寛永通宝を拾う

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琵琶湖の湖岸を歩いていると、波打ち際の石に混じって黒くて丸いものが落ちているのを見つけた。「ひょっとしてお金かも」と思い拾い上げて検分してみたところ、ぼろぼろになった表面にかろうじて”寛永通宝”と書いてあるのが読み取れた。お金はお金でも古銭だったのだ。

この冬、琵琶湖の水位が劇的に下がっている。2年くらい前にも水位が下がったことがあって、そのときは湖底から姿を現した明智光秀坂本城の跡地を見に行った。

 

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そのとき、「次に見られるのはいつになるかわからない。見られるときに見ておかなければ」というようなことを書いたように思う。その坂本城の跡地は今再び湖面に姿を現しているという。案外早い「いつになるかわからない」である。もっとも、わざわざ再訪したくなるほどおもしろいものではないので、そう何度も出てこられてもありがたみが薄れるだけなのだが。

私が拾った寛永通宝も、水位低下の影響で湖底から現れたものにちがいない。古銭商のサイトで調べたところ、寛永通宝には裏側に波模様が描かれた四文銭と描かれていない一文銭があるということが分かった。私が拾ったのは裏が無地なので一文銭である。気になる古銭としての価値だが、寛永通宝は300年以上にわたって流通していたため発行された年代によって価値が全然違うけれど、高いものではなんと1枚数十万円で取引されているというではないか。

期待に胸を高鳴らせながら家に帰って重曹で磨いてみた。うまくすれば輝きを取り戻して、もしそれが希少なものなら......ああ、新年早々なんと幸先がよいのだろう。

期待に反して、寛永通宝は磨けど磨けどぼろぼろの真っ黒のままだった。土を落としてから改めて観察してみると、長い間水に浸かっていたせいで腐食が進み表面はぼこぼこと穴が開いていて、とてもコレクションになれるものではなさそうだ。やりすぎると文字が削れてただの穴の開いた丸い金属板になり果てそうである。

古銭を拾うという体験はおもしろかったし、その寛永通宝は記念に財布に入れてあるのだが、実際に起こったことは一文の価値もない一文銭を拾って一喜一憂したというだけのことなのだった。