閉会した展示会のことを書くのはなんだか申し訳ない気もするけれど、京都大学総合博物館で10月8日までやっていた「標本から見る京都大学動物学のはじまり」という展示を、少し前に観覧してきた。
メインの展示会場には、大小様々な動物たちの標本が集められていた。
中には、滅多に目にする機会のない珍獣(カモノハシとか)の全身剥製なども展示されていて、これは、自分としては街中でハリウッドスターを見かけるのと同じくらいうれしいことなので、一人で大興奮を味わった。
「一人で」と言ったが、つまり見学者は自分以外にいなかった。この展示に限らず、館内に人影はまばらで、もったいないなと思う反面、落ち着いて鑑賞や撮影ができることに感謝した。
標本たちは、選りすぐった物が展示されているだけあって、どれも素晴らしかった。
今回展示された標本たちは、展示名の通り、この地で動物学が始まった頃に蒐集されたもので、つまり、作られてから何十年とか、ものにとっては100年以上が経過したものもあるわけである。
なのに、ちっとも古ぼけた印象がないのがすごい。それだけ高い技術で丁寧に作られ、きちんと管理されているということなのだろう。骨格標本はともかく、剥製などはそのつやつやとして整った毛並みのせいで、さっきまで生きていたようにピンとしたたたずまいをしていた。
亡くなったもののことを忘れないために建てるのが墓標なら、標本は完成度の高い墓標の一種なのかもしれないと思った。