餃子の皮について

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ここ一月で2回も餃子を皮から作っている。

一度目は皮の水分が多すぎたせいで、作るそばからスライムのように崩れてしまい、散々な目にあったが、二度目は教訓が生きて、ピンと角のたった粒ぞろいの餃子を作ることができた。

覚えている範囲ではそれまで餃子を皮から作ったことはなかったから、この月に2回という頻度は非常に高い。ハマってしまったといって差し支えないだろう。

 

我々日本人が餃子をおかずにして米を食べている姿は、餃子の本場中国の人間には奇異に写るらしい。彼らにとっては餃子の皮の部分が主食に相当するからである。

で、私は外で餃子を食べたり、市販の皮を使って自宅調理するたびに、これが主食として機能し得るかと考える。巷で売られている餃子の皮は薄いものが多い。これでは主食と呼ぶには頼りないなあ、などと勝手な感想を抱きつつ、ご飯や麺と一緒に喫食するのである。

 

ところがである。

いざ自分で皮から餃子を作ってみると、その皮のあまりの存在感に面食らった。

麺棒がないので、代わりにスチールの空き缶で生地を丸く伸ばしたから、市販品みたいに薄くできなかったからだろう。しかし、それにしても、分厚い。

そういえば、以前上海で食べた水餃子も、こんな感じで皮が分厚かったような気がする。これだ存在感のある皮であれば、主食とみなされるのも当然である。日中で食事における餃子の立ち位置が違うのは、皮の厚さのスタンダードが違うからなのだろう。

 

自分で作った餃子は、今のところ全て水餃子にして食べている。分厚い皮は茹でるともちもちとした食感を生み出してとても美味しい。次は、この皮が焼き餃子にしたときにどうなるのか試してみようと思う。

 

 

 

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足摺海底館が素晴らし過ぎて、勝手にグッズまで作った話

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もう2年くらい前のことなのだが、高知県にある足摺海底館という、海中展望施設に行ってきた。その容貌たるや、印象的という言葉では到底表現しきれないくらいすばらしい建物なので、再訪まで待てず勝手にミニチュアを作って部屋に飾ってしまった、というのが今回の記事の流れである。

 

実際に訪問したときのこと

足摺海底館の存在を知ったのは、panpanya先生の「足摺り水族館」という漫画で紹介されていたのを読んだためである。

どうしても行って現物を見てみたくなったのだが、これがなんとも行きづらいところに所在している。

 

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四国の端の端である。

公共交通機関を使ってアクセスするには、土佐くろしお鉄道に乗って四万十駅まで行き、バスに乗り換えて海沿いの道をえっちらおっちら移動することになる。時間はかかるが、のどかで風光明媚な場所を延々走行することになるので、大変に旅情が感じられるであろうことは間違いない。

私は素直にレンタカーを利用した。

 

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付近には足摺海洋館という水族館もあるのだが、それとは完全に別の施設であるため気をつけないといけない。

車をとめてエントランスの建物を通り抜けると海岸線に出ることができる。

 

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波に削られたゴツゴツの岩場を縫うようにして作られた小道を進むと、海底館が見えてくる。

 

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見えてくる...。

あまりの唐突さに、大笑いしてしまった。

周囲に太平洋と岩礁と山しかない大自然の只中にあって、その形も、紅白の色使いも、あまりに場違いなのだ。まるで海岸に不時着した宇宙船をみているようである。

なんなんだこの現実感の希薄さは...。

 

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近くで見てもやっぱり嘘っぽい。SFの撮影現場のようだ。

「俺は帰ってたんだ!ここは高知県だったんだ!」

とか叫んでみたくなるくらい。

 

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波が岩にぶつかる音に包まれながら、長い渡り廊下を歩いて中に入る。

 

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受付で見学料を払い、突き当たりの螺旋階段を下っていく。

 

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階段の途中には海抜0mを示すこんな看板があった。

 

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階段を下り切ると、そこは海の底である。

薄暗くて丸い部屋の周囲に開けられた観察窓を通して入ってくる光は、水を通り抜けたせいで病気のように青白くて弱々しい。

部屋の中には音楽もアナウンスも一切流れていないのだけれど、潮の流れが建物を揺さぶる響きや、泡立つ水の音が絶えずに聞こえるから賑やかである。海の底って案外うるさいんだなあと、妙なことに感心してしまう。

