散歩をしに植物園に行く。
春の花盛りは過ぎていたけれど、エビネ、ウツギ、アヤメなどなどいろいろな花が咲いていて楽しい。藪漕ぎの天敵こと棘だらけのジャケツイバラが意外に可愛らしい黄色い花をつけていて驚いた。
水べでバイカモを見ていると女性が話しかけてきた。バイカモの花が咲いているかどうかが気になるらしい。バイカモは数は少ないながら花をつけていたので、水面に乗り出して指でさしながら、目がよくないという女性に丁寧に教えてやった。平日の植物園にいるもの同士、親近感も生まれようというものだ。
残念だったのはアマミアセビとリュウキュウアセビの花期を逃したことだ。どちらもとても希少な植物で、かつて花の時期には山の稜線を白く染め上げるほど咲き誇ったという奄美大島のアマミアセビは70年代に乱獲で激減、沖縄本島のリュウキュウアセビにいたっては野外では絶滅してしまったらしい。
足元には壺型の花が脱落したものがたくさん積もっていた。まだ白いままで茶色く変色していないものもあったから、散ったのはここ数日以内だろう。つくづく惜しいことをした。
ほかに、腹の部分が赤く透き通った謎の虫がウツギの木にたかっているのを見つけた。何かの幼虫なのは間違いないと思うけれど、なんだろう?
帰宅して、夕飯には冷凍点心を蒸して食べた。食べていて心なしか中がぬるいような気がした。同じものを以前に食べたときと比べて皮の透明感というかモチモチとした食感が足りない。というか、はっきりと粉っぽい。
「これ、ちゃんと火が通ってないんじゃない?」と本日の料理担当の同居人に聞いたが、「そう?」という気のない返事が返ってきた。
残り二つまで食べたところでようやく「これはやはり怪しい」と思い、電子レンジで蒸しなおして確かめてみることになった。怪しいと思ったのなら一つ目を食べたところでやめておけよという話なのだが、相手もさるもので、怪しいけれど気のせいのようでもあるという絶妙なところを攻めてきたため対策が後手に回ったのである。
仮に蒸しなおした点心の皮がプルンプルンになっていたら、アウト。生煮え天心を食べたかどで腹痛におびえて過ごすことになる。
濡らしたキッチンペーパーとラップでくるんで、念を入れて500Wでたっぷり5分加熱した。
今度は持てないくらい熱くなった。
火は間違いなく通ったが皮はプルプルを通り越してカチカチになってしまった。同居人は前歯が折れたらどうしようと言って心配していた。これでは前のが蒸し足りなかったのかどうかわからない。
結局、真相は闇に包まれたのだった。
※腹は痛くなりませんでした