上海で一風変わったペット市場やポスター美術館を愛でる

上海滞在2日目である。2泊3日の旅程とはいうものの、最終日は昼の便で出国するため、実質この日が最終日なのである。

茶市場を見て回り、買い物をするという最大の目的は達成してしまったので、この日は気楽に市内を散策することができる。同行者は他に用があるということなので、目星をつけていた万商花鳥魚虫市場と上海宣伝画芸術中心を一人で見物することにした。

 

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通りを流れる喧騒で目が覚めた。

朝の公園をぶらついてみると、人民が太極拳や踊りの練習に興じていた。ある一団は中国調の音楽にあわせてゆっくりと体を動かし、別の一団はポップな音楽にあわせてもう少しスピーディーに踊っている。踊っている人たちは圧倒的に中年以上の年齢層が多いが、見たところ踊りの手本を示すような人もおらず、どういう経緯で人が集まっているのか謎である。ある一定以上の年齢になると

「私もぼちぼち年だから、公園で踊っている集団に加わるかな」

という気になるんであろうか。

 

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上海は地下鉄網が発達した町である。運賃も安いので、気楽に乗ることができる。

券売機にお金を入れて目的地をタッチすると、切符の代わりにタッチ式のカードが出てくる。

 

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車内にあった斬新な広告。チラシを取らないと吊革が使えないようになっていた。

「考えた人は頭がいいなあ!」と、見た瞬間こそ感心したし面白いと思ったけれど、電車で吊革を使うたびに見たくもないチラシを強制的に渡されるのは、スマホで新しいウェブページを開くたびに誤タッチを誘う広告が表示されるのと同じくらい、ストレスフルな環境であろうと思い直した。

 

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目的地の最寄り駅で地上に出る。

駅からのアクセス方法を説明する場合、「〇〇駅の何番出口を出て北に徒歩何分・・・」というふうに表現されることが多いが、ここ上海では道の名前が書かれた標識に必ずと言っていいほど東西南北の表記があるため、非常に助かる。

 

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このあたりは古いタイプの商店や民家が残っている地区である。

 

 

 万商花鳥魚虫市場

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第一の目的地の万商花鳥魚虫市場に到着。

花鳥魚虫市場とい名前を見て、「どんな生き物でも買える夢見たいな市場なんでは!?」と、完全に名前から抱くイメージだけで訪問を決めた場所である。

 

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市場の中に入る前から音が漏れていたのだが、中にはいると売り物の鳥や虫たちが上げる鳴き声の洪水が四方から押し寄せてきた。

「リーリーリー!チュン!チュン!ギョギョギョギョギョッ!ヴィーヴィーヴィー!」

あちこちで、客の一団と店主らしき人物が店先に陣取り、籠に入れて並べられた鳥や虫の鳴き声などについてああでもないこうでもないと品評をしているようだった(会話の内容は一切わからないためあくまで想像)。鳥も虫も狭い店先にひしめくように並べられているのだけれど、こんなうるさいところで密集して鳴いているものたちの声を判別できるのだろうか。

物見遊山の観光客らしき人たちも散見されたが、熱心に商品を選んだり買い物をしているのは当然、地元の人々である。

 

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鳥籠に入れて並べられた鳥たち。いろいろな種類がいる。

  

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こちらはコオロギやキリギリスを扱う店。闘蟋(とうしつ)というコオロギ相撲をさせたり、鳴き声を楽しんだりするそうである。大小さまざまな種類が販売されていた。

 

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かわいらしい玉籠に入れられたキリギリス。

 

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竹や木で作られた綺麗な籠。どうやって使うのかわからないものも含めて、飼育用の小物類も市場内でそろえることができる。

生き物を見るのが面白くて買い物にまで頭が回らなかったけれど、改めて写真を見るととても綺麗な籠たちである。次に行く機会があれば買って帰りたいものだ。

 