 

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窓からは魚たちが見える。

正直言うと、水の透明度はあまり高くない(この日は台風が通り過ぎた後だったので尚更だったのだろう)。魚たちも、潮の流れに翻弄されてあっちへ流されたりこっちへ流されたりする。じっくりと魚を観察するだけなら水族館の方がよく見えていいかもしれない。海底館は、魚を見るためというよりも、自分が魚になったような気分を味わうためにあるのだ。

 

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窓枠に海藻が生えていて、年季を感じさせる。

海藻が伸びすぎて窓の外が見えなくなったら、どうやって掃除するのだろうか。

 

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窓のところは外壁から一段引っ込んだ窪みになっているため、潮の流れを逃れた小魚が休んでいた。

 

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運がいいとタコやウツボもやってくるようだ。

 

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海底世界を堪能してから、螺旋階段を登って地上に帰ってきた。

行きは早く下にいきたくて見過ごしてしまったが、この地上展望スペースにもいろいろ展示されているようだ。

 

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たとえば、海底館で結婚式をあげた人の写真とか、

 

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台風の高波に晒される海底館の写真などだ。

この波に洗われる海底館の写真、ものすごく良い写真だと思うのは私だけだろうか。例えるなら、雪に覆われた金閣寺や、満開の桜並木の中を走るチンチン電車のような、人工物と自然物の奇跡的なマッチングである。

 

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海底館の概要。思い切ったお金の使い方をしてくれた高知観光開発公社に喝采を送りたい。

 

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展望も楽しむことができる。

 

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普通の海岸線の景色なのだが、四方に張り出した海底館の一部が入ることで、グッと愉快な光景となる。

 

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餌をやって魚を誘き寄せるためのカゴが吊るしてあった。

 

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退館する前に、入り口の渡り廊下の方を見る。

着陸した宇宙船から未知の惑星の調査に繰り出す気分だ。

 

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この造形、どれだけ見ても飽きない。

家の近くにあったら、毎日のように様子を見に来てしまうかもしれない。

 

残念ながら土産物屋には海底館グッズがなかった

珍妙な外観にすっかり惚れ込んでしまった。

だから私は、波にのったサーフボードのような勢いで土産物屋(海底館の建物の中ではなく、少し離れた場所にある)に駆け込んだ。海底館の建物をかたどったマグネットなり、貯金箱なり、ラムネの詰まった瓶なりが売られていると思ったからだ。本物の海底館を毎日眺めて暮らすのは無理でも、ミニチュアのそいつらを部屋に並べて、再訪までの気を紛らそうと思ったのだ。

ところがだ。

土産物屋には、海底館グッズは一切売られていなかった。

魚介類を干したのとか、ご当地キティのストラップとか、言ったら悪いがどこにでも売っていそうなものしか置いていなかった。

そういうのじゃないんだよ!と叫びたかったが、言っても仕方のないことである。

 

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レジ横にあった海底館の模型。かっこいい!

 

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さらにその横にあった海底館の貯金箱。かわいい!

 

こういうのを売って欲しいんだけど...と強く思ったけれど、いずれも非売品だった。

「この近くにはコンビニなんてないから、宿で酒を飲もうと思ってる人はここでつまみを買っとかないと後悔するよ」

という斬新なセールストークが、落胆して土産物屋を後にする私の背に響いた。

 

自分で作ってみた

ないものは自分で作るしかない。みうらじゅんの「勝手に観光協会」ならぬ、「勝手に土産物製造部」だ。

海底館を訪問してからだいぶ経っているが、初めて見たときの衝撃を思い出しつつミニチュア海底館を作ってみた。

 

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海底館に形の似ている味塩の瓶をベースにして、

 

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できたのがこれ。

石粉粘土を盛り付けて張り出した展望部分を作り、アクリル絵の具で色をつけただけである。

 

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もちろん味塩の入れ物としての機能も維持してある。

 

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本棚に飾って眺めている。手作りゆえに形が歪なのはまあ仕方ないとして、なかなか可愛らしくまとまったのではないだろうか。なにより、見るたびに海底館を訪れたときの「珍妙なものに出会ってしまった...」という感覚を思い出すのが心地よい。

 

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余談だが、高知名物の鰹のタタキは塩とにんにくで食べるのが高知流だそうだ。

