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上海で一風変わったペット市場やポスター美術館を愛でる

上海滞在2日目である。2泊3日の旅程とはいうものの、最終日は昼の便で出国するため、実質この日が最終日なのである。

茶市場を見て回り、買い物をするという最大の目的は達成してしまったので、この日は気楽に市内を散策することができる。同行者は他に用があるということなので、目星をつけていた万商花鳥魚虫市場と上海宣伝画芸術中心を一人で見物することにした。

 

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朝の公園をぶらついてみると、人民が太極拳や踊りの練習に興じていた。

 

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上海は地下鉄網が発達した町である。運賃も安いので、気楽に乗ることができる。

券売機にお金を入れて目的地をタッチすると、切符の代わりにカードが出てくる。

 

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車内にあった斬新な広告。チラシを取らないと吊革が使えないようになっていた。

「考えた人は頭がいいなあ」と、見た瞬間こそ感心したし面白いと思ったけれど、電車で吊革を使うたびに見たくもないチラシを強制的に渡されるのは、スマホで新しいウェブページを開くたびに誤タッチを誘う広告が表示されるのと同じくらい、ストレスフルな環境であろうと思い直した。

 

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目的地の最寄り駅で地上に出る。

駅からのアクセス方法を説明する場合、「〇〇駅の何番出口を出て北に徒歩何分・・・」というふうに表現されることが多いが、ここ上海では道の名前が書かれた標識にはほぼかならず東西南北の表記があるため、非常に助かる。

 

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このあたりは古いタイプの商店や民家が残っている地区である。

 

 

 万商花鳥魚虫市場

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第一の目的地の万商花鳥魚虫市場に到着。

花鳥魚虫市場とい名前を見て、「どんな生き物でも買える夢見たいな市場なんでは!?」と、完全に名前から抱くイメージだけで訪問を決めた場所である。

 

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市場の中に入る前から音が漏れていたのだが、中にはいると売り物の鳥や虫たちが上げる鳴き声の洪水が四方から押し寄せてきた。

「リーリーリー!チュン!チュン!ギョギョギョギョギョッ!ヴィーヴィーヴィー!」

あちこちで、客の一団と店主らしき人物が店先に陣取り、籠に入れて並べられた鳥や虫の鳴き声などについてああでもないこうでもないと品評をしているようだった(会話の内容は一切わからないためあくまで想像)。鳥も虫も狭い店先にひしめくように並べられているのだけれど、こんなうるさいところで密集して鳴いているものたちの声を判別できるのだろうか。

物見遊山の観光客の観光客らしき人たちも散見されたが、熱心に商品を選んだり買い物をしているのは当然地元中国の人々である。

 

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鳥籠に入れて並べられた鳥たち。いろいろな種類がいる。

  

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こちらはコオロギやキリギリスを扱う店。闘蟋(とうしつ)というコオロギ相撲をさせたり、鳴き声を楽しんだりするそうである。大小さまざまな種類が販売されていた。

 

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玉籠に入れられたキリギリス。

 

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竹や木で作られた綺麗な籠。どうやって使うのかわからないものも含めて、飼育用の小物類も市場内でそろえることができる。

生き物を見るのが面白くて買い物にまで頭が回らなかったけれど、改めて写真を見るととても綺麗な籠たちである。次に行く機会があれば買って帰りたいものだ。

 

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市場の中では鳥と直翅目の昆虫が圧倒的に多数派だが、金魚やグッピーなどの熱帯魚、猫や亀、観葉植物も売られていた。

生き物ならなんでも揃うというわけではないけれど、日本のペットショップとは明らかに異質な品揃えが見ていて飽きなかった。というか、品揃えを忠実に反映するなら「花鳥魚虫市場」よりも「虫鳥魚花市場」が適切な感じがした。

 

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すぐそばには食べ物を扱う市場もあった。

 

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昔ながらの販売スタイルなのであろうが、肉や魚が常温で台の上にペタペタと並べられているのにはさすがに「これ、衛生的にはどうなん?」と思った。見ている分には非常に面白いのだが、生鮮食品は市内各地にある近代的なスーパーで購入したほうが無難だろう。