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市場の中では鳥と直翅目の昆虫が圧倒的に多数派だが、金魚やグッピーなどの熱帯魚、猫や亀、観葉植物も売られていた。

生き物ならなんでも揃うというわけではないけれど、日本のペットショップとは明らかに異質な品揃えが見ていて飽きなかった。というか、品揃えを忠実に反映するなら「花鳥魚虫市場」よりも「虫鳥魚花市場」が適切な感じがした。

 

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すぐそばには食べ物を扱う市場もあった。

 

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昔ながらの販売スタイルなのであろうが、肉や魚が常温で台の上にペタペタと並べられているのには、さすがに「これ、衛生的にはどうなん?」と思った。見ている分には非常に面白い。しかし生鮮食品は市内各地にある近代的なスーパーで購入したほうが無難だろう。

 

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昼は牛肉麺を食べた。

牛肉の赤身とキノコ類をベースにしたスープで、とても優しい味だった。

 

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道端で見かけた看板。

社会主義の革新的価値観は法治主義である(だから法律を守ろう)」

と言いたいのだろうと推測できる。こういうとき、漢字文化圏の人間は便利だ。

2泊3日の滞在で唯一見かけた「そういやこの国は今も社会主義なんだったな」と思い出させてくれた物である。

 

 

上海宣伝画芸術中心

 

上海宣伝画芸術中心は、中国が今よりずっとまじめに社会主義を実現しようとしていた頃に作られたプロパガンダポスターを集めた個人美術館だ。この美術館は、個人経営ということもあって、非常にわかりにくい場所にあるのだが、私は以前からプロパガンダポスターに使われる独特の画風や強いメッセージ性が大変に好きなので、行かないわけにはいかない。

 

目的の美術館は、地下鉄の最寄り駅からそこそこ離れたところにあるため、タクシーを拾おうとした。

昨日今日と上海の街中を散策してみて気づいたのだが、この街のタクシー運転手はとにかく商売っ気がない。以前に旅行したタイのタクシー運転手とはぜんぜん違う。かの微笑の国のタクシードライバーたちは、こちらが外国人旅行者と見るや、嬉々とした表情で「タクシー!タクシー!コンニチハ!」などと叫んで客引きしてきたものだが、上海のタクシードライバーは道端で手を上げて乗車の意思表示をする客を平気で無視して通り過ぎる。道行くタクシーの後席にはたいてい客が乗っているので、需要が供給を上回って高飛車になっているということなのかもしれない。

このときも、運良く道端に停車していた空車のタクシーを見つけて「ここに行きたいんだけど」と手帳に書きとめた目的地を示したのだが、「知らねえよ、よそに行きな」というようなことを言われてすげなく追い払われてしまった。

埒が明かないので、歩いて行くことにした。

 

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大きなプラタナスの街路樹が並ぶ、綺麗な通りを歩いた。

中国ではGoogle mapを使うことができないので、スマホの地図は役に立たない。手帳にメモしておいた住所やだいたいの地図をもとに、人に道を聞きながら、地道に目的地まで近づくしかなかった。

 

 

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で、着いたのがここである。びっくりするくらい普通のマンションなんだけれど...門柱に掲げられた住所は「崋山路868号」で、事前に調べた住所と一致する。

 

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門の裏の詰め所にいた守衛に恐る恐る聞いてみる。すると、「あ、そこね」という感じで、すぐに地図が書かれた案内をくれた。対応が非常にこなれていて、フレンドリーであった。美術館側にしても、わかりにくい場所にあるという自覚はあるようだ。

 

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敷地内を地図に従って移動する。まだ普通のマンションである。

 

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美術館が入っているらしい棟の前までやって来た。ここにいたっても、どう見たってただのマンションにしか見えない。

 

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建物の入り口に看板があった。

 

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中に入ると、今度は階段を下りろかかれた看板が。

 

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階段を下りると、そこには目印の毛沢東の姿が!

 

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あった!