次に高知に行く機会があれば、何をおいてもこの足摺海底館型味塩瓶をもっていきたいと思う。料理屋で鰹のタタキを注文し、おもむろに味塩瓶を取り出し、タタキにふりかけて食べる。そして周囲を「え?あれなに?」と困惑させるのだ。それは何ですかと聞かれれば、嬉々として高知の端の端にある海底館の説明を始めるだろう。

その中から、一人でもあの奇妙な建築物を訪問する人が現れてくれれば、私は大満足である。

 

おまけ

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足摺海底館の近くには、竜宮城の名を冠した絢爛な建物の廃墟があった。

この土地は色々な意味で我々の想像力の一歩先をいっているなと思った。

 

 

 

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ソーキソバ

暑くて仕方がないので、私が大好きな沖縄のソーキソバたちの画像を掲示する。

少しでも暑さを愉楽に変換する試みである。

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 先々月沖縄に行ったときは、毎日ソーキソバ屋に通っていたなあ。

 

 

 

中国で大ブームのザリガニ料理、麻辣小龍蝦(マーラー・シャオロンシア)はハマる味だった

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中国で今、ザリガニ料理が熱いらしい。

ザリガニを食べること自体は、別に驚くことではない。欧米にもザリガニ料理はあるし、そもそも自他共に認める「なんでも食べる」中国人民のことだから、ザリガニを食材として利用しようとするのはごく自然なことだ。

大変なのは、そのザリガニブームの勢いである。ザリガニを提供する店は年々増え続け、なんでもその数はケンタッキーやマクドナルドをもしのぐと言うのだから、尋常ではない。

そんなに美味しいのだろうか?

とても気になるので、ザリガニ料理の中でも一番人気があるという麻辣小龍蝦(マーラー・シャオロンシア)という料理を、作って食べてみることにした。

 

材料調達

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材料調達と言ったものの、要するにただのザリガニ釣りである。

いまどき、そこらの田んぼで見ることのできるザリガニのほとんどは、外来種であるアメリカザリガニである。本来なら憂慮すべきところなのだろうが、アメリカザリガニは在来種のニホンザリガニよりもずっと大きいため、食材としてはありがたい存在である。さらに言うと、アメリカザリガニよりもさらに大きいウチダザリガニという外来ザリガニも存在するのだが、近場の生息地を知らないので、今回はアメリカザリガニを狙うことにする。

 

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投げやりな案山子に一瞬ヒヤッとさせられつつ、ザリガニを探す。

 

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見えている魚は釣れないというが、見えているザリガニは釣ることができる。

タコ糸の先に餌のスルメとおもりの小石を結びつけて、水底で待機しているザリガニの目の前に沈めてやると、腹を空かせた個体であればすぐに食いついてくる。

 

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後は慎重に引き上げるだけだ。ザリガニに不信感を抱かれぬよう、そーっと糸を手繰り寄せる。

 

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アメリカザリガニ、ゲット!

ザリガニを釣るのはものすごく久しぶりだったのだが、目視でザリガニを探すのは宝探しのようで楽しいし、餌を沈めたら沈めたですぐに食いついてくれて楽しいしで、狩猟本能と達成感を短時間で何度も満たしてくれる素晴らしい娯楽であると思った。何より、長大な待ち時間が発生しないのが良い。

 

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警戒心が強く、水面に出た途端に餌を放して逃げてしまう個体もいた。

こういう賢いやつが、最後には生き残るのであろう。

 

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1時間ちょっとで11匹を釣り上げることができた。試しに料理する分には十分な量である。

子供たちに釣り上げられたのならば、その場で逃がされるか、持ち帰られても飼育されるのであろうが、私に釣られたこいつらは食べられてしまう運命にある。食いついた餌の先にいる相手次第でその後の生死が決まってしまう、ザリガニの社会はかくも厳しいのである。

 

 

調理する

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麻辣小龍蝦は四川風の辛くスパイシーな味付けの料理なので、味付けにはいろいろなスパイスを使用する。中国版クックパッドのようなサイトに掲載されたレシピを翻訳して読んでみた感じでは、四川風の味付けに欠かせない生姜、にんにく、唐辛子、花椒に加えて、自分の好きなスパイスを使って好みの味付けにしているようだった。

今回は、生姜、にんにく、唐辛子、花椒八角、ローレル、たまねぎ、それから写真には写っていないが黒胡椒を使うことにした。量は全て適当である。

余談だが、スパイスを全部皿に出すと中国に行ったときに食堂や市場で嗅いだ、いろいろな料理や食材の入り混じった空気の匂いが台所に立ち込めて、ものすごくテンションがあがった。

 

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唐辛子は種を取り除き、八角とローレルは細かくちぎる。

 

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生姜、にんにく、たまねぎはみじん切りに。

 

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ここでメインの食材の登場!