 

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昼は牛肉麺を食べた。

牛肉の赤身とキノコ類をベースにしたスープで、とても優しい味だった。

 

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道端で見かけた看板。

社会主義の革新的価値観は法治主義である(だから法律を守ろう)」

と言いたいのだろうと推測できる。こういうとき、漢字文化圏の人間は便利だ。

2泊3日の滞在で唯一見かけた「そういやこの国は今も社会主義なんだったな」と思い出させてくれた物である。

 

 

上海宣伝画芸術中心

 

上海宣伝画芸術中心は、中国が今よりずっとまじめに社会主義を実現しようとしていた頃に作られたプロパガンダポスターを集めた個人美術館だ。この美術館は、個人経営ということもあって、非常にわかりにくい場所にあるのだが、私は以前からプロパガンダポスターに使われる独特の画風や強いメッセージ性が大変に好きなので、行かないわけにはいかない。

 

目的の美術館は、地下鉄の最寄り駅からそこそこ離れたところにあるため、タクシーを拾おうとした。

昨日今日と上海の街中を散策してみて気づいたのだが、この街のタクシー運転手はとにかく商売っ気がない。以前に旅行したタイのタクシー運転手とはぜんぜん違う。かの微笑の国のタクシードライバーたちは、こちらが外国人旅行者と見るや、嬉々とした表情で「タクシー!タクシー!コンニチハ!」などと叫んで客引きしてきたものだが、上海のタクシードライバーは道端で手を上げて乗車の意思表示をする客を平気で無視して通り過ぎる。道行くタクシーの後席にはたいてい客が乗っているので、需要が供給を上回って高飛車になっているということなのかもしれない。

このときも、運良く道端に停車していた空車のタクシーを見つけて「ここに行きたいんだけど」と手帳に書きとめた目的地を示したのだが、「知らねえよ、よそに行きな」という漢字ですげなく追い払われてしまった。

埒が明かないので、歩いて行くことにした。

 

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大きなプラタナスの街路樹が並ぶ、綺麗な通りを歩いた。

中国ではGoogle mapを使うことができないので、スマホの地図は役に立たない。手帳にメモしておいた住所やだいたいの地図をもとに、人に道を聞きながら、地道に目的地まで近づくしかなかった。

 

 

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で、着いたのがここである。びっくりするくらい普通のマンションなのだが、門柱に掲げられた住所は「崋山路868号」であり、事前に調べた住所と一致する。

 

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門の裏の詰め所にいた守衛に恐る恐る聞いて見る。すると、「あ、そこね」という感じで、すぐに地図が書かれた案内をくれた。対応が非常にこなれていて、フレンドリーであった。美術館側にしても、わかりにくい場所にあるという自覚はあるようだ。

 

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敷地内を地図に従って移動する。まだ普通のマンションである。

 

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美術館が入っているらしい棟の前までやって来た。ここにいたっても、どう見たって普通の住宅にしか見えない。

 

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建物の入り口に看板があった。

 

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中に入ると、今度は階段を下りろかかれた看板が。

 

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おお、目印の毛沢東の姿が!

 

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あった!

まだ展示を見てないにも関わらず、なんなんだこの達成感は。

 

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マンションの地下にあるこの美術館、決して広くはないのだが、結構な数のポスターが展示されていた。ポスター類は撮影禁止なので写真はないのだが、

・豚を増やそう!(食糧増産)

・知は力なり!(だからがんばって勉強しよう)

・15年以内にイギリスを追い越そう!(香港とか取られたからその反動だろうか)

のようなまっとうな目標を掲げるものもあれば、

・台湾を解放しよう!

・腐敗したアメリカ帝国主義は世界の堕落の中心だ!

・革命の機運を広めよう!

