白川郷で茅葺屋根を浴びるほど堪能する

二日目は郡上八幡からさらに山奥に進んで、白川郷にやってきた。

白川郷といえば茅葺屋根、茅葺屋根といえば白川郷。つまり白川郷については茅葺屋根の住宅がたくさん集まった山間の集落であるという以上のイメージは持っていなかったのだが、実際に訪問すると予想以上に茅葺屋根の住宅以外のものがなく、これだけメジャーな観光地になったにも関わらず質実な景観を維持していることに拍手を送りたい気分になったのだった。

 

 

 

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防火用の放水銃も、このように景観に合わせて偽装されている。

 

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 お昼は飛騨牛や川魚の甘露煮をいただいた。

 

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食事処の縁側からは、すばらしい夏の庭と山の風景が一望できた。緑が濃く、紫陽花も綺麗に咲いていてる。良い季節に来られてよかったと思った

 

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水路には巨大な鯉やニジマスが悠々と泳いでいる。餌をちらつかせると、口をパクパクさせながら先を争って寄ってきた。鯉はともかく、ニジマスにはもう少し孤高の存在でいて欲しかった。

 

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物置小屋(?)にもしっかりと茅葺屋根が載っている。白川郷は豪雪地帯なので、物置小屋なんか適当に作っておけばよかろうなどと思ってしまう私のような人間は、住み始めて最初の冬でいろいろなものを失ってしまったことだろう。

 

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集落のそばを流れる川に架かる吊り橋

 

集落を回った後は、旧遠山民俗館を見学した。茅葺屋根の家の暮らしを知ることができる資料館のような施設だ。

 

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▲囲炉裏周り。板敷きなので冬は寒そうである。

 

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▲風呂場。とても綺麗にタイルが敷かれているし、窓の模様ガラスや真鍮製の蛇口も凝ったものが使われている。もはや住む人がいないのでこれらも使われることはまずないのが惜しい。 

 

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蚕!生きた蚕がわさわさと動いていたので興奮してしまった。茅葺屋根の家では、屋根裏で蚕を育て、繭をとって売っていたそうだ。 

 

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屋根裏のスペースは、今は当時使われていた道具を展示するスペースになっている。 

 

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▲蚕の卵をつけて売る種紙。

 

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▲蚕にとってはなんとも恐ろしい、さなぎころしかご。とれた繭をほっておくと、中から羽化した蚕の成虫が出てきて繭をダメにしてしまう。 そうなる前に、このかごに繭を入れ、下から火で炙り、中の蛹を殺してしまうのだ。無情である。

 

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▲結納に使ったという、藁で出来た鯛の飾り。内陸部で本物の鯛が手に入りにくかったための苦肉の策なのかもだけれど、現代の価値観では普通の鯛の塩焼きを出されるよりもおしゃれに見えるかもしれない。

 

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▲昔話に出てきそうなお膳。茶碗にご飯をこれでもかと盛り付けたくなる。

 

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▲乳児を入れておく桶。

 

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 ▲立って歩き始める頃の乳児を入れる桶。血を吐いてるのかと思ったら募金とかでもらえる赤い羽根でした。人形の表情に少し笑う。

 

旅行で方々を訪れるたびに、こんなところに住んでみたいなあと将来の移住候補地が増えて困ってしまう。今回まわった岐阜の山奥も自分としてはかなりポイントの高い地域だった。雪かきすらしたことのない者の戯言である。

 

 

 

雨が降れどもひたすら踊り狂う!郡上踊りの魅力

リス村の続き。

リスと一通り戯れてから、移動を開始した。山間部を縫うように走る道を抜けると、場違いな感じがしないこともない垢抜けた町に出た。郡上八幡である。

郡上八幡には、郡上踊りという伝統が伝わっている。何をするかというと、日が落ちてから何時間も踊り続ける。それだけならどこにでもありそうだ。すごいのはここからだ。なんとこれを33晩に渡って続けるというのである。

 

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目抜き通りはとても綺麗に整備されている。

 

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側溝には綺麗な水が流れていて、鯉や川魚がゆらりゆらりと泳いでいるのが見える。台所から出た汚水に混じる残飯を食べて水の浄化を手伝ってくれる上に、ハレの日にはご馳走として食卓に上るという。

 

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こんなところに猫発見。そんなところで寝ていると危ないよと注意しようとしたが、威嚇されてしまった。

 

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おお、レトロで綺麗な建物がある!