自分たちの運命も知らずに、ガチャガチャ音をたてながら動き回っている。

 

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まずはザリガニを綺麗にする。殻の間に入り込んだ泥などを落とすために、歯ブラシでごしごしと擦ってやる。たまにものすごい勢いで暴れて抵抗するものもいて、手を切りやしないかと肝を冷やした。

 

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ワーイ、綺麗になったよ!バンザーイ!

とは思っていないだろうが、ともかく綺麗にはなった。次は背ワタの除去である。

 

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背ワタとはザリガニの腸にあたる部位であり、中には消化された餌や泥が詰まっていて汚いので、調理する前に抜き取ってしまう。

やり方は簡単で、尻尾の真ん中、上の写真の青く囲った部分を折り、

 

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引き出してやるだけである。

背ワタは残っていると臭みの原因にもなるので、途中で千切れたりしないよう慎重に引き抜いてやることが大切だ。

 

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最後に邪魔なヒゲを切り落とし、もう一度水でよく洗えば、下ごしらえは完了だ。

さしものザリガニたちも、腸を抜かれたりひげを切られたりですっかり元気をなくしてしまった。活きがよすぎると油に入れたときに暴れ出して危ないので、これはこれで好都合である。

 

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スパイス、ザリガニの両方が準備できたら、調理開始だ。

中華鍋に多めの油を入れて加熱し、

 

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ザリガニを投入する!

 

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ザリガニの全身が赤くなったら、スパイスと砂糖を入れて全体になじませる。

 

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スパイスの匂いが立ってきたら、酒と醤油を入れ、混ぜる。

さらに塩とザリガニがギリギリ浸らない量の水を入れ、

 

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蓋を被せて蒸し煮にする。

 

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水気が半分くらいになるまでとんだら、麻辣小龍蝦の完成だ!

 

食べる

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皿に盛り付けた。

各種スパイスの混じりあった香りはとても良い。さて、肝心のザリガニの身の味はどうだろうか...。

 

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これは殻を剥く前。

 

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で、これが殻を剥いた後。

ちっさ!

と思ったかもしれないが、基本的にはエビと同じで、主な可食部は腹部のみであるため、まあこんなもんである。問題は味だ。めちゃくちゃ泥臭かったりしたらどうしよう...。

 

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知らないものを口に入れる瞬間は、いつも少し不安。

 

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ん!美味しい!大勝利

 

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エビに似た味だけど、ちょっと違う。爽やかな甘みのある味だ。そしてその甘みを、四川風のスパイシーな味付けが見事に引き立てている。心配した泥臭さだが、こちらは逆にスパイスによって打ち消されているのか、それともはじめから臭みなどなかったのか、まったく感じられなかった。

肉質も特徴的だ。こちらはエビよりも蟹に近く、繊維質だがフワフワとしている。そのフワフワとした肉に、漬け汁がよくしみこんで、一口噛んだ瞬間のジューシーな食感を生み出している。

つまりはとても美味しくて、中国人が夢中になって国中にザリガニ屋を乱立させてしまうのも納得の味なのである。

 

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せっかくなので他の部位も食べてみよう。

まずはハサミだ。

 

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噛み割って中の肉と食べる。

うーん、噛んだときは旨い汁がジュッと出てくるんだけど、いかんせん食べにくい。爪楊枝でわざわざほじくりだすほどの量でもないし、スルーしてもいいかもしれない。

 

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次は胸部に詰まったザリガニみそ。こちらは背甲(背中側の殻)を体から剥がしたときに露出する腹側のみそなのだが、これをこそぎとって食べてみた。

おお、これは美味しい!こってりとした濃厚な味に加えて、口に入れるとザ・甲殻類という感じの良い香りが鼻に突き抜けるのがたまらない。こんなに美味しいみそを捨てては罰が当たるので、少しも残さぬよう念入りにほじくり出して食べた。

 

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この調子で背甲の側に張り付いたみそも味わう。

ん、んんん?

