肉まんに野菜丸ごと入れてみた

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「〇〇と××って似てる」という気づきを得ることは、日常のささやかな喜びであると思うのだけれど、先日新しく似ていることに気がついたペアがある。タマネギと肉まんである。

丸い形といい、頭頂部にピンと立った角といい、あらためて見るとどうして今まで気づかなかったのかと不思議に思うほど似ている。ここまで似ていると、これはひょっとすると肉まんの外見はタマネギを模してデザインされたものなのかもしれない。もしそうなら、私は「タイヤキって鯛にそっくりだよね」などといって喜んでいるのと同じくらい、無知で無邪気なことを言っていることになるわけだ。

そんなことをつらつらと考えているうちに、形がそっくりなら、肉まんの中にタマネギをそのまま入れられるんじゃないかと思い至った。

 

 

作り方は普通の肉まんとほぼ同じ

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まずは外皮の生地をこねる。

ネットで拾ってきたレシピの通りに作ったら、案外固くてこねるのに苦労した。

 

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次に肉餡を作る。冬に獲った鹿の肉がまだ冷凍庫に残っていたので、解凍して使うことに。

味付けには醤油とかごま油とか胡椒とか、いろいろなものを使っているのだが、一通りこね終わると自分の指にも挽肉と同じように、調味料の香りがしっかりと染み込んでいる。味付けしているつもりが、気がついたら自分が味付けされていたわけで、完全に「注文の多い料理店」状態である。

 

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普通の肉まんと違うのはここからだ。

タマネギだけだとさびしいので、冷蔵庫の中で暇そうにしていたピーマンとトマトにも応援に来てもらった。

 

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まずはタマネギ。二つに割って中心部を取り出したタマネギに肉餡を詰め、

 

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合体!

ちょっとだけモンスターボールに似ている。

 

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平たくのばした生地の上に置いて

 

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生地で包み込む。てっぺんにはもちろん角を立ててやる。

なんだかすごくかわいい。食べちゃいたいくらいだ。

 

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ピーマンの場合はもっと簡単で、ヘタの周りを切って種ごと引き抜き、開いた穴に肉をぎゅうぎゅうと詰め込んでやる。

 

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包んだところ。

 

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トマトも同じようにして肉を詰める。

よく熟したトマトは非常にジューシーで柔らかく、開口部に肉を詰め込もうとすると汁が漏れたり皮が破れそうになったりでとても危なっかしい。文字におこして説明すると、これまたなんだか危なっかしい。

その昔、ヨーロッパではトマトに毒があると信じられていて、一部の勇敢な人々はハラハラしながらこれを食べたそうだが、数百年の時を越えて今わたしもトマトにハラハラさせられている。

 

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なんだか包み方が雑に見えると思うが、下手をすると生地よりも柔らかいトマトはタマネギやピーマンよりずっと包みにくかった。

 

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蒸す。

普通の肉まんは15分くらいで中心まで火が通るようなのだが、野菜の層がある分時間がかかりそうな気がしたので、25分くらいかけて蒸し上げることにした。

 

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竹の蒸篭から立ち昇る湯気の香りが、祖母の家の匂いに似ている。ちょっとノスタルジックな気分になりながら、蒸しあがるまでの時間を過ごす。

 

 

食べてみる

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なかなか上手く蒸しあがった。

手前がタマネギ肉まん、置くがトマト肉まん、右の小さいやつは余った材料で作った普通の肉まんだ。

生地が大きく膨張したせいで、タマネギ肉まんのチャーミングポイントである角が消えてしまったのは残念だ。大きくなるにしたがってチャーミングな部分が消えて行くのは人の子と同じである。ここは立派に大きくなってくれたことを喜ぶことにしよう。

 

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こっちは2つ作ったピーマン肉まんと、これまた余った材料で作った普通の肉まん。

 

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結構大きい。

あと無精髭が酷い。

 

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ムシャリ...

ん?

 

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この感覚はなんだろう...この、あるべき物がない、キツネにつままれたような感覚は...。

 

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肉が端まで詰まっていないのであった。

 

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3分の1くらいまで食べ進めると肉が出てきた。

うん、美味しい!肉まんのもちっととした皮の食感と、じゅわっとした肉餡の食感の間に、張りのある歯触りのピーマンが挟まったことで、食べ応えがアップしたように思う。映画館に例えるなら、映画泥棒と本編の間にゴリラのドラミングの映像が5秒だけ流れるような。よくわからない例えかもしれないが、要するに毛色の違うものが間にくることで、メリハリが生まれるのである。

 

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次はタマネギ肉まんだ。ピーマン肉まんの出来が良かったので非常に期待が高まった状態で食べたのだけれど、これは正直なところイマイチであった。球形で縦に繊維の走ったタマネギの表面を歯が滑ってしまい、一齧りで肉のところまで到達できないのだ。これではまるで傾斜装甲だ。タマネギは刻んで餡の中に混ぜ込んでしまうのがよいという結論にいたった。もちろん味は良かったのだけれど。

 

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最後はトマト肉まん。

これは,,,これはすごいぞ!期待をはるかに上回る美味しさ。

まず齧ったそばから溢れてくるアツアツのトマトの洪水に意表をつかれた。そうか、蒸したトマトは液状化するのか。どろどろになったトマトと肉の相性も抜群である。肉まんの生地は油分をたくさん含んでいるので、これだけ水分の多いものを包んでも短時間では染み出してこないのもうれしい。

 

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褒めてはみたものの、ぼたぼたとこぼれて食べにくいのも事実。この点は現代人の感覚的にはマイナスポイントである。肉汁+トマトから出てきた水分で、トマト鍋をひっくり返したような量のスープがあとに残された。

 

 

総評

独断と偏見に基づいた、野菜丸ごと肉まんたちの評価はこうだ。

 

ピーマン肉まん

  • 味     ★★★☆☆
  • 食感    ★★★★☆
  • 食べやすさ  ★★★★★

 

タマネギ肉まん

  • 味     ★★★★☆
  • 食感    ★★☆☆☆
  • 食べやすさ  ★★☆☆☆

 

トマト肉まん

  • 味     ★★★★★
  • 食感    ★★★★☆
  • 食べやすさ  ★★☆☆☆

 

なんだか一長一短ある評価ばかりだけれど、野菜肉まんを作るきっかけになったタマネギ肉まんの評価が一番低いのがなんだか悲しい。それと対照的に、たいして期待をしていなかったのに一番気に入ったのはトマト肉まんである。大げさだが、世界を目指せる美味しさだと思った。

肉まんはそれだけで食べると野菜不足だが、野菜肉まんならその点も解決可能だ。ハンバーガーと互角か、それ以上の戦いが出来るはずである。

私がなにかの拍子に片手間で飲食店の経営が出来るくらいのビッグネームになった暁には、こいつで世界進出を狙ってもいい、そんな妄想をするくらいには気に入った。出資者募集中である。

 

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