もともと郡上町役場だった建物を観光拠点として再利用した施設とのこと。失礼ながら、こんな僻地の町役場ですらそこそこ凝った建物を建ててしまう、戦前日本の建築デザインに対するこだわりはすばらしいと思う。

 

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元町役場の前の橋では川に飛び込んで遊んでいる人たちがいた。

 

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日が傾いてきた。心なしか、そろそろ踊りが始まるのではないかと、周囲がそわそわしてきたようだ。見上げると、商店街のアーケードにも踊る人々の姿が。

 

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踊りが始まった!山車が車道のど真ん中に引きずり出され、その上では三味線、太鼓、笛を使った囃子の演奏が始まる。

 

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囃子を中心にして踊る人々。見よう見まねで参加する我々。

群集は、踊りながら山車の周囲を少しずつ回っていく。最初は周囲を見ながらぎこちない動きを繰り返すばかりだった我々も、一回りし終える頃にはそこそこ様になるようになってきた(ような気がした)

1時間ほど踊っただろうか、住民はまだまだ踊り続けていたが、我々は離脱して宿に向かうことにした。なんか小雨がぱらついてきたし、でも本当に雨が降っても踊り続けるんだね、などといいながら車を駐めた駐車場に向かい始めてから、すごいことに気がついた。

 

  彼らが踊っている場所は駐車場の出入り口の真ん前だ

 

困ったことになった。そう、踊りが終わるまで車は出られないのである。暇で仕方がないので、団子屋でみたらし団子を買い、店主に「雨が降ってるけど踊り続けてますねえ」と水を向けてみたところ、「特別な祭りだからね!災害警報でも出ない限りやめないよ!」というような答えが返ってきた。すごいと思うやら、もどかしいやら。結局、10時頃になって踊りが解散する段になって、ようやく脱出することができた。

 

最後は散々な目にあったが、大勢の人々が山車を中心にして踊るさまは壮観だった。踊りの型にはいくつかあるのだけれど、どの型にも下駄をカランッと鳴らすステップがあって、大勢の人間が足踏みを合わせてこのカランッを鳴らす、その一糸乱れないさまが気持ちよかった。次は下駄を履いて来たいと思った。

 

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町家の中に郡上踊りの歴代ポスターがずらりと展示されていた。一番のお気に入りはこれ。虫たちもついはっぴを羽織って踊りに来てしまうようなお祭りなのだ。

 

 

 

すっぽんの骨格標本、完成!

以前に捕まえて食べたすっぽんの、骨格標本が完成した。

骨を組み立ててることなんて読者はほとんど忘れていただろうけれど、この1年近く、作っては放置し資料を漁っては放置しを繰り返しつつも、着実に生前の姿に近づけてきたんである。ポージングは、水中で泳いでいる姿を意識した。かっこよく仕上がったので満足だ。

 

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生前の姿を見たい人はこちらの記事をどうぞ。

kaiteiclub.hatenablog.com

 

 

 

金華山のリスたち

白川郷、行ってみたくない?と聞かれて二つ返事で行きますと答え、やってきたのが岐阜である。いきなり山奥の集落まで直行するのもなんなので、余興のつもりで岐阜市金華山リス村に立ち寄った。

30分ほどで満足する規模ではあるけれど、流行のゴールデンカムイを読んでリスと間近に触れ合ってみたいと思われた方にはお勧めである。

 

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金華山ロープウェー」のフォントが素敵なロープウェー乗り場。 リス村は金華山の山頂にあるため、到達するにはロープウェーに乗るか山道をえっちらおっちら歩いていかなければならない。

 

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リス園は金華山山頂の岐阜城に併設されている。城を構えるような山だけあって、濃尾平野を綺麗に一望することができる。撮影者の後ろには天守閣があるのだが、そっちは写真を撮るのを忘れた。

 

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さて、リスだ。 日本産のリスではなくタイワンリスらしい。

 

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入り口で手袋と餌をもらい、リスと戯れるよう促されるのだが、多くのリスはすでに満腹しているためか差し出された餌に見向きもしない。

 

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餌に興味のないものは客から逃れるために縦横無尽にひたすら動き回る 。

 

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やっと餌を食べてくれるリスに出会った。

 

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口の周りは餌だらけ。

「もうないのん?」という顔をして、すぐどこかに行ってしまった。リス欲が満たされたので我々も引き上げた。

 

 

 

アカアシオオアオカミキリ

うなぎを釣りに夜の川に来たけれど、結局、魚1匹連れなかった。

しかたがない、もう帰ろう。バイクを駐車している空き地まで戻ってくると、プーンと甘酸っぱい匂いがたちこめているのに気がついた。周囲を見回すと、空き地のすみにいかにも虫が寄ってきそうなクヌギの木が生えているではないか。匂いの正体はこいつが出している樹液に違いない。こうなると、なにかいないか確かめてみないわけにはいかない。懐中電灯で木の幹を照らしてみると、いるいる、キラキラ光る虫がたくさんへばりついているのがわかった。