黄色っぽいみそは腹側と同じ味で美味しいのだが、そのすぐ下に隠れている茶色っぽい部位に箸が届いた途端、なんだが苦くて生臭い味が混じるようになった。おまけに、ジャリッと砂までかみ始める始末。これは推測なのだが、この部位には胃袋のようなものがあって、未消化の餌などが紛れ込んでいるのではないだろうか。いずれにせよ、ほんの少し場所がずれただけでものすごい味の落差がある。

不味いし、加熱しているとはいえ汚い気もするので、背中側はあまり深追いしないほうがよいだろう。

 

まとめ

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▲部位ごとの感想をまとめてみた

 

そのへんで獲れたザリガニを麻辣小龍蝦にすると、すばらしいご馳走になることがわかった。食材にマッチした料理法を見つけてやることは、本当に大切である。あまりに美味しいので、ザリガニを見る目が変わってしまったくらいだ。

ザリガニブームが中国を席巻した理由を、自分の舌でもって納得できたのは大きな収穫だったと言えるだろう。

 

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食べた後には、捕獲したザリガニとほぼ同体積の殻のゴミが残された。味は良いが、ザリガニは可食部が少ないのである。中国では、複数人でザリガニ料理を囲む場合、テーブルの上に文字通りザリガニの山ができるそうである。ザリガニが旨いことはわかったので、機会があれば本場でそんなザリガニの山を貪ってみたいものだと思った。

 

参考サイト

ザリガニ料理、中国で爆発的ブーム 「マクドナルドを超えた」の報道も

 

 

 
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手軽に鯛の活け造りができる皿を作った

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豪勢な魚の活け造りが食べたい、しかし魚を美しく捌く技術もなければ、店で食べる金もない。ということで、上に載せるものさえ用意すれば手軽に活け造りを楽しむことができる機械を作った。

 

活け造りは見た目が大事

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味も見た目も豪勢な活け造りは、贅沢な魚料理の筆頭だが、そうそう手軽に楽しめるものではない。家庭で作るには材料となる生きた魚の調達からして難しいし、店で食べようとするとお金がかかるからである。

しかも、である。活け造りには「この魚さっきまで生きてたんですよ!」という、新鮮さを視覚的にアピールする意味もあるのだろうが、流通の発達した現代では、スーパーのパック詰めされた刺身も相当に新鮮で美味いのも事実だ。むしろ「ヘタに生きたまま輸送するより、釣り上げたその場でさっさと〆て血抜きした魚のほうが美味い」などと言われる始末。

マイナス点ばかり述べたが、活け造りが時代遅れだと言いたいわけではない。死んでいるはずの魚がピクピク動く姿に「きゃーー生きがいい!」などとはしゃぐこともできるし、切り身では味わえない魚の造形美を堪能することもできるのだから、活け造りが出てきたら否が応にも気分が盛り上がるのは事実である。

活け造りが食膳に上がってきた瞬間に思わず「おお!」という声を上げてしまう、あの胸の高まりを、いつでもどこでも好きなだけ楽しめるようになれば、素晴らしかろう。

ということで、作ったのがこの 活け造りマシーンである。

 

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使ってみた

作った活け造りマシーンを使ってみるために河原にやってきた。

作り物故に場所を選ばないのも、こいつのいいところである。

 

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組み立て中。

 

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セット完了!

 

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その辺のスーパーで買ってきたばかりの、ただのパックの刺身を盛り付ける。作り物に添えるのに相応しく、刺身にのせられた食用菊もプラスチック製の作り物である。

 

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盛り付けた。おお!見た目は完全な活け造りだ!

 

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「いつでも、どこでも」というコンセプトどおり、川の流れを眺めながら、活け造りを楽しめて大満足である。

さて、できの良い皿活け造りは、魚の鮮度が良すぎて皿の上でピクピク暴れてしまうことがあるようだが、そこのところももちろん再現してある。

スイッチを入れてみよう。

 

youtu.be

 

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ちゃんと動いた!