まだ展示を見てないにも関わらず、なんなんだこの達成感は。

 

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マンションの地下にあるこの美術館、決して広くはない展示スペースに、結構な数のポスターが展示されていた。ポスター類は撮影禁止なので写真はないけれど、ポスターが主張していた内容をいくつかピックアップしてみよう。

 

・豚を増やそう!(食糧増産)

・知は力なり!(だからがんばって勉強しよう)

・15年以内にイギリスを追い越そう!(香港とか取られたからその反動だろうか)

 

のようなまっとうな目標を掲げるものもあれば、

 

・台湾を解放しよう!

・腐敗したアメリカ帝国主義は世界の堕落の中心だ!

・革命の機運を広めよう!

 

といった穏やかでないものもあった。

主張はともかく、どのポスターもとても魅力的で、伝えたいメッセージをいかにわかりやすく、そして力強く伝えるかを考え尽くしたヴィヴィッドなデザインが目を引いた。見るものの脳にガンガン訴えかけてくるような、危険なかっこよさを持っていて、「やはりプロパガンダポスターはいいなあ...」と一人ポスターの前で陶然としてしまった。

予断だが、展示場内にいるのはほとんど全員が欧米からの観光客で、係員も英語が堪能な人が配置されているようだった。皮肉である。

 

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撮影禁止なのはわかっているけれど、少しでいいから、何か記録をとって帰りたい。監視員にお願いしたら「1枚だけならいいよ」と意外にすんなりお目こぼしをもらえた。どれを写真に収めようか散々迷った末、撮ったのがこれ。「作物がたくさんできたらうれしいね」みたいな内容だと思うのだが、なんともシュールな絵面である。

 

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駅まで来た道を歩いて戻る。

 

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来るときと違って心に余裕があるので、町並みを堪能することができる。低階層の古い建物がたくさん残っていて、それらがプラタナスの並木に映えて美しい。

 

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と思っていたら、愉快な落書きに出くわした。

門前に落書きをするなんて相当な不良の仕業だろう。そんな悪い人が(おそらくは)狛犬をモチーフにした間の抜けた絵を描いている姿を想像すると可笑しい。

 

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宿に戻る途中、静安寺というお寺に寄ってみた。見るからに立派な寺院なのだが、閉館時刻である17時を過ぎていたため中に入ることはできなかった。

仕方なく門前の写真を撮って引き上げようとしたところに、小柄なおばさんが何か話しかけてきた。中国語がわからないと伝えようとするのだが、こちらの反応など関係なく、詩を朗読するような抑揚のない調子で、こちらの顔をまっすぐ見つめてひたすら喋り続ける。最初は目の前の寺について説明しようとしているのかと思い、そのうち終わるだろうと相手をしていた。しかし5分たっても話は終わらず、そのうちカバンの中から怪しげな極彩色の仏像の写真が印刷された名刺が出てきた。

「これはダメなやつだ」と思ったのと、終始こちらの反応を無視して喋り続ける態度にイライラしていたので、立ち去ろうとした。すると、とんでもないことに、シャツの袖をつかんで引き止めようとするではないか。こちらがドキッとして立ち止まると、相手は袖を手を離して、また元のように詩の朗読が始まる。話を聞いている隙に背後から財布などをスられるのではないかと、ポケットやカバンには神経を尖らせていたが、仲間が現れる気配もない。

袖をつかまれた瞬間こそ、そこまでして話を聞かせようとする相手の意図に多少の興味も湧いたのだけれど、立ち去ろうとするたびに同じことが何度か繰り返されるうちに、この状況にウンザリしてきた。こっちは慣れない土地の喧騒を一日中歩き回って疲れているから、早く宿に帰って休みたいのだ。

意を決して、先ほどよりも足早に立ち去ろうとする。相手はやはり袖をつかんできたが、そうくることは予想済みなのでさっと身をかわす。後ろでさきほどよりも大きな声で話を続けていたが、追いかけてきそうで怖いから振り返らずに道の向かいの公園まで走った。

幸い、諦めてくれたようだった。

 