緑の光沢が美しいアカアシオオアオカミキリだ。

 

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アカアシオオアオカミキリは、細くきらめく体に長い手足が特徴的な大型のカミキリムシだ。成虫はクヌギなどの樹液に寄って来る。地域によっては個体数が減少してレッドデータに記載されてしまっているが、このときは1本の木に10匹近く張り付いていた。

 

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交尾に励んでいるものもいた。

幼虫はクヌギの生木を食べて育つ。まさにクヌギの木と切っても切れない関係にある昆虫なのだ。

 

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接写してみた。それにしても、交尾に一生懸命なためか、かなり近くで光を当てて撮影しているのにちっとも逃げようとしない。こっちはのぞきをしているみたいでなんだか引け目を感じているというのに、彼らはそんなことお構いなしである。

 

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きらめく昆虫に目がいきがちだが、配色が地味な虫たちの存在も忘れてはならない。

右はカタシロゴマフカミキリ。左は...君は誰だ?ゴミムシダマシの仲間だとは思うけれど。

 

樹液臭い木の周りには、いろいろなものがいて飽きることがない。楽しくて、記事を書くまで魚が釣れなかった事実を忘れていたくらいだ。虫と戯れることができたのはよかったが、次は魚の写真をアップしたいと思ったのだった。

 

 

 

アンチョビを作る

一家に一樽、漬物用の糠床が常備されている、昔はそんな感じだったらしい。糠床は毎日かき混ぜないといけないとかで、今の生活を続ける限りどう考えても自分の手に負えそうにないが、自宅で食べるものを自分で用意する生活は楽しそうである。果実酒なども造ってみたけれど、今回は少し手を広げて漬物にチャレンジしてみることにした。

アンチョビは、仕込みさえしっかりできれば放っておいても完成するので、数ある発酵食品や保存食の中でも初心者に優しい存在だ。

 

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魚はマイワシとサンマをチョイス。部屋の中に魚群が現れて壮観だ。

これだけ買っても2000円しないので非常に助かる。

 

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まず、魚たちを塩水に泳がせ、冷蔵庫で一晩保存する。血や臭みを抜く効果があるのかもしれない。

 

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次に、塩水から魚を引き上げ、頭部を切り落とす。

ここで切り落とされた魚の頭の山ができるのだけれど、こう数が多いと何かに使えないかと考えてしまう。猫にやったら食べるかな?それとも、ちょっとつついてから、もっといいものよこせという目でこっちを見てくるだろうか?あいにく我が家に猫はおらず、わざわざ野良猫を探して実験する気も起こらなかったので、あえなく生ごみとして処理されることになった。

 

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魚が満遍なく塩がまぶさるように注意しながら、漬け込んでいく。漬け込むのに使う塩の量は魚の重さの20%くらいが目安。

 

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蓋をのせ、おもしをする。においがもれてこないよう、サランラップをかけておくと良い。 この状態で1ヶ月くらい冷蔵庫で保存する。

 

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サンマが入る大容量のタッパーがなかったので、バケツにビニール袋をかけて漬けることにした。当然、冷蔵庫に入るはずもなく、部屋の隅に置いて様子を見ることに。帰宅したらハエがブンブン飛び回ってた...なんてことになったらどうしようかと心配したけれど、春先の涼しい季節だったこともあったのだろうか、なんともなかった。

 

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1ヶ月たったイワシ。水分がしみ出しているのがわかる。この汁は、魚醤(ナンプラー)として使うこともできる。

次はこいつを3枚に下ろす。アンチョビ作りで一番大変なのがこの工程であることは間違いない。手が臭くなる上に塩が滲みて痛いけれど、あと少しで完成だと言い聞かせて我慢することが必要だ。

 

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1ヶ月たったサンマ。イワシをやっつけたと思ったら、後ろに真打ちが控えていた。黄色いのは、全てサンマから出てきた油である。包丁や魚を持つ手がぬるっぬる滑るので、非常に危なっかしい。

 

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何とか3枚下ろしにできたら、煮沸した瓶に魚肉と黒胡椒、ローレルを適量詰め込んで、オリーブオイルを流し込む。魚肉がきちんとオリーブオイルに浸かっていないと、そこから腐り始めることがあるので、注意が必要だ。このまますぐに食べてもいいけれど、1ヶ月ほどおくと、味がこなれてきてより美味しくなるらしい。

 

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 アンチョビが山ほどできた。いろんな料理にちまちま使っていこうと思う。