低温調理器具を作って鹿肉を料理してみた

狩猟で肉が豊富に手に入るようになると、いろいろな料理の仕方を試してみたくなる。

で、今回やってみたのが、以前から気になっていた低温調理である。

 

 

低温調理

肉をうまく加熱するのは、ほんとうに難しい。中心まで火を通そうとすると、外側に火が通り過ぎてぱさぱさになってしまう。かといってジューシーさを保とうとすると、中心部が生焼けの冷たいままでなんだか落ち着かない。

このジレンマを解決してくれるのが低温調理だ。その利点として、まず、食材全体に均一に火を入れられることがある。一定の温度を維持したお湯に長時間浸けておくことで、食材の外側であろうが中心部であろうが同じように、65℃なら65℃、70℃なら70℃で火を通した状態になるのだ。さらに、低温調理は食材をあらかじめ設定した温度で正確に加熱することができることも面白いところだ。このため、たとえばタンパク質が変性するかしないかのぎりぎりの温度での調理なんかも可能になってしまうのである。

 

 

必要な装置を作ってみる

低温調理器具でもっとも有名なのは、ANOVAという商品なのだが、これがなんと新品で買うと2万円以上する。たかが湯を沸かすための装置にそんな大金を払いたくない、吝嗇が骨の髄までしみこんだ私がそう思ってしまったとして、誰が責められるだろうか。

要はお湯の温度を一定に維持できればいいわけだから、サーモスタットにヒーターを接続するだけで自作できるのでは?と思って調べてみたら、案の定すでにやっている人がいた。 

 

blog.wshat.net

 

今回作ったものは、このサイトに載っているものをほぼ丸ごとコピーさせてもらった。使ってある部品まで同じである。パクリでありフリーライドである。先人に感謝である。

 

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完成したのがこちら。お湯を入れるのに保温性の悪い容器を使うと電気代がすごいことになるらしいので、職場から不要になった発泡スチロール容器をもらってきた。

 

 

ローストディアを作る

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適当な大きさに切った鹿の腿肉を

 

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たまねぎのみじん切り、塩、コショウ、オリーブオイル(分量はすべて適当)とともにジップロックに封入。このとき、できるだけ空気が入らないようにすると、効率よく加熱できる。

 

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65℃で3時間加熱する。水が65℃まで温まるまでにかかる時間を含めると、4時間近くかかった。

 

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最後に、香ばしさを出すために、フライパンで表面を軽く焦がしたら完成!

 

 

断面が真っ赤だ!

ナイフを入れて驚いた。フライパンで炙ってできたほんの1,2ミリの焦げ目の層のすぐ下は、生肉かと思うような真っ赤な肉の塊だったのだ。

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赤い!でもちゃんと火が通ってる!

 

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ものすごく柔らかくてジューシーなのに、生肉のにちゃにちゃした感じがなく、しっかりと温かくなっている斬新な感覚だ。汁気たっぷりの生肉を食べていながら、「冷たいな」とか「寄生虫は大丈夫かな?」とかいった居心地の悪さだけを取り除いた感じと言ったら伝わるだろうか。気分は鹿の後ろ足に噛み付いているニホンオオカミである(絶滅したけど)。

すばらしい装置を手に入れてしまった。なんせ最初の味付けとサーモスタットの初期設定だけして放っておけば、いい感じに料理が出来上がるのだ。時間がかかるのは玉に瑕だけれど、手軽なんだからまあ我慢しよう。

鹿肉以外の食材も調理してみたいし、同じ食材が調理温度や味付けによってどんな風に変わってくるのかも試してみたい。すきあらば肉を湯にぶち込む日々が続きそうだ。