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公園には猫がいた。しばし彼らと戯れて殺気立った心を静める。

 

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上海でも、猫は人気者である。

 

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日が暮れてから、外灘(ワイタン)の歴史的建築を近くで見ておこうと思い、出かけることにした。夜の一人歩きはそこそこ不安でもあったのだが、結果的に妙齢の女性に怪しい客引きをされる以外にはこれといったこともなかった。

建築物はどれも素晴らしいものばかりで、対岸の振興開発区域とは対照的な、上品なライトアップがその美しさを引き立てていた。

 

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川岸の堤防の上には、向こう岸に林立するビル群が顔をのぞかせる。これはこれで、カラフルで綺麗な上に最高に成金趣味な感じがして好きだ。

 

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道路交通について非常に柔軟で横着な振る舞いを見せる上海の人民も、交通整理の公安警察官が立っているところでは、みんなお行儀よく信号を守る。

 

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 外壁小路の足場が竹でできていて、オリエンタルな雰囲気をかもしていた。

 

翌日は、朝に荷造りをして、同行者とともにタクシーで空港に向かい、昼の飛行機で帰国した。両手で数えられるほどのスポットを訪れただけだけれど、ド派手な極彩色にライトアップされたビル街あり、ヨーロピアンな石造りの建築群あり、雑然とした住宅地や市場ありのなんでもありな最高に面白い街だった。次に来るときは今建設中のビルは完成しているかしらと、早くも再訪を考えているのだった。

 

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市場で買った茶器。中国茶のことももっと知りたい。

 

 

 

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上海の茶市場と激辛四川料理

「上海の茶市場などに行ってみようと思うんだけど、一緒にどうかね」

知人のそんなお誘いをもらったのは、4月も半ばを過ぎた頃である。職を辞して約2週間、せっかく時間があるのだから久しぶりに外国なぞに行ってみようかしらと思っていた折も折、二つ返事で行きましょうということになって、いそいそと着いていったのだった。

昨年は台湾の台北を旅行して、食事の美味しさやらごちゃごちゃとした町並みの魅力やらに感激した。だから同じ中国文化圏である上海にも大変な期待をしていたのだが、果たして、上海も台北に輪をかけて面白いものたちにあふれた町だったのである。

 

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タケノコのように経済成長を続ける中国の中でも、特に景気のいい街が上海であると聞いていたから、さぞかし活気があるのだろうと思っていたが、空港から市街地へ向かうタクシーの窓から見ただけでもそんな雰囲気がビシバシと伝わってきた。

なんせ建設中のビルの多いこと多いこと、そこかしこに建設用のクレーンが林立しているのだ。何度も上海に来ている同行者は、来るたびにどんどん街の姿が変わっていくと言っていたが、さもありなん。

その反面、近代的で個性的なデザインの高層ビル群の谷間に、古めかしく赴きある外観の洋館などがちらほらと混ざっているのも印象的だった。上海にはかつて欧米各国の租界があったため、当時立てられた欧風の建物が今も多く残っているのだ。

日頃、感じのいい古い建物が耐震性やらの問題で取り壊されるのを歯噛みして見送っている身としては、うらやましい限りである。

 

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宿の近くでも何かの建て替えをやっていた。

 

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茶市場は宿の近くであったため、余計な荷物を置いて歩いて行くことに。

道を歩いていて面白いと思ったのは、日本では滅多に見ない電動の原付がたくさん走っていることだ。ほとんど音を立てずに近づいてきて脇をすり抜けて行くので、ヒヤッとすることもあったが、運転者はまったく気にも留めていない様子。大らかだなあと思う。

他にも、カードをかざすとロックが外れて使えるようになるレンタサイクル(乗り捨て自由)なども町中にあふれている。非常に便利そうだから、是非日本でも導入してもらいたい。

 

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目的地の茶市場、天山茶城。

3棟建てのビルの中に茶器や茶葉その他、茶に関する品物を商う店がぎっしりと詰まっている。

 

