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偶然出会ったすっぽんを捌いて食べる

ある日のことでございます。海底クラブは職場の近くの川のほとりを、一人でぶらぶら歩いていました。からっとした秋晴れの心地よいお天気に誘われて、川沿いに10分ほど歩いたところにあるいつもは行かないパン屋に、ランチを洒落込もうと思ったのです。

やがて、海底クラブは転落防止用の柵越しに2mほど下を流れる川面に、見るともなしに目をやりました。

 

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洗面器みたいなものが動いているので、注意してよく見てみることに。
 

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あれ、すっぽんじゃん!
 
 
このように、すっぽんとの出会いは全くの偶然によって、唐突に訪れた。
このときの興奮を言葉で伝えるのは難しい。実のところ、すっぽんが食べたくて夏の間中、川やら池やら水のあるところに行くたびに「すっぽんいないかなー」と探していたのだ。それが、夏も終わりになってから、こんな身近な狭い川でみつかるなんて!
当然なんの準備もしていなかったけれど、さっそく裾をまくってざぶざぶと川に入った。
私の接近に気づいたすっぽんは、最初手足を縮めてやり過ごそうとしたが、自分が狙われていると察するや猛烈な勢いで泳ぎ逃亡を図った。カメのイメージに似合わず、かなりのスピードで水中を移動していく。駆け寄って捕まえることができたが、動き出すのがもう少し早ければ逃げ切られていたかもしれない。
 
 

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一般的に、川で捕まえた生き物は調理する前に泥抜きをすることが望ましい。そのまま調理すると、どうしても泥臭さが残るからだ。すっぽんも例外ではなく、1週間ほど断食させてきれいな水の中で飼育する必要がある。ごちそう(だと言われている食材)を前にして、1週間も指をくわえて待たねばならないのは辛いが、おいしく食べるためなのでしかたがない。
うちには気のきいた水槽などはないので、部屋の隅に置いたバケツに入れておいた。夜になると爪でバケツをカリカリ引っ掻いたり、鼻で息をするスピースピーという音が聞こえてくる。そういうわけで、すっぽんと同居していることを意識しない日はなかった。
 
 

調理する前に記念撮影

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よく見ると、なかなかかわいい顔をしている。
 
 

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たまにカメラに目線を向けてみたり
  
 

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隙あらば首を回して噛みつこうとしてくる。油断ならない。
 
 

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一通り遊んだあと調理に移った。少し名残惜しくも感じたけれど、すっぽん鍋を食べたいという気持ちに揺るぎはないのであった。
すっぽんの捌き方は、ちょっと調べればプロによる詳細な説明がわんさか出てくるので、あえてここで詳しく説明することはしない。ただ、すっぽんは危険を感じるとすぐに首や手足を甲羅の中に引っ込めてしまうため、絶命させるのには相当な時間と労力を要した。調理に立ち会ったものはみな、カメの甲羅が身を守るための優れた鎧なのだということを思い知らされた。当たり前ですけれどね。
その反面、甲羅のふちにはえんぺらと呼ばれるやわらかい部位があり、ここに包丁を入れるとあっさり本体と甲羅を分離できてしまったのには驚いた。1時間ほどかけて、なんとか写真の状態まで持ってくることができた。
 

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すっぽん鍋で有名な料亭では、燃料にコークスを使い、家庭用ガスコンロでは不可能な高火力で一気に調理して供するようだ。しかしながら、そんなことはうちでは到底真似できないので、醤油と酒と昆布と生姜で軽く味をつけて、地道に長時間コトコトと煮込むことにした。
 
食べてみて最も印象に残ったのが、その食感だ。ゼラチン質のエンペラは当然のことながら、足や首周りの筋肉までもが、ゼラチンを含んだようにねっとりとしているのだ。鳥や獣や魚のどれとも少しずつ違っていて、これがすっぽんが珍重される理由なのかもしれないと思った。また食感だけでなく味の方も期待を裏切らない。(後述する内臓を入れるまでは)臭みがなく、その旨味の濃さには驚くばかりだ。
 
美味しくいただいたすっぽんだが、すべてが完璧に進んだわけではない。消化器系の部位を煮込み始めたあたりから、急に臭みが増したような気がしたのだ。これは肉の処理に不手際があったせいだと考えるほかない。泥抜きが不十分だったとは思えないので、捌く段階で除去すべき部位が取り切れていなかったのだろう。
おいしく食べられる部位とそうでない部位を選別すること、これは次回以降の課題だ。
 
 

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後日、残った甲羅や骨を重曹を使って煮込み、余計な肉や軟骨を落とした。骨を見ると、カメの甲羅がろっ骨から進化してできたものだということがよくわかる。近いうちに組み立てて標本にしてみようと思う。