麺つゆを吐くフグ
「急須」のつもりで作ったのだが、最初に吐かせたのは麺つゆである。完成したのが昼飯時だったからだ。
ぶっつけ本番でうどんにかけるのはちょっと不安。ということで試しにコップに注いでみたところ、出てきた麺つゆからあからさまな悪臭がした。どうも、口の周りのニスの乾きが甘かったようだ。
中に入れた麺つゆを一旦全て捨て、1時間ほど天日でよく乾かす。まったく、毒のあるところまで再現しなくてもよいというものだ。
安全を確保して、いただきます。
フグの両脇を両手でしっかりと持って、うどんの上で一気に傾ける。思い切りが悪いと麺つゆが注ぎ口を伝って下にこぼれてしまうから、勢いが大切だ。
どうだろう、この注ぎっぷり!
ただ、ちょっとつゆの量が多かったかも。
ギャラリー(?)の大勢いるところに来た
うまく注げたことに気を良くして、次は急須としての本分を果たすべくお茶を淹れることに。
理想を言えば、人前に出して反応をもらいたいところである。しかし、正直に言うとこれを持って街に出るのはなんだか恥ずかしい。若干流行を外しているだけになおさらである。
代替案として思いついたのが彼ら。
うちから自転車で行けるところにある、ただただ信楽焼のタヌキがたくさん整列しているスポットだ。
以前に一度だけ訪れた時の記憶を頼りにここまできたのだが、着いてタヌキを見て、やはりここにきて正解だと思った。
それは、タヌキたちの
クリクリとした丸い目とか
ツンと突き出た鼻と口が
ちょっとこいつに似ていると思ったからだ。
「類は友を呼ぶ」の法則がまた発動してしまった。あなおそろし。
横になるとお腹の丸みが強調されて、なおさら似てる。
茶を吐くフグ
ギャラリーは揃った。早速茶を淹れていこう。
持参したティーパックを使う。
魔法瓶から湯を注ぐ。
余談だが、このフグ急須は発泡スチロール+石粉粘土で形を作っているため、普通の急須と比べて極めて保温性が高い。冬場なら重宝しそうだが、この日は暑かったため、ありがたくない誤算であった。
背ビレはティーパックの紐を結んでおくのにちょうど良かった。こっちは嬉しい誤算。
ドバー!
こちらは正面から撮影。
ドバババー!
静止画でも一枚。なんだか美しい。
シンガポールのマーライオンがもっとも有名だが、「口から水を吐く動物」は世界中で噴水のモチーフに使われている。人類は、動物が口から水を吐いているのを見ると和むのだろう。「水を吐くフグ」にみんなが夢中になったのは必然であった。
ギャラリーの視線も、心なしかこちらに向いている気がする。特に右下のタヌキなどは、非常に生き生きとした表情でこちらを凝視しているようではないか。
彼らが言葉を発することができたら、こんなことを言ったに違いない。
タヌキA
「わー、すごい、これってTwitterで話題になってた『水を吐くフグ』ですよね!?」
タヌキB
「かわいい!写メ(死語)ってもいいですか!?」
タヌキC
「いかすわー」
てなことを妄想しながら、フグが吐いたお茶を飲んだ。喉が乾いていたので美味しかった。
最後にみんなと一緒に記念撮影を。田舎の中学に一人だけやってきた外国人の転校生とクラスメートの集合写真といった雰囲気で、すごくいい味が出ている。
まとめ
そんなこんなで、水を吐くフグの急須だった。
最初はただお披露目をするだけのつもりだったのに、ついついタヌキを登場させたり、アテレコしたりしてしまった。
動物に感情移入するとそういうことになりがちだ。
それにしても、生き物は面白い。
人々が珍妙な動きをする生き物に夢中になるのは、爆走するエリマキトカゲや2本足で直立するレッサーパンダに夢中になっていた頃となにも変わっていない。
走るエリマキトカゲは必死で敵から逃げているのだし、水を吐くフグも敵を威嚇するためににそうしている。どちらも、当人たちにとってはデッドオアアライブの状況なのだ。笑って見ている我々は残酷なのかもしれない。
しかし、そのようなそのような事実を踏まえても、私は、次はどんな生き物が我々を夢中にさせてくれるのだろうという期待に、胸をときめかせて待たずにはいられないのである。
おまけ:水吐きフグの急須の作り方
それは、工作の材料にするためです。
発泡スチロールを貼り付けて大まかな形を作ります。いきなり粘土を貼り付けてもいいのですが、こうすることで粘土を節約でき、軽くすることができます。
粘土を盛ってフグの形を作ります。
なんだかオタマジャクシみたいに見えますが、追い追い修正していけば良いのであまりこだわりすぎないように。
ヒレなんかの細かいパーツは、針金などを使って後付けにするとしっかり固定できます。
アクリル絵の具で色を塗っていきます。
生き物を作る場合、目の形で印象がガラッと変わるので、とくに慎重に塗りましょう。
表面にニスを塗ったら完成。
今回は水を吐くフグを作りましたが、めいめい好きなモチーフを選んで急須にしてみましょう。
夏休みの工作などに作ってみてね。
<おわり>