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ビルの中は、爽やかな茶の香りが立ち込めていた。どの店の店先にも、たくさんの種類の茶葉のサンプルを置かれていて、目移りがする。春は新茶の季節だからだろうか、店先に置かれている茶は、綺麗な緑色の緑茶が多いようだった。

中国茶といえば、烏龍茶のイメージが強いので、中国茶=発酵茶のことだと思っている人が多いのではないだろうか(私はそう思ってた)。実はそんなことはなくて、中国でも、茶は無発酵の緑茶で飲むことの方が多いんだそうである。一つ賢くなった。

 

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こちらは、茶葉だけでなく乾燥させた花(花茶などにするのだろうか)や漢方を売っている店。

他にも、茶器を売る店、茶を入れる化粧箱や包装紙を扱う店もあり、中国茶に関するものならないものはないのではないかと思うくらいの充実振りだ。

 

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せっかくだから茶道具を買おうと思い、いかにも道具屋のおっさんという感じの店主が番をしている、ひなびた店に入ってみた。

壁には棚が作り付けてあって、形も色もさまざまな大小の急須がたくさん並べられている。丸いのもいいし、平べったいのも面白いなあなどと思案しながらそれらを眺めていると、店主がベラベラと何か話しながら、次々と棚から急須を出して、台の上に並べ始めた。

中国語が堪能な同行者が前に立って話を聞いてくれたが、最初は店主が何を言っているのかよくわからない様子であった。そうこうしている間も、店主は急須を並べ続ける。

店主が急須をガラス製の台の上に置くたびに、コトンッ、コトンッと陶器を置くにしては派手な音が響いて、こちらは少し不安になる。同行者は店主に何か話しかけていたが、私は中国語がまったくわからないので、「案外適当に扱うものなんだな」などと思いながら、黙って眺めている他にできることがない。

そうして、私が内容を感知しない一連のやり取りが済んだ後、元の価格から大幅に値引きされた値段で急須が買えることになった。市場でのやり取りは、なんとも奥が深い。

 

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気に入った道具を安く買えた我々は、ホクホク顔で茶市場を後にして、夕飯を食べるために四川料理屋に向かった。

四川料理といえば、とにかく辛いんだろうなという先入観があった。実際には辛くない料理もメニューに上げられていたのだが、辛い辛いというイメージが先行してしまって、とにかく唐辛子が大量に入った料理ばかり注文してしまった。

上の写真の料理は、鶏の軟骨のから揚げが唐辛子やにんにくの山の中に埋もれた状態で供される料理である。

 

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こちらは、油に浸した唐辛子の山の中に魚を漬け込んだもの。

どちらも、唐辛子の山の中から可食部を掘り出して食べるタイプの料理である。

 

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豚肉ときゅうりの唐辛子炒め。

 

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豚の血を固めたものや内臓を、唐辛子と山椒が入ったスープで煮込んだもの。

他の3つの料理は、辛いながらもたいへん美味しく、ヒイヒイ言いながら食べたのだが、この最後の一品だけは厳しかった。唐辛子とは毛色の違う、山椒のスーッとする、粘膜に滲み込んでくるような辛さが、口、鼻の奥、喉、食道と、食べ物の通り道を順番に焼き尽くしていくのだ。

まさに辛さの暴力。ビールや水で舌を休ませながら食べ勧めたが、完食することは諦めた。これでも観光客向けにマイルドにされているらしいのだが...。

 

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まだまだ夜は長いので、夜景を見るためにタクシーで移動。

昼は大人しかった高速道路は、夜になると、なんと青く光り始めるのである。

「この街のイケイケっぷりをアピールするために、高速道路を青く光らせようと思います」

なんていう企画を会議で出したら、日本なら道路ではなく上司の顔が青くなりそうだが、上海では実現してしまうのである。軽はずみな発想に全力で投資できるなんて、楽しい街だなあと感心する。

 