といった穏やかでないものもあった。

主張はともかく、どのポスターもとても魅力的で、伝えたいメッセージをいかにわかりやすく、そして力強く伝えるかを考え尽くしたヴィヴィッドなデザインが目を引いた。見るものの脳にガンガン訴えかけてくるような、危険なかっこよさを持っていて、「やはりプロパガンダポスターはいいなあ...」と一人ポスターの前で陶然としてしまった。

予断だが、展示場内にいるのはほとんど全員が欧米からの観光客で、係員も英語が堪能な人が配置されているようだった。皮肉である。

 

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撮影禁止だが、監視員にお願いしたら「1枚だけならいいよ」と以外にすんなりお目こぼしをもらえた。「作物がたくさんできたらうれしいね」みたいな内容だと思うのだが、なんともシュールな絵面である。

 

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駅まで歩いて戻る。

 

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来るときと違って心に余裕があるので、町並みを堪能することができる。低階層の古い建物がたくさん残っているのだが、、それらがプラタナスの並木に映えて美しい。

 

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愉快な落書きもあった。

 

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宿に戻る途中、静安寺というお寺に寄ってみた。見るからに立派な寺院なのだが、17時を過ぎていたため中に入ることはできなかった。

仕方なく門前も写真を撮って引き上げようとしたところ、小柄なおばさんが何か話しかけてきた。中国語がわからないと伝えようとするのだが、こちらの反応など関係なく、詩を朗読するように一定の調子で、顔をまっすぐ見つめてひたすら話しかけてくる。最初は目の前の寺について説明しようとしているのかと思い、そのうち終わるだろうと相手をしていたのだが、5分たっても意味のわからない話は続き、そのうちカバンの中から怪しげな極彩色の仏像の写真が印刷された名刺が出てきた。

「これはダメなやつだ」と思ったのと、終始こちらの反応を無視してしゃべり続ける態度にイライラしていたので、立ち去ろうとしたところ、なんとシャツの袖をつかんで引き止めようとするではないか。こちらがドキッとして立ち止まると、相手は袖を手を離して、またもとのように詩の朗読が始まる。話を聞いている隙に背後から財布などをスられるのではないかと、ポケットやカバンには神経を尖らせていたが、仲間が現れる気配もない。

袖をつかまれた瞬間こそ、そこまでして話を聞かせようとする相手の意図に多少の興味も湧いたのだけれど、立ち去ろうとするたびに同じことが何度か繰り返されるうちに、この状況にウンザリしてきた。こっちは慣れない土地の喧騒を一日中歩き回って疲れているので、早く宿に帰って休みたいのだ。

意を決して、先ほどよりも足早に立ち去ろうとする。相手はやはり袖をつかんできたが、それをさっと振り払う。後ろでさきほどよりも大きな声で話を続けていたが、追いかけてきそうで怖いので、振り返らずに道の向かいの公園まで走った。幸い、諦めてくれたようだった。

 

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公園には猫がいたので、しばし彼らと戯れて殺気立った心を静めた。

 

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上海でも、猫は人気者である。

 

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日が暮れてから、外灘(ワイタン)の歴史的建築を近くで見ておこうと思い、出かけることにした。夜の一人歩きはそこそこ不安でもあったのだが、結果的に妙齢の女性に怪しい客引きをされる以外にはこれといったこともなかった。

建築物はどれも素晴らしいものばかりで、対岸の振興開発区域とは対照的な、上品なライトアップがその美しさを引き立てていた。

 

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川岸の堤防の上には、向こう岸に林立するビル群が顔をのぞかせる。これはこれで、カラフルで綺麗な上に最高に成金趣味な感じがして好きだ。

 

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道路交通について非常に柔軟で横着な振る舞いを見せる上海の人民も、交通整理の公安警察官が立っているところでは、みんなお行儀よく信号を守る。

 

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 外壁小路の足場が竹でできていて、オリエンタルな雰囲気をかもしていた。

 

翌日は、朝に荷造りをして、同行者とともにタクシーで空港に向かい、昼の飛行機で帰国した。両手で数えられるほどのスポットを訪れただけだけれど、ド派手な極彩色にライトアップされたビル街あり、ヨーロピアンな石造りの建築群あり、雑然とした住宅地や市場ありのなんでもありな感じが最高に面白い街だった。次に来るときは今建設中のビルは完成しているかしらと、早くも再訪を考えているのだった。

 

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市場で買った茶器。中国茶のことももっと知りたい。