大きな割り箸を作って、ついでに転ばしてみた

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「割り箸を使うのをやめても環境負荷はさほど変わらないらしい。割り箸の材料にされるのは、他に使い道のない木っ端だからだ」

自宅で大工仕事の後に残った余り物の木材を前にして、昔誰かが言っていた割り箸に関する豆知識を思い出した。使い道のない木材が割り箸になるのなら、私の余った木材も割り箸に加工してやりたいと思った。しかし普通の割り箸をたくさん作っても面白くない。そこで木材の大きさをフルに活かした大きな割り箸にしてやることにした。

 

大きな箸ができるまで

思いつきでおかしなものを作ることができるのは、ほぼ電動工具たちのおかげだと言っても過言ではない。仮に手動の鋸しか持っていなかったとしたら、大きな割り箸などという無用の長物を作ろうなどとは絶対に思わなかったはずだ。いや、よしんば思いついたとしても実行に移すことはなかっただろう。文明の利器は、人を無駄なことに駆り立てる。

 

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まず木材の縦方向にのこぎりを入れ、全長の4分の3くらいのところまで裁断する。

 

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切れ込みの入っていない部分には、割れやすいようにトリマーで溝を切ってやる。

 

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最後にヤスリで丁寧に磨く。

弁当を食べようとして、ささくれ立った割り箸に当たったときの悲しさといったらない。棘が口に刺さりそうで及び腰になるし、食べ物の味も心なしか落ちるような気がする。そういう残念な経験があるから、私はこういう細かいところも手を抜かないのだ。たとえ箸として使うことがないとわかっていたとしても。

 

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本体はできたので、次は箸袋だ。A3サイズのコピー用紙をつなぎ合わせて袋状にしてやる。

 

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「あの切れ込み」もちゃんと再現した。

 

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思った以上にちゃんと割り箸になった。

この状態で数日放置しておいたところ、部屋に遊びに来た友人に

「大きな割り箸みたいな物があるなと思ったら、本当に大きな割り箸だった」

と言って呆れられた。

 

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さて、仕上げだ。墨汁使うの、何年ぶりだろう。

 

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最終工程にしてやり直しのきかない作業なので少し緊張。

このとき「次の元号って何になるんだろう」という、全くもって無関係な思いが思考に急浮上してきたため、危うく「平成」と書いてしまいそうになった。すんでのところで脳内の故・小渕恵三元首相を追い出すことに成功して事なきを得たが、危なかった。割り箸に平成はあまりに場違いだ。そこはせめて元禄だろう。

 

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箸袋に書いてある文言といえばやはりこれだ。

箸袋に書いてある字って、なんだかヘロヘロした字体のものが多いと思うのだが、私に書道の心得がないこともあっていい感じに再現できたようだ。少し墨汁が垂れてしまったが、ともかく完成。

 

箸を連れて公園へ

完成したビッグな割り箸を持って近所の公園にやってきた。遊具と並べてやることで、こいつのおかしなスケール感が映えると思ったからだ。

 

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滑り台のそばに佇むおてもと。

 

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滑り台の上からこちらを見下ろすおてもと。初夏の空の青さが眩しい。

 

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ザザー!という音をたてて、勢いよくスライディングするおてもと。服(箸袋)が破れてしまわないか心配になる。

 

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ブランコに乗るおてもと。バランスを崩して転落しないか心配になる。

さっきから心配ばかりしている。子連れで公園にきている人たちの心中もこんな感じなのだろうか。

 

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一通り撮影を終えると、虚無感が訪れた。

おかしな写真を取ることができたのはいいとして、これからこの大きいだけの箸をどうすればいいのだろう。もちろん、もとよりプランがあってやったことではない。しかし、このまましりすぼみになってしまっては、使い道のない木材を使い道のない箸に変えただけのことではないか。

 

ただただ、箸を転ばせてみた

公園のベンチでビッグ割り箸の行く末を案じていると、中学生くらいの女の子たちがやってきて黄色い声をあげながら遊び始めた。

 そんな、箸が転んでも可笑しい年頃(正確には10代後半の女性を指す言葉なので中学生だと少しずれているのだが、そう表現してしまって差し支えない様子に見えた)の人たちを見ていて

「とりあえず転ばせてみてはどうだろう」

という心境に至った。

諺では「箸が転ぶ」のはつまらない、取るに足らない事象であるということを前提にしているが、こんなに大きな箸が転んだら、ひょっとしたら面白いと感じるかもしれない。

 

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人の邪魔にならずに大きな箸を転ばすことのできる場所を探したら、足は自然と森に向いていた。

森の中に唐突に現れる巨大な割り箸。「木材の乱費に対するアンチテーゼ」というキャプションをつけて現代アートだと言い張れそうな情景だ。

 

 

 まずは、木に立てかけた箸を棒でつついて転ばせてみた。

これは...ちょっと面白い?いや、まだ結論を出すのは早い。

 

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転んだ拍子に中身が出たが、口に入る部分は箸袋でガードされている。初めて箸袋の本来の役割を理解した。

 

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他の転ばせ方も試してみよう。まず2本の枝を支えにして箸を自立させる。そしてこの支えの部分に石か木の枝を投げつけて、バランスを失った箸を転倒させる作戦だ。

 

見事な倒れっぷりだ!

 

......告白しよう。この動画を撮影した時、すなわち箸が私の思惑通り倒れてくれた時、私はものすごくニヤニヤしていた。面白かったからだ。帰宅して、これを書きながら再度動画を見直しても、やはり笑ってしまう。

正直なところ、10代の女性の読者もそうでない読者も、これを見て面白いと思うかは私にはわからない。私が面白いと思ったのも、達成感からそう感じただけかもしれない。結局、面白さに普遍性なんてないのである。 

 

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これが最後。木の上にある箸を落としてみる。転落も「転ぶ」の一種だと解釈しての試みだ。

 

面白いかどうかはさておき、滑稽ではある。

私個人の感想としては、カメラのフレーム外から出てきた木の枝が箸の足元をペシペシするところが面白いと感じた。

 

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3度も激しく転ばせたのでさすがに箸袋が傷んできた。

 

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下の部分にも穴が開いてしまった。これでは箸袋としての用をなさないだろう。箸本体の方にもところどころに土がこびりついている。

思えば、結局半日近くこの箸をもってぶらぶらしていたのだ。転ぼうが転ぶまいが汚れるのも当然だ。楽しませてもらったし、少しは学びもあった...ような気もする。なので名残惜しいが、ここらで幕引きにすることにしよう。割り箸にとっての幕引きとは、すなわち、割られることに他ならない。

 

固くて割れなかったらどうしようと心配したけれど、案外あっさりと割れた。こんなに大きな割り箸を割る機会は、後にも先にもこの時だけに違いない。

 

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 微妙な割れ方...。

 

おまけ

 一番気に入った転び方のやつをgifアニメにしてみた。エンドレスで見てしまう。やはり、箸が転ぶところは面白いのではないだろうか。

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