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通った区間はずっとこんな感じで光っていた。

 

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足湯のある展望台に来た。

 

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お湯は少しぬるい。

 

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有名なテレビ塔が見える。

カラフルな上に、ビルの外壁に馬鹿でかい文字(しかも漢字)が映し出されたりするので、見ていて飽きない。

 

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ビルの壁面を使って自己主張しまくるので、とにかく派手。

 

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川を挟んで右手に見えるのは、外灘(ワイタン)と呼ばれる、歴史的な建築物の残る地区である。こちらは、ライトアップの仕方がずっとお上品である。

 

けばけばしいライトアップだが、ここまで派手だと、逆に気取ったところがない。大阪に住んでいた頃に初めてスーパー玉出を見たときも驚いたが、上海の夜景は同じ発想で規模を数千倍に拡大したようなものであり、ただただ「すごいなあ」と感心することしかできないのである。

なおライトアップは10時で示し合わせたように(実際、示し合わせているのだろうが)消灯されるため、それ以降は幕が下りたように真っ暗になった。

 

 

 

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上海のスーパーマーケットのスッポンとウシガエル

 

国内でも国外でも、旅先ではできるだけスーパーマーケットを覗いてみることにしている。

そこで売られている食品の中には、普段自分たちが目にしないものが紛れ込んでいることが多々あり、現地の食文化が垣間見えて面白いからだ。

店の内装や雰囲気がどこでもさほど変わらないことが多いのも、スーパーの利点だといえる。

これがあからさまに怪しげな市場などであれば、我々はその雰囲気に飲まれてしまって、そこに並べられた品物一つ一つが自分にとって非日常的なものなのか、そうでないのかにまで心を配ることができないだろう。それはそれで面白いことではあるのだけれど。

スーパーマーケットは、その没個性的な背景でもって、注目すべき点だけを浮かび上がらせるための舞台装置なのだ。

 

 

先週末に2泊3日で滞在した上海のスーパー(カルフール)も、期待を裏切らずに強烈なのをかましてくれた。

特に目を引いたのが、スッポンとウシガエルである。

上海では面白いものをたくさん見てきたので、そちらは追々まとめていくとして、まずはこいつらを見てほしい。

 

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しれっとした顔をして鮮魚コーナーで泳いでいたスッポン。

左の水槽のやつが358元だから、1元=16円として5728円/500g、100gあたり1146円(!)の高級食材である。

 

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産地によって値段がだいぶ上下するのも、こだわりが感じられて良い。

値段相応に味に違いがあるものなのか、いつか食べ比べをしてみたいと思う。

 

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視線を下に下げると、そこにはひしめき合うウシガエルたちが。

まったく動こうとせず、大人しくしている。

 

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こちらはスッポンに比べてグッとリーズナブルになって、19.8元/500g。100gあたり63円くらいである。

 

鮮魚コーナーにはこの他にも、よくわからない魚やらがたくさん並べられていて、「売れそうなもんはとりあえずなんでも並べとこうぜ」という力強さみたいなものが感じられてよかった。

スッポンは以前に川で捕まえて食べたことがあるのだが、ウシガエルはまだ食べたことがない。ちょうど今年の夏に捕まえてやろうと思っていたところなのだが、日本人から見て野食・奇食といわれそうな内容の記事も、中国の人たちからすれば単なる節約術の記事にしか見えないのかもしれないと思った。

 

 

 

アミガサタケを食べる

以前「生えた生えた」と喜んだアミガサタケを食べてみた。

食べてみたというと、まるで初めて食べたような言い方だが、ここ数年は毎年のように口にしているので、これといった新鮮さはない。

 

kaiteiclub.hatenablog.com

 

急に外食する予定が入ったりしたため、収穫してから2日ほど冷蔵庫内に放置してしまった。

再び袋から出して調理するときに、カビが生えたり腐っていたらどうしようとハラハラしたのだけれど、幸いそんなことはなかった。以外に長持ちするようだ。

 

