲(背中側の殻)を体から剥がしたときに露出する腹側のみそなのだが、これをこそぎとって食べてみた。

おお、これは美味しい!こってりとした濃厚な味に加えて、口に入れるとザ・甲殻類という感じの良い香りが鼻に突き抜けるのがたまらない。こんなに美味しいみそを捨てては罰が当たるので、少しも残さぬよう念入りにほじくり出して食べた。

 

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この調子で背甲の側に張り付いたみそも味わう。

ん、んんん?

黄色っぽいみそは腹側と同じ味で美味しいのだが、そのすぐ下に隠れている茶色っぽい部位に箸が届いた途端、なんだが苦くて生臭い味が混じるようになった。おまけに、ジャリッと砂までかみ始める始末。これは推測なのだが、この部位には胃袋のようなものがあって、未消化の餌などが紛れ込んでいるのではないだろうか。いずれにせよ、ほんの少し場所がずれただけでものすごい味の落差がある。

不味いし、加熱しているとはいえ汚い気もするので、背中側はあまり深追いしないほうがよいだろう。

 

まとめ

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▲部位ごとの感想をまとめてみた

 

そのへんで獲れたザリガニを麻辣小龍蝦にすると、すばらしいご馳走になることがわかった。食材にマッチした料理法を見つけてやることは、本当に大切である。あまりに美味しいので、ザリガニを見る目が変わってしまったくらいだ。

ザリガニブームが中国を席巻した理由を、自分の舌でもって納得できたのは大きな収穫だったと言えるだろう。

 

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食べた後には、捕獲したザリガニとほぼ同体積の殻のゴミが残された。味は良いが、ザリガニは可食部が少ないのである。中国では、複数人でザリガニ料理を囲む場合、テーブルの上に文字通りザリガニの山ができるそうである。ザリガニが旨いことはわかったので、機会があれば本場でそんなザリガニの山を貪ってみたいものだと思った。

 

参考サイト

ザリガニ料理、中国で爆発的ブーム 「マクドナルドを超えた」の報道も

 

 

 
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