2024年8月31日 土曜日
もともと週頭には来ているはずだった台風が、重役出勤の挙句ついにやってくるぞ!と脅かされて蟄居していたのに、いっこうにその様子がない。昼頃にしょぼい雨が降ったきりだ。
19時頃、月末だから近所の食堂でも行ってみるかということになって外に出る。夢みたいに涼しくて過ごしやすい。ずっとこんな気候ならいいのに、と5月頃にも思ったこと繰り返し思う。住宅街を歩いていると、西に伸びる道のはるか向こう、夕日に赤く照らされた空にどす黒い雲の塊が流れているのが見えた。不吉な感じ!興奮して写真を撮った。
食堂は大繁盛だった。嵐が来そうで来ない感じは人々を浮足立たせ、家にいたくない気分にさせるのだろうか?ニラ玉炒め定食と揚げ出し豆腐を食べる。ニラ玉炒めに入っていた肉が牛肉だったのがうれしかった。調子にのってごはんを大盛りにしたから、お腹がパンパンだ。
夜、流し台の中を3センチくらいの小さなヤモリが這っているのを見かける。この夏に生まれた子かしら、と思う。関係ないが私は冬生まれである。
結局雨すら降らず。
2024年9月1日 日曜日
台風、熱帯低気圧に変わったってよ。
石井遊佳の「百年泥」を読む。最初ちょっと読みにくいなと思ったけれど、ごめんなさい、すごくおもしろかった。
2024年9月2日 月曜日
ゼリーが!言うことを!聞かないのです!!!
なんのこっちゃと思われそうである。デイリーポータルZの記事で大きなゼリー作りをしているのだが、これがすこぶる扱いにくい。
固まらない。固まったと思ったら型から剥がれない。型から剥がれたと思ったら今度は皿に張り付いてきれいに盛りつけられない。というわけで「なにがそんなに気に入らないわけ!?」とゼリー相手にヒステリーを起こしそうになっていたのだが、頭に血が上って皿を床に叩きつけそうになっていたそんな折、事件が起こった。
JR札幌駅で全裸になって「俺はどうなってもいいから皆は生きろー!」と叫びながら走り回った男の写真がX(Twitter)で流れてきたが、遠目に撮影された画像を拡大して見ると、よく知っている友達にそっくりなのである。その友達は札幌在住で、つい最近仕事を休職したところだった。私は焦った。
「あいつだったらどうしよう」
スクショして友達のLINEグループに投稿したところ、似てる似てるの大合唱。ああ、やっぱりそうだったか。差し入れは何がいいだろう。でも刑事ドラマとかでよく見るアクリルパネル越しに話す面会のあれ、一回やってみたかったんだよな。
想像を膨らませていたら、当の本人が登場。全裸男になったりはしていないようだったので、安心するやら、まあそんな劇的なことはなかなかないよねと少し残念やら。
2024年9月3日 火曜日
昼過ぎ、100歳のお婆さんから電話がかかってくる。知らない番号なので出ようかどうか迷っていたら切れてしまったのだが、なんとなく予感がしてこちらからかけ直したのである。
「あなたが今住んでるところに、亡くなった夫と一緒に私70年くらい前に住んでてねえ。前の道で、カラコルム探検に行く前の梅棹さんが車の練習とかしてたのよ、その頃」
耳が遠いらしく、ほとんど怒鳴るようにして返事をする。
「へえっっ!すごいっっ!!梅棹さんって、あの梅棹忠夫ですかっっっ?!!!!」
階下に声が響くことを意識しつつ、電話に向けて叫び続ける。
2024年9月4日 水曜日
ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』を読む。
アメリカの主要な都市で毎週雑多なチラシに混じってポストに投げ込まれる「ペニー・セイバー」という無料情報誌。中身はいろいろな人の「これ、売ります」が載っている紙版のイーベイみたいなものだ。毎週、「ペニー・セイバー」を隅々まで目を通すのを習慣にしていた筆者は、あるときそこに広告を出している人を訪問してインタビューしていくという企画を思いつく。
この本は「ペニー・セイバー」に広告を出している人たち(≒パソコンを使えない人たち)との出会いを通して、つまりネット上では絶対に行き着かなかった人たちとのやりとりを通して筆者が受ける衝撃を記録したノンフィクションだ。その衝撃というのは、生身の人間のもつ存在感、近寄ることでこちらも否応なく変化することを強いられる力場みたいなものだ。
ことの発端が、映画の脚本の執筆に行き詰まってネットサーフィンばかりしていた筆者が、なかば現実逃避のために始めたことだというのが面白い。ミランダ・ジュライと言えば小説、映画、アートとあらゆる場所に足跡を残してきた創作意欲の塊みたいな人なのに、そんな人でもネットの海の魔力には抗えないんだなと、読んでいて妙な安心感をもらった。
「本来出会わなかったはずの人のところに行って、話を聞く」ことにも親近感がわいた。今私も似たようなことを細々と続けているからである。前の日に100歳のお婆さんから電話がきたのもそれに関係してのことだ。私は彼女からどんな衝撃を受けるだろう。