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二つに切ってやる。

中は空洞だ。それに、外見によらずフワフワとした肉質なので、崩さずに包丁を入れるのに難儀した。

前に食べたときは、この空洞部分に虫が入っていたりして驚かされたこともあるのだが、今回は土から出てきて間がないものを選んで収穫したからか、そうした住人の姿は確認できなかった。

 

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茹でる。

アミガサタケの調理で唯一気をつけないといけないのはこの工程である。

生で食べると中毒するため、茹でこぼしてやることで毒抜きするのだけれど、なんとこのとき鍋から出る蒸気にも毒が含まれるというのだ。

アミガサタケの毒はヒドラジンというロケットの推進剤などにも使われる物質で、揮発性であるため、加熱すると着たいとして拡散するんだそうである。

なので、茹でるのもできるだけ風通しのよいところで、遠くから見守るようにして行った。

 

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怖いことを書いたが、茹でてしまえば普通のきのこと同じだ。

にんにく、オリーブオイル、胡椒と一緒に、あっさりとしたパスタに仕上げた。

滋味に富んだ味もさることながら、ボコボコとした構造やふわふわとした肉質のおかげでソースとの絡みが抜群である。

次は濃厚系のソースで味付けしてみようかと思う。

 

 

 

マダニに噛まれました

昨夜のことである。自室でネットサーフィンをしていると、なんだか腰のあたりがムズムズと痒い。

服の上から掻いていてもなかなか収まらないので、「暖かくなってきたから虫にでも刺されたのかな」とズボンをめくって肌の様子を確認すると、掻いたところがぼんやりと赤くなって、その中心に黒いものが引っ付いているのを見つけた。

最初は掻き過ぎて血が出たのかと思った。凝視していると徐々にその黒い粒にピントが合ってきた。血やかさぶたの色ではない。それに、なんだか足みたいなものが左右に生えている。

「あ、マダニか」

気づくまでに数秒かかったことがなんだか悔しかったが、そうとわかれば話は早い。手近にあったピンセットで頭をつまんで、ゆっくり慎重に引き抜いてやる。マダニは、足をワタワタと動かして抵抗するが、気にせず一定に力で引っ張る。パツンッという音がして、若干の痛みを伴いながら、体からマダニが外れた。

 

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▲剥がした時点でほとんど血を吸っていなかったので、とても小さい(拡大写真は記事の下のほうに掲載)

 

 

マダニに噛まれるのは2度目である

マダニに噛まれるのは、今度が初めてではない。何年も前のことだが、山に行った日の夜に風呂に入っていると、陰部にマダニが吸い付いていたことがある。

浴槽に浸かっていると陰部に違和感があって、手をやってみると何かが引っ付いているのがわかった。ゴミがついているのかなと思って引っ張ってみると、ぷちんと外れたそれはマダニだったのだ。

本当に驚いた。入浴中で眼鏡を外していたので、指でつまんだそれを目の前10センチほどの距離に近づけて、初めてマダニだと気づいたのだ。びっくりしたし、気持ち悪いので反射的に排水溝の方に投げ捨ててしまった。

そのときに比べれば、今回は冷静にピンセットを使って除去した上に、写真を撮って観察までしているわけだから、マダニ経験値は確実に上がっているようだ。

 

 

噛まれても無理に取ろうとしてはいけない

自分の体にマダニが吸いついているのを見つけても、パニックになって無理に引き剥がそうとしてはいけない。

マダニの頭部がちぎれて体内に残ってしまったり、ダニの腹から汚染された血や体液が逆流して感染症にかかるリスクが高まるからだ。

自分で除去を試みる場合は、ピンセットでマダニの頭部に近いところを摘み、一定の力でゆっくりと、優しく抜き取るようにしなければならない。アルコールや線香などの火で弱らせてやると外れやすくなるとも言うが、私はやったことがないのでわからない。自力で抜き取るのが難しい場合には、素直に皮膚科の病院などにいくとよいだろう。

 

 

どこでマダニをもらってきたのか?

