2023年5月6日

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和歌山から来た友達が「インドカレー屋『ぴっぱら』に行きたいが、マナーがなってないと追い返されることがあるらしいので一緒に来て教えてほしい」というので、同行する。

客を追い返す店として名をはせた『ぴっぱら』は少し前まで一時閉店していたのだが、最近になって内装が少し新しくなって再オープンした。店内にあった黄色い張り紙はなくなり、代わりに壁一面に作りつけられた本棚に古書が並ぶ「カレー屋兼古書店」という世にも稀な営業形態の店として生まれ変わったのである。

再オープンの知らせを受けた私は、大喜びでさっそく食べに行った。先々月のことである。カレーは相変わらず美味しく、一人前の品数も目移りするほど多かった。値段はそれなりに上がっていたが、これについては前までが安すぎたといえるだろう。写真入りのメニューが印刷されたわかりやすい看板が店の前に設置されていたりもして、なんとなく以前より接客が丸くなったような気がしていた。

そんなわけで、てっきり客を追い返すこともなくなったのかと思っていたら、友達いわくGoogleMapのレビューにはすでに追い返された人のことが載っているらしい。

それを聞いて少し安心した。はじめて『ぴっぱら』に行ったときはそのあまりの規格外なスタイルに「なんだ、店ってこんなんでいいんだ」と目から鱗が落ちる思いがしたものだが、その珍妙なスタイルが失われてしまうとしたらやはり悲しいものだ。

こう書くと非常に複雑なシステムの店みたいに思われるかもしれないが、基本的には入店時に、店主の耳に届く声量(←重要)であいさつができれば問題ない。私は今のところ断られたことはない。

まれに、店主に「あなた誰?」と聞き返されて名を名乗ると「知らんな、帰って」などと言って追い出されることがあるらしいが、そういうときは諦めが肝心だ。

せっかく遠方から来た友達と来たのにこの「帰って」モードだったらどうしようと心配したけれど、さいわいすんなり注文までこぎつけた。友達も「うまいうまい」と言ってカレーを平らげ、ついでに文庫本を何冊か買っていた。

帰りに、路上で行き倒れているタイワンタケクマバチを2匹も見つけた。羽が焼きを入れた鉄板みたいにメタリックに輝いていてきれいだと思った。このあたりにも順調に定着してきているようである。