正直、スイッチを入れるまで対して期待はしていなかったのだが、実際に動かしてみると思ったより自然な跳ね方をし出して、笑ってしまった。

作り物なので、いつまでたっても活きの良さが衰えないのも素晴らしい。逆に難点は、モーター音がかなり騒々しいところだろうか。音のせいで道行く人も思わずこっちを見てくるし。

 

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心なしかただの刺身も美味しく感じる。

 

雨宿りをはさんで、かまぼこを載せてみた

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刺身を食べていたら雨が降ってきたので、橋の下に避難した。

 

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逃げ込んだ橋の下では、なにやら大勢の人が集まって演説に耳を傾けていた。なんでも、不法投棄取締りの新しい看板の除幕式で偉い人が来ていたらしい。

 

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隣に立っていた人が手元を見て「え?」という感じの表情をしたが、恥ずかしいのでできるだけ目を合わさないようにした。変わったスタイルのデモをしに来た奇人だと思われたかもしれない。

 

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雨がやんだので、しつこく再開する。

今度はかまぼこである。活け造りの趣旨には反するけれど、どこまで低コストでそれらしい雰囲気を再現できるか試してみたくて載せてみた。足元が悪い中で、かまぼこを綺麗に並べようと奮闘していると、「私は何をやっているんだろう?」という思いが湧き上がってくるが、正気に戻ってはいけない。

 

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見た目だけは風流。

 

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感想

予想外にちゃんと動くものができたのでうれしかったし、パックの刺身やかまぼこをただ食べるよりもずっと楽しく食事することができた。しかし一つ問題がある。最初のインパクトを過ぎると、だんだん見飽きてくるのだ。でもよく考えたら、それって本物の活け造りでもそうなんじゃないだろうか。最初出てきたときは「わあ!」と思うんだけど、可食部を食べつくす頃には、生臭くて扱いに困る肴の残骸になっているのではないだろうか。良くも悪くも出オチな道具で、宴席などで使う場合はころあいを見計らってスイッチを切ってしまうのがよいだろう。そう言う意味でも、本物に忠実な偽物を作ってしまったと言えるかもしれない。

 

作り方

需要があるかどうかわからないのだが、一応作り方をさっくりと解説しておく。

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魚部分の材料は、芯になる発泡スチロールと、造形用の石粉粘土である。

 

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作りたい魚が決まったら、ネットや図鑑で写真を見たり、現物を観察して、大まかな形を発泡スチロールに書き込んでいく。

 

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それっぽい形に削り出す。

 

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活け造りなので、頭と尻尾だけ作ればよい。

 

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石粉粘土を盛り付けて、

 

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目指す魚の形に近づけていく。

 

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乾燥したところから、カッターナイフで削って鱗などの細かい部分を作りこんでいく。ヒレは薄く作りたかったので、発泡スチロールではなく針金を芯材に使った。

 

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削ったり、粘土を盛り直して修正したりを繰り返しつつ、なんとかそれらしい形になった!

 

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裏側は見えなくなるので、手を抜いている。

完璧を目指すと気がもたないので、そこそこのところで切り上げることが肝心だ。

 

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アクリル絵の具で色をつける。

 

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できた。

色を重ねるごとに魚がいきいきとしてくるのが楽しくて、途中で金や銀のアクリル絵の具を買い足してしまった。化粧品をたくさん買い集める人の気持ちが少しだけわかった気がした。塗る相手は作り物の魚だけれど。

 

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別に作っておいた胸鰭を合体させて、表面に耐水性のニスを塗ったら

 

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魚部分の完成!

なお、ここまでの魚の造形と着色に全工程の8割ほどの時間がかかっている。

 

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台を作る。

まず木枠を組み立て

 

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魚を固定するためのピンを埋め込む。

 

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魚が動く仕組みには、タミヤ模型のギアボックスを使った。

 

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モーターの回転をギアボックスで減速、さらにクランクで回転運動をピストン運動に変換し、魚に繋がった紐を引っ張ったり緩めたりしている。

より断続的で自然な動きにするためにArduinoで制御を...とも思ったけれど、面倒なので今はやらないことに。

 

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手巻き寿司用の巻き簾で蓋をし、魚を取り付けて完成である。

この記事を読んで、「活け造りといえばイセエビだろ!」とか思った人は、是非作ってみてほしい。

 

おまけ

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 グレープフルーツを盛り付けてみた。もはや魚肉ですらなく、偽物に偽物をのっけた格好で何をしたいのか自分でもわからないのだが、見た目だけは綺麗に収まっているのだからすごい。魚を食べられない人に出して反応を見てみたいと思った。

 

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