一通り興奮が収まってから気になったのはこれだ。自室にマダニがいるとは考えにくいので、外を歩いているときに体についたと考えねばなるまい。

日中の私の行動を思い返してみる。

  • 散歩に出た河原の土手ででスミレの花を摘んだ
  • くくり罠の見回りをしに山に入った
  • 日没後にウシガエルを探しに池のほとりを散策した

ダメだ。思い当たる節が多すぎる。

マダニは、街中の公園なんかにも普通にいるのである。

ましてや、マダニは野生動物に乗って移動するので、獣道を歩くのはマダニのコロニーに自分から飛び込んでいく行為に近い。暖かくなるにつれてマダニはどんどん活発になってくるはずなので、頻繁に体を洗うなどして注意しようと思う。

不幸中の幸いだが、今度のマダニはせっかちだったようで、脇の下や陰部ではなく腰骨の出っ張っているあたりを刺してくれた。そのおかげで早めに発見することができたのだ。血もほとんど吸っていなかったようだ(潰しても腹から血が出てこなかった)。とはいえ、刺されたところはまだ赤くなっているし、感染症をもらっていやしないかと今後2,3日は気が気ではないわけだが。

 

 

 

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▲マダニを上から見たところ

 

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 ▲マダニを下(腹側)から見たところ

 

 

 

イノシシの掘った穴

有害駆除の罠を設置するために、久々に山に入った。

あっちこっち鹿の足跡だらけなのは一月前の猟期中と変わらないのだが、目を引いたのは、以前はなかったイノシシの痕跡がやたらと増えていることだ。

下の写真のように、ユンボでも使ったのかと思うほど地面がぼこぼこに掘り返されている。これは、イノシシが餌になるミミズなんかを探して土を掘り返した跡なんである。

イノシシの繁殖期はだいたい1月から3月頃である。この期間、雄のイノシシはろくにものも食べすに交尾相手の雌を探し回るので、がりがりに痩せてしまう。私はまだこの時期のイノシシを捕ったり解体したりしたことはないのだが、聞いた話では、11月頃に捕れたものに比べて悲しくなるくらい皮下脂肪の層が薄くなっているそうだ。

それだけではない。この時期の雄は、フェロモンの関係だとかなんだとかで、肉からなんともいえない嫌な臭いがするそうである。

ここまで酷評されると、逆に食べてみたくもなるが、ともかく繁殖期の雄イノシシは猟師にとってありがたくない獲物なのである。

話を元に戻すと、4月といえばそろそろ繁殖期も終わって久しい季節だ。森の中のそこかしこに空いた穴は、繁殖期明けの雄イノシシが、食べ物を探し回った跡なのかもしれない。そんなことを想像したりした。

フィールドの痕跡の変化が、動物の生活の移り変わりを反映しているようで、おもしろい。

跡を辿るのが面白くて山の中を歩き回っていたので、罠を5つほど持っていったのに、日が落ちるまでに2つしか設置できなかった。

 

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▲木の周りを重点的に掘り返した跡

 

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▲大きな足跡もあった

 

 

 

アミガサタケが生えてきた

毎年桜の咲くころになると生えてくるアミガサタケというキノコが、今年も無事ニョキニョキと出てきた。

アミガサタケは別段珍しいキノコではなく、街中の公園の隅などに生えているところを見かけることもある。

味が良く、ヨーロッパでは食品として普通に売られている地域もあるくらいなのだが、日本では売られているところは見たことがない。

つまり、食べようとするとこの時期に自分で採集するしかないのである。

というわけで、ここ数年春になるとアミガサタケを探すのが年間行事のようになっている。

去年採集に出たときは、少し時期が遅くて、大きくなりすぎたものが少し残っているだけだったのだが、今年はちょうどよい時期にとりに行くことができた。

近日中に食べようと思う。

 

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奇異な外見、しかし食べられる

 

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こんなに大きいのもあった。