怒涛のカイミジンコとドジョウ推し、琵琶湖博物館

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8月も終わり、涼しくなってきたからどこか気持ちのいいところに出かけたいな、ということで、夏休み最終日のキッズたちに混じって琵琶湖博物館を見学しに行ってきた。

常設展に加えて、「小さな淡水生物の素敵な旅」展と、日本に生息する全てのドジョウを集めた大どじょう展まで開催していたので、タイミングの良さに狂喜した。

 

小さな淡水生物の素敵な旅

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淡水環境で生活する小さな生き物たちについて、また非力な彼らがどうやって世界に広がって行くのかを主に解説する展示である。

 

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ホタルとナマズ。琵琶湖とそこから流れ出る河川が作るみずみずしい環境のおかげで、滋賀県にはいろいろな淡水生物がいる。

 

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が、環境の変化のせいで、滅んでしまった生き物もいる。私が大好きなゲンゴロウは県内では絶滅、タガメも長らく見つかっておらず、状況は悲観的である。

ともかく、生き物が生息域を広げようとするのは、環境の変化で一網打尽に絶滅させられてしまうのを防ぐためでもあるらしい。

 

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では、魚のように長距離を泳いだり、虫のように空を飛んだりできない微生物が、どうやって広い世界に広がっていったのか?というのが、展示のテーマだ。

アメコミ風の微生物紹介に、企画者のセンスが光る。獣や鳥や魚や虫に比べて無機質な印象の微生物だけれど、セリフなんかつけられたら、いっきに感情移入してしまうではないか。

 

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ミジンコ、イタチムシヒドラ、ユスリカ...たくさんの微小生物が紹介されていたけれど、展示企画者の一押しはカイミジンコという生き物のようで、並み居る微生物sの中で展示が一番充実していた。

カイミジンコ二枚貝のような殻をもつ微生物で、ピンチになると殻を閉じてなかに引きこもるのだそうだ。なかなかかわいい生き物だ。

しかし一般受けはあまりよくないようで、

「ミジンコは見た目が可愛いからまだわかるけど、なんでカイミジンコをメインに据えたのだろう」

と囁く声を私は聞いてしまった。

この愛らしさがわからんとは...と内心反論したが、人間は黒くてパッチリとした目のある生き物に弱いので、仕方のないことかもしれない。

 

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特定の地域にしかいないものが固有種、いろいろな地域で見られる物が普通種と呼ばれる。カイミジンコでは、なんとイースター島と琵琶湖の両方に生息している種もいるらしい。

 

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ザリガニとカイミジンコのぬいぐるみ。

外来種であり、稲の根を切ってしまうことで悪名高いアメリカザリガニ。しかし彼らも生き残るために必死で生息域を広げようとしているのだ、と言われると、少し見方が変わるのではないだろうか。

 

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微生物が拡散するには、増水による湖や河川の氾濫に乗じたり、生き物の手足についた泥にもぐりこんで移動したり、水鳥や魚に食べられて移動、その後糞と一緒に排出されるといった方法があるようだ。

特にカイミジンコは、殻を閉じれば消化液から身を守ることができる。鳥に飲まれたカイミジンコの、だいたい4分の1くらいは生きたまま排出されるらしい。逆に言うと、4分の3のカイミジンコは排出されないうちに「もう大丈夫かな?」と殻を開けてしまって、その瞬間に流れ込んできた消化液で死んでしまうわけで、なんとも厳しい話だ。

 

大どじょう展

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日本には33種類の在来ドジョウと、何種類かの外来ドジョウが生息している。

大どじょう展では33種類全てのドジョウが展示されていて、さながら日本ドジョウサミットという趣きであった。

 

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オオガタスジシマドジョウ。世界中で琵琶湖にしかいない希少種。

 

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ビワコガタスジシマドジョウ。ななんと、こいつも琵琶湖固有種。

ドジョウだけで2種類も固有種がいるなんて、どんだけ奥深いんだ、琵琶湖の生態系。

 

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斑点模様がとても綺麗なトウカイコガタスジシマドジョウ。東海地方にのみ分布。

 

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臭い臭いと言われつつもなんだかんだで知名度もありファンも多い鮒寿司に対して、どじょうずしなる料理が存在することはこの日このときまで知らなかった。表舞台に出る機会が少ないのは、インパクトの強過ぎる見た目のせいだろうか。こういう味の想像がつかないものこそ、一度賞味してみたいものだ。

 

常設展

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特別展を見るだけで数時間を消費してしまったが、琵琶湖博物館は常設展もすごいのである。

 

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まずは地質学の展示。琵琶湖ができるに至った数万年オーダーの地形変化を堪能できる。

 

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次に琵琶湖にまつわる文化の展示。丸子船という、琵琶湖上の物資の運搬に使われた船が展示場の真ん中に鎮座している。

このコーナーの展示をみると、この土地に暮らす人々の生活様式や技術が、琵琶湖の恩恵を最大限享受できるように進歩してきたのがわかる。民俗学博物館を見たときにも思ったけれど、人間の文明は環境の型を反映した影絵のようなものなのだ。

 

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中でも特に感心したのがこれ。

「えり(魚扁に入)」という漁だ。葦などの植物を束ねた壁で水中に複雑な構造物を作り、魚を追い込む漁法である。

ひとつひとつの形にどういう意味があるのかは知らないが、おそらくは何世代にも渡って魚の習性を考えつくして、改良に改良を重ねてこの形になったんではないだろうか。


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文化にまつわるコーナーを抜けると、最後が琵琶湖や滋賀県内の環境や生き物について展示するコーナーだ。

写真は葦の群生地などに住み、あざとい可愛さをもつカヤネズミ。

 

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印象に残ったのが、獣害についてかなりのスペースが割かれていたことだ。

はて、こんなもの前に来たときにあったかな?(そもそも前に来たのは小学生のときだけれど)と思ったが、なんでも最近展示室を改修したときに加えたものらしい。博物館が世に伝えたいことも、時代とともに変わっていくということだろう。

 

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鹿「やっかいものになっちゃった。どうしたらいいんだろう?」

私(狩猟をする人)「言わせないでくれよ...」

 

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カワウの鳥害を紹介するコーナーでは、なんとカワウが住む森の匂いまで体験できる。鼻を近づけてみると、魚を食べる鳥の糞のアンモニアが絡んだ生臭い臭いがちゃんと再現されていて、舌を巻いた。

すごいと感心する反面、「その...あまりカワウを悪者に仕立ててやってくれるな...」と若干の心苦しさを覚えた。

 

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県内に生息する生き物の標本が一堂に会するコーナー。

 

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獣のみなさん。

 

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鳥類のみなさん。

 

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去年撃って食べたホシハジロもいて少し気まずかった。

 

この後は延々水槽が並ぶ通路を通り、琵琶湖の魚をこれでもかと見せられたのだけれど、それまでの展示をじっくりと見すぎたせいで疲れていたのと、閉館時間が迫っていたせいであまりゆっくりとみることはできなかった。

 

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カイツブリの子供とか

 

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なぜかアザラシやチョウザメがいた。

 

興味深い展示が盛りだくさん過ぎて、最後は頭の周りをカイミジンコが舞っていた。

大どじょう展は無事閉幕してしまったけれど、「小さな淡水生物の素敵な旅」展は11月19日までやってるそうなので、是非。

 

 

 

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