週末を静岡県の山奥にある古民家で過ごしてきた。
夕食の時間になると、おばあちゃんがかまどでご飯を炊いてくれる。旦那さんが去年なくなったため、現在は80過ぎのおばあちゃん一人で切り盛りしておられるそうだ。
夕飯は囲炉裏の上に網を載せてかつおのタタキを作ったり肉を焼いたりした。重要文化財の中でバーベキューができるなんて、貴重な体験である。こうして囲炉裏から出た煙は、茅葺屋根が燻し、防腐や防虫の効果を発揮する。だから、茅葺屋根の家は、定期的に中の囲炉裏で火を焚かないと、すぐに傷んでしまうそうだ。
囲炉裏の上には鉤のついた木彫りの魚が。自在鉤といって、鍋を吊ったりするのに使うらしい。
縁側でスイカも食べた。
縁側の上にせり出した茅葺きの屋根。ものすごい厚さである。茅葺きは傷むと新しいものに交換しないといけないのだが、必要な材料を集めて屋根を全て取り替えるのは大変な重労働だったのだろう。
友田家のある集落には、特に遊ぶための施設があるわけではない。滞在中は特に何をするということもなく、ご飯やおやつを食べ、畳の上でゴロゴロし、囲炉裏を囲んで同行者とおしゃべりをして過ごした。あとは、集落の中を散歩するくらいのものである。
刺激的ではないが、ゆったりと過ごすことができる時間が心地良い。何もしないことの贅沢を再発見させてくれる場所だ。
「寒い季節には囲炉裏のそばから離れられなくなるよ」
とおばあちゃんが言っていた。
囲炉裏で炊いた鍋を囲んだり、餅を焼いたり、燗酒を飲んだりして過ごせたら、最高だろう。寒いのが嫌いなくせに、想像しただけで冬が待ち遠しくなる気分だ。雪の降る頃になったらまた来ようと思った。
▲庭先には白い彼岸花が咲いていた