春はあやふや

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花粉の飛散と、冬の寒さから解放の合わせ技をくらって、このごろは始終気持ちがだらけている。5月まで待たずとも、なんとなく、無気力。

寒い時には、寒いせいで何もする気が起きないと文句を言うくせに、いざ気温が上がってみると、やはり覇気のない生活をしてしまうのだから、勝手なものだと思う。

私は冬が好きだ。狩猟ができるからだとか、食べ残しを室温で放置してもなかなか腐敗が進まないからだとか、思い当たる理由はいろいろあるのだが、何より、冬は普通に生活しているだけでもそれなりに感情に起伏が生まれるという点に因るところが大きい。

電気毛布にくるまる、温かい。毛布から出て着替える、寒い。銭湯にいって風呂に入る、温かい。夜道を自転車を漕いで帰る、寒い。

心がよく動いて、倦怠する暇がない。

その点で春は、のっぺりとしていてメリハリがない。ぼんやりしていると、何の情動にも見舞われないままあっと言う間に時間が過ぎてしまいそうになる。春には、なにか新しい行動を始めないといけないのだ。

で、とりあえず思いついた新しいことは、いつの間にかすっかり月刊化したこのブログの更新頻度を少し上げることだ。一発ネタ的な記事を書き上げたときの達成感や受け取る反響は変えがたいものだけれど、もう少し日常的なことも書くようにしていこうと思う。

 

話は変わるが、最近寺町の山月書房で買った吉村萬壱の『ボラード病』という小説が大変おもしろく、恐ろしかった。

ちょっと前に読んだ小野不由美の『残穢』も怖かったけれど、ああいう「運の悪い個人が恐ろしい目に遭う」系の怖い話はまだ、自分とは無関係な他人の話として対岸に置いて眺めることができる。『ボラード病』は、大震災以降の文脈に完全に乗っかる形で書かれているので、その不穏さには逃げ場がない。今読んでおいてよかったと思った。

 

 

 

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